【齋藤敦子(映画評論家・字幕翻訳家)=フランス・カンヌ】11日午後、映画ファン待望のジャン=リュック・ゴダールの新作、『イメージの書物』の正式上映が、翌12日に記者会見が行われました。今年2018年は、フランス全土をゆるがせた五月革命の余波で、映画祭が中止になった68年から数えて50周年。今、フランスでは68年とは何だったのかを回顧し、その意味を問う展覧会や特集があちこちで開かれていますが、当時、トリュフォーらヌーヴェル・ヴァーグの仲間たちと共闘して映画祭を止めさせたゴダールが、この記念の年に新作をコンペで上映させたことに感慨を感じました。




『イメージの書物』は様々な映画から切り取った映像と古今東西の書物から抜き出した言葉をコラージュし、映像や音の出し方が凝りに凝った、まさにゴダールにしか作れない作品でした。昔は記者会見でゴダールの知性あふれる返答を聞くのがカンヌの大きな楽しみの一つだったのですが、最近は滅多に公の席に出なくなったので、どうせ本人は来ないだろうと高をくくって会見に行かなかったら、なんと今回は出席者のスマホの機能(FaceTime)を使ってイメージだけスマホの画面に現れ、プレスの質問に答えたのだそうです。映画祭が公開した写真を見ると、質問者は壇の前まで出て行って、スマホのゴダールと顔を合わせて質疑応答していました。

11日はジャ・ジャンクーの新作『江湖児女』の正式上映が行われた日でもあり、翌12日には、問題のゴダール記者会見の後で『江湖児女』の記者会見が開かれました。

『江湖児女』は、ヤクザの世界に身を置く男と、彼を愛した女の、十数年にわたる愛と別れと再会の物語を、中国社会の変遷を背景に描いたもの。

写真は記者会見の模様で、左からジャ・ジャンクー監督、主演のチャオ・タオさん、リャオ・ファンさん、市山尚三プロデューサーです。

【齋藤敦子】映画評論家・字幕翻訳家。カンヌ、ベネチア、ベルリンなど国際映画祭を取材し続ける一方、東京、山形の映画祭もフォローしてきた。フランス映画社宣伝部で仕事をした後、1990年にフリーに。G・ノエ、グリーナウェイの諸作品を字幕翻訳。労働者や経済的に恵まれない人々への温かな視線が特徴の、ケン・ローチ監督の「麦の穂をゆらす風」なども手掛ける。「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)、「奇跡の海」(幻冬舎文庫)、「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書もある。



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