文・写真/佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)=宮城県仙台市】仙台市青葉区定禅寺通で2018年4月29日に開かれた「一箱古本市 定禅寺ブックストリート」に参加しました。自宅にある書籍を必要な人がいればお渡しするためです。60代半ばを過ぎて、余計なものを身の回りに置かないように心掛ける。いわゆる「終活」の一環でもあります。80冊ほど用意した本のうち30冊が売れました。自宅の本棚のほぼ2列分が空いたことになります。初めてにしてはいい感触でした。以下、関心のある方々のための初心者用マニュアルなれば幸いです。




読み親しんだ本のぬくもりやこだわりまで手渡し

清々しい天候の下で開かれた「一箱古本市」

社会人になって以来、転勤などの機会に、本を一斉に処分したことが4回ほどあります。古本屋さんや引っ越し会社に全部引き取ってもらいました。それはそれは、簡単であっさりしたものでしたが、正直なところ、自分の頭の中がすっきりしすぎて、違和感があったのも事実です。「一箱古本市」を初めて経験した感触は、ごみ同然に捨てるのとはまったく異なるものでした。読み親しんだ本のぬくもりやこだわりが手渡しされるような感じ・・。本を買ってくれた客の反応を幾つか紹介します。

●50代後半の男性。森沢明夫さんの「津軽百年食堂」(小学館文庫)を指さしながら
「この人、わたし大注目です。いいですよ。ほんとにいい」
「タイトルのせいで、わたしは太宰治を思い浮かべながら読みました」(店主)

●20代の女性二人連れ
「この本、絶対面白いよ」(ちょっと先輩)
「本当?」
「うん本当」
「これいくらですか?」
「百円です」(店主)
「うわぁ、わたし、これ買います」
「村上春樹の翻訳です。おすすめですよ」(店主)

●60代の男性
「あなたの読書傾向は、わたしと同じにおいがするなあ。この作家さんの作品が100円ですか?うーん。以前に東京で、開高健さんの本をずらりと並べて100円で売っていたのを思い出します。あまりに惜しいので全部買い占めました」

●60代の女性、仙台出身の恩田陸さんの「MAZE(メイズ)」を手に取りながら。
「恩田さんの作品は好きなんですが、何と言うか、結構難しくて読むのに苦労します。それでもまた読みたくなります」

どんな本を売り、どう並べる?

初参加、開店直後の様子。地べたに本を並べていました。

この一箱古本市は「あったか こころ ねっと」の主催で今回が11回目。「もったいないエコ市」と合同で開かれました。出展料1500円を支払うと一人当たり縦180センチ、横90センチの区画を利用できます。「屋号」を決め、ウェブやイベント資料のための紹介文を書いて事務局に送りました。準備しなければならないのが自作の「売上票」です。あらかじめ本にはさんでおき、売れたら売上票だけ回収します。

「売上票」はあらかじめエクセルで作りました。書名、価格、屋号、住所をA4版に1冊あたり2行分をとると、1枚当たり14冊分の売上票ができます。書籍名と価格をあらかじめ入力しておきました。古本市が終わったら報告書と集計表を事務局に提出する決まりです。

一番迷ったのは初めて開く古本市をどんなレイアウトにするかでした。どんな本を並べるかでもずいぶん迷いました。一般論としては、なんでもかんでも並べるのではなく、テーマを絞った方がいいような気がしました。手に取ってもらえるかもしれないけれど、買ってもらえるかどうか分からない10人に見てもらうよりも、そのテーマなら、買う人が10人に1人はいる-。そんなイメージで品ぞろえしたいと思いました。

しかし、実際は、テーマを絞れば絞るほど、自分の読書傾向が浅いことに思い知らされます。逆に自分の得意分野を並べようと思うと、苦労して求めた本も多く、逆に売るのがもったいないのです。本の読み手としての往生際の悪さです。あれこれ迷ったあげく、比較的容易に説明・解説できそうな本を複数の分野から選びました。

単行本・新書は100円、文庫本は50円に設定

「一箱古本市」店頭に立つ筆者

価格をいくらにするかは、初めてのことなので、皆目見当がつきませんでしたが、あまり迷いませんでした。大手の古本屋さんで買う場合、単行本なら100円、文庫本なら50円ぐらいからあるので、素人が参加するのにそれ以上高かったら話になりません。「終活」プラス自分の気に入った本をどんな人が買ってくれるのかを知りたいという、好奇心が先に立ってのことなので、単行本・新書は100円、文庫本は50円にしました。

買う側に立ってみればすぐに分かることですが、欲しい本なら多少の出費は覚悟するものです。客の様子をよく見ていると、まず本を手に取って内容を慎重に確認した後で「いくら?」と聞く人が多い。「単行本・新書は100円、文庫本は50円」と掲示してあっても、その掲示をほとんど見ていないのです。同じ会場に出展した他の参加者の値決めや、何よりも客の反応を見た限りでは、今回の値決めは少し押さえすぎたかなあ、というのが正直なところです。

ちょっとした工夫で客入りが改善

店舗スペースに敷くためのシートや雨天時にぬれないようにするためのビニールシート、陳列用のケースなどをマイカーに積んで会場へ。1時間前にスタッフが待つ場所で荷物を下ろし、車を駐車場へ置きました。日曜日のため定額サービスの駐車場を見つけることができず、駐車場料金が高い!ざっと計算すると1800円ぐらいかかるようです。100円、50円の価格で経費はとれるのだろうか。早くもちょっと不安になります。

最初は商品を籐のケースに入れて地べたに置きました。客は腰をかがめたり、しゃがんだりして見てくれました。午前中は何とも思わなかったのですが、昼ごろになって高齢の客が腰がつらそうにしていることに気が付きました。地べたに本を並べるやり方がいかにも不親切です。遅まきながら、運搬用に利用したケースを台にして本を並べました。不思議なことにそれだけで客の入りが格段によくなり、売り上げも伸びました。なんでも経験してみなければ分からないものです。

台の上に本を並べただけで客が増えた、話も弾んだ。

この日の売り上げは? 品ぞろえ、価格設定、販売方法を工夫すれば次回はもっと期待できそうですが、計算するのはあえてやめにしておきましょう。お金には替えられない楽しさを十分に味わえたんだから。

佐藤和文】1951年生まれ。仙台市出身。東北大学法学部卒。一般社団法人「メディアプロジェクト仙台」代表。「東北」を報道理念に掲げる河北新報の記者・編集者として20年間過ごした。仙台本社以外では、青森県三沢市、東京、宮城県古川市(現大崎市)の支局取材を担当した後、後半の20年はインターネット分野の責任者に。メディア局長としてデジタル戦略を立案、地方に由来するメディアのウェブ報道の在り方やSNS、ブログツイッター、などソーシャルメディアの活用に取り組んだ。2011年3月11日に発生した東日本大震災のウェブ報道を指揮。2014年に「メディアプロジェクト仙台」を設立。公式ブログ「Web日誌2.0」は河北新報時代のウェブコラム「Web日誌」の名称を引き継いでいる。http://www.media-project-sendai.com/





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