【小坂将人通信員=秋田県横手市増田】秋田県北部に位置する大館市白沢地区には伝統芸能「白沢獅子踊り」が伝わっている。その保存会で小学5年のころから活動してきた青年が多くの仲間と共に、ご当地ヒーロー「コウライザー(CORISER)」を考え出し、大館市の伝統芸能の保存継承に乗り出した。伝統芸能の保存活動は全国各地でさまざまな形で行われているが、担い手不足をはじめとして資金の確保や集客など、課題は山積している。トラック整備工場での仕事の傍ら『コウライザー』に扮し、子どもたちの人気を集める佐藤龍一夢(りゅういちむ)さん(19)に話を聞いた。

【写真提供:CORISER PROJECT】




「一般人でも努力すればカタチになる」

『コウライザー』の名前には大館市の未来を光(=「コウ」)あるものに-という佐藤さんの思いが込められている。佐藤さんの熱意に押される形で多くの人たちが計画にかかわり、2017年春に活動をスタート。秋田県内各地のイベントに登場しながら伝統芸能を盛り上げている。ツイッターやフェイスブックなどソーシャルメディアやウェブによって活動状況を発信することによって、伝統芸能の継承に努める自らのパワーも高まるという、体験型のヒーローだ。

「コウライザー」の場合、プロを外から呼んでくるとか、特別に技術を身に着けた人が演じているわけでもない。隅から隅までご当地もの。「こちらは本当に一般人なんだよ。一般人でも普通にやりたいと思ったことが出来るし、それなりに努力をすればカタチになるんだよって伝えたい」

龍一夢さん自身がテレビで見るヒーローに憧れて育った世代だ。「ヒーローが伝統を盛り上げれば子どもが憧れて、後々、一緒に活動してくれるんじゃないか」。ヒーローを見詰める子どもたちの視線は、自分自身の原体験でもある。

頭の中ではとっくにヒーローが誕生していたのに、当初はどうやって周囲の協力を得られれば良いのか分からず、知っている人もいない状況だった。「協力してもらえませんか」。自分の思いとやりたいことを聞いてもらうために飛び込んだのが地域の商工会議所だった。

「デザイナーやカメラマンに連絡してくれ、商工会議所の職員も何かと協力してくれました」。直訴同然に飛び込んだ会議所から貴重な人脈が広がった。「このときの経験が現在の活動に至っています」

【写真提供:CORISER PROJECT】

素顔を晒して戦うマスクヒーロー

「コウライザー」の人気の秘密を重ねて聞いてみた。「もう一つ挙げるとすれば、プロフィール写真で、素顔を出していることでしょうか。主役と近い関係になりたいという意識が誰にでもあると思うんです。その点、マスクを被っていて顔が見えないと、ちょっと距離ができます。どんな顔かが分かれば親しみを感じるはずです」

「イベントを記録したり、コウライザーのプロフィール写真を撮ったりしてくれるカメラマンやデザイナーなど、みんな出来ることをボランティアでやっていてくれています。30代、40代が伝統を盛り上げる活動に参加しています。下手したら失敗したかもしれないし、『なんだ?』って言われたかもしれなかったところを、踏み出してみてよかったなと思いました。子どもたちにというより、同世代の人で、大館で夢が叶えられないからと言って出て行く人に伝えたい。それが顔を出す理由でもあります」

【写真提供:CORISER PROJECT】

佐藤さんは小学校5年生の時に保存会に入った。現在でも、白沢獅子踊り保存会には小学生も入っているが、伝統芸能を地域ぐるみで継承していくうえでは、むしろその親の世代の価値観や実践に期待したいところだという。

「保存会の活動を実際に見ていると、30代から50代の人がいないのが目立ちます。お年寄りがまだ頑張ってくれているが、子どもたちとは意識の面でだいぶ違うものがあるのはやむをえません」

子どもたちが分かるようにどう教えればいいのか。保存会の運営などの全体的な流れや具体的な活動を進めるために何をどのように準備すればいいのか-など、本当は親の世代に先頭に立ってもらえれば一番いい。

「自分の子どもがやるのを見て喜ぶ親は多いです。でも、親の世代が実際に活動に参加するとなれば、恥ずかしいと感じる人もいると思います。でも、そこのところをもう一歩、踏み込んで、子どもと一緒に楽しみながら伝統を受け継いでいくことに前向きになってもらえるとうれしいです」

「失敗してもいい。一歩踏み出す勇気を」

伝統はさまざまな世代が担い手になり、多様な価値観を重ねながら受け継いでいくことにこそ意味がある。「子どもたちだって白沢獅子踊りに出たいと思う子が必ずいると思うんですよ。そんなときにしっかり応援してあげ、自分のやっていることの素晴らしさ、伝統芸能に携わることが誇らしいということを実感してほしい。もちろん実際はなかなか理解が進んでいません。あまり分かり合えてないかもしれませんが伝統を盛り上げていくために大きな壁を乗り越えたい」

「自分の世代でもやろうと思うことはあるんですが、失敗しちゃうと気分が良くないし、なかなか踏み出せなくなります。自分にもそういう気持ちがあったんですけど、失敗して絶対成功させようじゃなく、失敗してもいいからまずやってみようと、一歩が踏み出せれば色んなことにチャレンジできるし、勇気を振り絞れるかどうか、それだけそれに対して想いがあるかどうかと思うんです」

【写真提供:CORISER PROJECT】

◎白沢獅子踊りについて
所在地:大館市白沢
開催場所:神明社・地域内各所
開催日:8月14日

コウライザーは大館市を中心として活動しています。活動の詳細はHP等ご覧ください。
HP: https://coriser.jp/
Mail: info@coriser.jp
Twitter: ‎@coriser_odate
Facebook: https://www.facebook.com/CORISER710/

小坂将人通信員】1973年生まれ。秋田県横手市増田町在住。増田町では観光ボランティアガイドや盆おどりの保存会にも所属する会社員。 地元で頑張っている方、町の礎を築いた先人たちの足跡などにスポットを当て魅力を発信したいと思っております。 主な取材エリア:横手市 執筆記事一覧





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