【古山裕二通信員=岩手県雫石町】岩手県雫石町の山あいにある鶯宿(おうしゅく)温泉。450年近くの歴史があるこの温泉街には「餅工房 むらかみ」が店を構えています。郷土菓子である「きりせんしょ」や「かまやき」などを手づくりしており「うめぇ」と評判のお店ですが、意外にも20年ほど前までは「町のよろず屋さん」だったとか。温泉街の名物餅屋が誕生するまでを店主に伺いました。



きっかけは冷蔵ショーケースの故障だった

鶯宿温泉街に立つ「餅工房 むらかみ」

「腹をくくって(餅屋を)やろうかと。あんまりいい表現じゃないけど」

業態転換を決意したときの思いを語る村上次男(むらかみつぎお)さん(60)は、餅工房 むらかみの2代目店主です。1955年ごろ、盛岡より移り住んできた先代が「村上商店」を鶯宿で開業。食料品や雑貨などを周辺の旅館やホテル、地域住民向けに取り扱っていました。

しかし、1990年代初頭のバブル崩壊を機に、鶯宿温泉の宿泊客数が減少。また大型小売店舗の進出が噂されるなど、今のままではこの先難しいだろうと村上さんは考えていたようです。その矢先に起きた冷蔵ショーケースの故障が、村上商店を餅屋に変えようと決意したきっかけになりました。

そして、故障から約半年後の1998年10月に餅工房 むらかみとして新たなスタートを切ります。村上商店時代、母親のフクさんが売上の足しにするため販売していた手づくりのきりせんしょが湯治客や地域の高齢者に好評だったらしく、これをベースに、かまやきやお団子などのメニューを揃えました。

「努力するだけ。それだけですよ」

「黒きりせんしょ」と「白きりせんしょ」。どちらも、もちっとした柔らかさとほんのり優しい黒蜜のハーモニーを楽しめる

とはいえ、開業後最初の10年間は赤字で苦労したのだとか。

「餅一本で商売するということは(作る量も、販売する量も多くなるから)、その量をさばける確信がないと駄目だもんね」と村上さん。当然、迷うことばかりだったと当時を振り返っていました。

現在も深夜2時ごろから餅を作りはじめて9時ごろに出来上がり、雫石町内へ配達などを行う毎日なのだとか。餅の生地も粉からではなく米から作りあげており、気温や湿度など日々異なる条件のなか、手づくりの味を守り続けています。

「まずいものは(お店に)出せないでしょ。努力するだけ。それだけですよ」

村上商店から衣替えした餅工房 むらかみ。「むらかみさんの餅」として地域に親しまれるその味はいま、鶯宿の味として根付いています。


餅工房 むらかみ

住所 岩手県岩手郡雫石町鴬宿6-25-8

電話番号 019-695-2441

営業時間 8時-18時

定休日 不定休

【この記事を書いた通信員】古山裕二(主な取材エリア:岩手県雫石町)
1972年生まれ。石川県金沢市出身。2017年4月より雫石町地域おこし協力隊として活動中です。「あたりまえの日常」のなかにある地域の魅力を発信していきたいです!





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