【文・写真/佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)=宮城県仙台市】東日本大震災から間もなく丸8年。市民の暮らしに根差した映像表現を通じて、まちの魅力や記憶を残そうとしている市民グループ「映像カフェせんだい」(久保田順子代表)が、各地で建設が進んでいる「防潮堤」を取り上げました。ビデオ作品は3部作で、企画・事前調査から撮影・編集までほぼ1年を費やしました。「防潮堤の今! プロローグ・田老編」」(2分25秒)、「防潮堤の今! 石巻編」(3分7秒)、「防潮堤の今! 仙台荒浜・蒲生日和山地区」(3分15秒)で構成されています。



防潮堤は東日本大震災の教訓を踏まえて計画され、被災地の事情に合わせて進められてきました。工事の進捗状況もさまざまで、工事の進め方を巡って事業主体である県と住民の間に新たな問題が生じている例さえあります。メンバーの間でも人命優先と地域の環境維持について多様な意見が交わされました。

その結果、防潮堤を評価する前に、自分たちの目で現場を確認し、映像作品に作り上げることを最初の目標としました。

撮影、編集は映像カフェせんだいの中嶋健二さん、庄子功雄さん、伊藤耕一さんが中心になりました。元東北大大学院教授、関本英太郎さんと東北大学大学院准教授、窪 俊一さんが協力しています。

撮影されたのは、高さ14.7メートルの巨大な防潮堤の建設が進む岩手県宮古市田老地区。巨大津波がすさまじいエネルギーによって北上川を逆流・はんらんさせ、街を壊滅に追いやった石巻市、仙台荒浜地区防潮堤、仙台市蒲生地区防潮堤などを追った映像が収録されています。

メンバーが撮影した作品をお互いに評価し合う「映像カフェせんだい」の定例会(2018年12月23日、仙台市宮城野区の仙台市生涯学習センターで)

事前の打ち合わせを通して「震災についての総括や批判、まとめの前に、まず自分たちの目で現場を確認することを第一のステップにしよう」(関本さん)と決めたそうです。出来上がった作品をみると、実際に現場に立った人ならではの本音や戸惑いが少しずつ伝わってきます。撮影者の目線の位置から防潮堤の巨大さを実感できるシーンには、「これでは海が見えず、音も気配も感じない」のナレーションがかぶさります。

宮古市や石巻市を担当した中嶋健二さん(70)=塩釜市=は「防潮堤をめぐっては多くの意見や議論があるけれども、誰もが人命優先の考え方に立っていることを忘れてはいけない」と指摘しながら「現場に立ってみてあらためて思うのは、防潮堤の高さをどんなに高くしても、それを越える津波が来ないとはかぎらない点だ」と表情を引き締めています。

仙台市の防潮堤を見つめ続けてきた庄子功雄さん(79)=仙台市=は「しっかり自分の目でとらえたいと思うが、わたしたちには入れない現場もあり、防潮堤の実際の姿を知ることは案外難しい。可能な範囲で自分なりの映像を記録し、保存していきたい」と話しています。

「映像カフェせんだい」は、市民メディアの可能性を追い求めている「仙台市民メディアネット」(関本英太郎代表)に所属しています。今回は二つのグループに分かれて活動し、仙台駅東地区の姿をとらえた「東口ガイドボランティア『宮城野さんぽみち』」も完成させています。

佐藤和文】1951年生まれ。仙台市出身。東北大学法学部卒。一般社団法人「メディアプロジェクト仙台」代表。「東北」を報道理念に掲げる河北新報の記者・編集者として20年間過ごした。仙台本社以外では、青森県三沢市、東京、宮城県古川市(現大崎市)の支局取材を担当した後、後半の20年はインターネット分野の責任者に。メディア局長としてデジタル戦略を立案、地方に由来するメディアのウェブ報道の在り方やSNS、ブログツイッター、などソーシャルメディアの活用に取り組んだ。2011年3月11日に発生した東日本大震災のウェブ報道を指揮。2014年に「メディアプロジェクト仙台」を設立。公式ブログ「Web日誌2.0」は河北新報時代のウェブコラム「Web日誌」の名称を引き継いでいる。http://www.media-project-sendai.com/





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