古地図や古写真で、まちの記憶と人をつなげる 佐藤正実さん

「体験を同期させる」

復刻や収集だけではなく活用することが大切だと考える佐藤さんは、2012年に「センダイ座」と称する市民講座を開講、古地図を見てまちを歩き昔の仙台の痕跡を探る講座や、昔の映像の上映会など、仙台に関わるプログラムを複数実施した。

「アーカイブ―8ミリ、写真、地図の素材をうまく利活用するポイントは何なのか?世代も地域も超えて体験を同期させるための素材が写真や地図や映像にはあって、あたかも自分が体験したかのようにもっていける素材だと思う。たとえば誰かの七五三写真を他の人が見て、そういえば自分にもこういうことがあったかもしれないとか、記憶を相互に入れ替えたり体験をしたりすることによってこの写真が自分事の写真になるような気がする。それをいかに他人にうえつけるか、が、やりたいアーカイブの根っこにある。これが正しいアーカイブの活用方法かは分からないが、こうした活用もありなのではないか、と思っている」(佐藤さん)。

震災後、津波の被害にあった沿岸部を巡りそのまちに住んでいた人と交流する「3.11オモイデツアー」を開催しているが、佐藤さんは「決して被災地ツアーではない。ダークツーリズム(悲劇・死にまつわる場所を訪問する観光)でもない。思い出を使って人とまちをつなげたいというのが、オモイデツアーの一番のポイントだ」という。

「(仙台市沿岸部の)荒浜も蒲生も(名取市沿岸部の)閖上も全く同じにみえる。それ以前のまちには特徴があって、それが今はわからないけど震災前にはあった。特徴のあるまちの写真をひっぱりだしてあげて地元の人に語ってもらえば、この写真に意味づけされたものが自然とイメージできて、県外から来る人にも『荒浜ってこういうまちなんだな』とわかってもらえるんじゃないか。それがいわば体験の同期なんじゃないかと思っている。それを感じて帰ってもらえるんだったら今見えなくても、震災前のまちの様子や人の思いや記憶というのは伝えられるだろうと思っている」(佐藤さん)。

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