【第70回ベルリン国際映画祭】震災の喪失感に向き合うハル「風の電話」

齋藤敦子=ドイツ・ベルリン】今年の日本映画はコンペにはなく、フォーラムで想田和弘監督の『精神0』、フォーラム・エクスパンデッド部門で田中功起監督の『抽象・家族』、フォーラム50で大島渚監督の『儀式』、ジェネレーション14プラス部門で諏訪敦彦監督の『風の電話』、クラシックで今井正監督の『武士道残酷物語』などが上映されます。

 23日(日曜)の夜、『風の電話』の上映が行われ、上映後に諏訪敦彦監督、主演のモトーラ世理奈さん、渡辺真起子さんが登壇し、観客とのティーチインが行われました。映画は1月から日本公開されているので、見た方も多いと思いますが、2011年の震災で家と家族を失い、広島に住む叔母(渡辺真起子)に引き取られたハル(モトーラ世理奈)が、震災後8年経っても苦しめられる喪失感に向き合うため、故郷の大槌町を目指す旅を描いたもの。風の電話とは、亡くなった人と話が出来ると評判になって多くの人が訪れるようになった、大槌町に実在する電話のこと。ヨーロッパは地震や津波という自然災害とは無縁ですが、家族を失う苦しみ、喪失感はどの国の人にも共通。映画は大きな共感を持って受け入れられたようでした。

フォトコールで、諏訪敦彦監督、モトーラ世理奈さん、渡辺真起子さん

 上映会場ウラニアの850席がほぼ満席、上映後も日曜の遅い時間ながら、ほとんどの観客が残って、監督や出演者の話に聞き入っていました。特にモトーラさんがゆっくり一言一言考えながらする答えには拍手が起こるほどで、モトーラさん演じるハルが観客の心をしっかり掴んだようでした。ハルが天国にいる家族に電話する、ラストの10分あまりの長い場面は、台詞もすべてモトーラさんの即興だったと聞き、会場から驚きの声があがっていました。)

会場からの質問に答えるモトーラ世理奈さん(中央)、諏訪敦彦監督と渡辺真起子さん。
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