貧困層が富裕層に寄生する。韓国社会を戯画化 ソン・ガンホ主演の「パラサイト」/第72回カンヌ国際映画祭レポート(5)

【齋藤敦子(映画評論家・字幕翻訳家)=フランス・カンヌ】コンペのアジア映画は、中国のディアオ・イーナン監督『野鴨の湖』、韓国のポン・ジュノ監督『パラサイト(寄生虫)』の2本です。

 『野鴨の湖』は、マフィアの内部抗争から、首謀者として警察から懸賞金付きで追われる男と、男を逃がすために現れた女を中心にしたフィルム・ノワール。ディアオ・イーナン監督は、2014年に『薄氷の殺人』でベルリン映画祭金熊賞を受賞。そのときに謎の未解決事件を追う刑事を演じたリャオ・ファンが、今回も男を追う刑事の役で出ています。今回はアクション中心で、ディアオ監督の演出が冴えているうえ、ストーリーがシンプルなので、素直に楽しめる娯楽作になっていました。

 ポン・ジュノ監督の『パラサイト』は、失業し、狭くて汚い地下室で暮らすキテク(ソン・ガンホ)の一家が、外国に行く友人から長男(チェ・ウシク)が代理の家庭教師を頼まれたことがきっかけで、豪邸に住むIT企業のパク社長の家族に、次々に寄生していくというブラックコメディ。キテクを演じたソン・ガンホは、ポン監督作品の常連で、『弁護人』や『タクシー運転手』で知られる名優です。

 『パラサイト』とは、貧困層は富裕層に寄生するしかないという韓国社会をカリカチュアしたものでしょう。急激に貧富の差が広がっている日本にも当てはまる物語です。

 ポン・ジュノ監督といえば、2年前にコンペに出品した『オクジャ』で、いわゆるNetflix問題に巻き込まれた渦中の人でしたが、それはとりもなおさず、いち早くハリウッドに進出した実力派ということ。今回もストーリーの面白さ、意外な展開もさることながら、全ショット、ストーリーボード(絵コンテ)を描いて演出したという、卓越した映像センスが光っていました。

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