山崎忍=東北ニューススクールin雫石】岩手県雫石町南西部にある、盛岡の奥座敷「鶯宿(おうしゅく)温泉」。その更に奥にある小さな集落で9月初旬より、突然、轟き渡るようになったという爆音の謎に迫る。

 




爆音の正体を探るべく農家のもとへ

鶯宿温泉の奥地で人里離れた切留

「切留(きりどめ)」という7世帯の小さな集落は、鶯宿温泉の奥地ということと、普段なら山菜・キノコ採りのスポットであり、隣の西和賀町への抜け道として知る人ぞ知る。この集落は平成29年に発生した大雨の影響で、道路が崩れ、現在通り抜け出来ない為、車どおりが少なく閑散という言葉がぴったりである。

もともとこの集落の人々は、林業と農業を生業としていたが、林業が衰退し、多くの人が町に仕事を求め、専業農家をしている世帯はいない。そんな切留で兼業ではあるが唯一、野菜を出荷している、ある一軒の農家さんを訪ねた。

伊藤信雄(74)さん・伊藤和子(70)さん夫婦。

お話を伺った伊藤さんから、あっさり爆音の正体を聞くことができた。

「あの音は『鳥獣駆除用煙火』というイノシシ除けの爆音花火。太い麻縄に等間隔で火薬がついていて、20分間隔で音を鳴らすことができる」

増えるイノシシ 被害は深刻

見せてもらった花火は、1本に12発の火薬がついており、等間隔で猟銃を撃ち放ったかのような炸裂音が鳴るという仕掛けらしい。どうやら作物の収穫時期になる9月初旬からこの爆音花火を使用し、毎晩イノシシを撃退していたようだ。切留でも、ここ1・2年イノシシに畑を荒らされる被害が増えてきているという。

広報しずくいし2018年4月号によると、平成29年度イノシシ目撃・被害件数は雫石町全体で39件、そのうち切留のある御所地区が87.2%にあたる34件と、特に御所地区の被害は深刻なようだ。

町役場農林課では電気柵設置費用の一部に補助金や、新たに狩猟免許などを取得した人に対し経費の一部に補助金を交付するなどして被害軽減のための対策を打っている。

鳥獣駆除用煙火を手にして現状を憂う、伊藤信雄さん

「ゆるぐねぇ」現実に頭抱える農家

電気柵の設置には雫石町から補助金がでるが、伊藤さんのように、点在している農地で出荷野菜を生産している場合、その農地ごとに電気柵を設置しなければならない。また電気柵に使用する電気の引き込み工事が必要になったりと、設置条件を満たすのに費用がかかる。容易に電気柵を導入できない。

そこで伊藤さんは、猟友会員の知人の勧めもあって『鳥獣撃退煙火』を使用してみることとした。この煙火は、火薬を使用するため、保管条件が厳しいのだが、猟友会員である伊藤さんだからこそ扱える代物でもあるそうだ。

伊藤さんは続ける。

「ただ1本800円もするから、ゆるぐねぇ(大変だ)。補助もねぇしな・・・」

「昔からクマだのタヌキだのの被害はあった。でもイノシシの被害は段違い。なんとかしねぇと」

この鳥獣撃退煙火の購入費には、電気柵設置補助のような助成金がないという。決して高くない野菜の収入には見合わないと、頭を抱えていた。

夜に轟く爆音を調べたら、「切留」という小さな集落でイノシシ被害と闘い続ける農家の苦悩があった。


*この記事は2018年9月〜10月に岩手県雫石町地域おこし協力隊とTOHOKU360の共催で開かれた「東北ニューススクールin雫石」の受講生が取材・執筆した記事です。東北ニューススクールとは「住民が自らニュースを書く」ニュースサイト・TOHOKU360が東北各地で自分の街から価値あるニュースを発掘し、発信する力を持つ「通信員」を養成するために開催している講座です。

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