【文/写真:渡邊真子】大手文具メーカーとして知られるコクヨは近年、企業に働きやすいオフィスの設計を提案することで売上を伸ばしている。そんなコクヨの東北地方での販売を担うコクヨ東北販売が今年1月、「業務効率の改善」を目指して自社のオフィスを大規模リニューアルした。「働き方改革」をオフィスづくりで実践する同社を訪問し、経営戦略室の櫻田知絵さん(写真左)、社長の岡竹博昭さん(写真右)にお話を伺った。




「オフィスは働き方の実験場」

コクヨといえば約50年前、社員が実際に働いているオフィスを社外向けに公開する「ライブオフィス」を日本で初めて実施するなど、画期的なオフィスづくりに取り組み続ける企業だ。近年では他企業に対する働きやすいオフィスレイアウトの提案・設計などにも力を入れている。

新しくなったコクヨ東北販売のオフィスは、宮城県仙台市青葉区の建物の4階と8階に位置する。これまでも3〜4年ごとにライブオフィスをリニューアルし、働きやすいオフィス環境を追求してきたという同社。

「市場や経済の変化に先駆けて新しい働き方を実験してみようということで、色々チャレンジして来ました。もちろん失敗もありますが、とにかくやってみて、良い部分はお客様に提案していこうと。オフィスが働き方の実験場みたいなものですね」。そう語るのは、オフィスを案内していただいた経営戦略室の櫻田知絵さん。

情報共有スピード高める「業務効率アップ」のための空間づくり

今回大幅にリニューアルしたライブオフィスのコンセプトは「EMIT(エミット)」。“TIME(タイム)”の逆さ文字だ。

「時間に対する考え方や使い方を大きく変えて、業務効率を改善し、時短を目指してみようというスローガンなんです。“EMIT”という単語自体に「光やエネルギーなどを放つ」「声を出す、発する」という意味があり、創造的な活動をすることで新しいものを生み出して、周りに波及させていくことで企業価値を高めていこうという思いを込めて、このネーミングになりました」(櫻田さん)。

さっそく、新しくなったオフィスを案内してもらった。これまでは部署ごとにフロアや部屋が分かれるレイアウトだったが、今回は働くシーンや目的といった「オフィスの機能別」にフロアを分けた。4階は業務のさらなる効率性を追求するオフィスフロア。一方で8階は、社員の創造性や発想力を高めるための空間。社員がその時々に求める機能に合わせて、2つのフロア間を自由に移動できる設計にした。

4階は、「効率性」と「迅速性」にウェイトを置いたオフィスフロアだ。部署ごとにフロアの階数を分けるのではなく、営業・設計・支援部門を同じフロアに配置することにより、情報共有のスピード化を実現できたという。

家具の選定や配置の一つひとつにも意味がある。例えば、オフィス中央に位置する大きな円形のテーブル。ここは各部門長の固定席で、普段は部下のほうを向き、部下と相談をしたり決裁をしたりしているのだが、椅子に座ったまま各自がくるっと後ろを向くと、部門長同士がちょっとした打ち合わせができるしくみ。わざわざどこかに移動する必要もなく、各部門間の情報共有も容易になった。




「創造的な仕事」を生み出すためのフロアを新設

8階を訪れると、まるでインテリアショップのような空間が広がっていた。このフロアは、リフレッシュとクリエイティブな思考を目指すための空間として新設された。社員が業務の効率化によって生み出された時間を使って、革新的・創造的な仕事に取り組むためのフロアだ。

4階ではコクヨの家具が使われていたのに対し、8階に置かれた家具や小物などのほとんどは、コクヨのグループ会社であるインテリアショップ「アクタス」のもの。「私たちにはなかった、ちょっとしたオブジェや空間の使い方といったお洒落なアイデアが生まれた」と、櫻田さん。普段仕事をしている4階とは視覚的に大きく異なる空間を作ることで、普段とは違う社員の新しい発想を生み出すことがねらいだ。

各スペースには、著名人の名前が付けられている。畳敷きの小上がりスペースは「利休」、商談スペースは「コルビジュエ」、ソロワークコーナーは「ジョブズ」……各スペースの機能を象徴するかのような、快適でユニークな空間で、社員がゆったりとしたスペースで物事を考えたり、創造的な活動をしたりすることを促す。

「違う場所に移動することは集中力が高まることにもつながりますし、4階と8階を自分たちが行き来することで、モードを切り替えて仕事にメリハリをつけることが可能です」と、櫻田さんは語る。

オフィスづくりの本当の意義は、働く人のマインドを変えること

「よく『働き方改革』と言われていますが、何時になったらパソコンを閉じようとか、見回りがあって残っていると注意されるとか、「管理する」イメージがまだ強い気がします。本当の『働き方改革』ってそうじゃないと思う」。そう語るのは、コクヨ東北販売の岡竹博昭社長。

「管理的な『時短』だけでは、働いている人たちは全然面白くない。会社に行くとちょっとでもワクワクしたり、何か面白いことがあるから会社に行こうかなとか、そんな気持ちが少しでもないと、イマジネーションが湧いて来ないんじゃないかと思うんですよね。毎日毎日その同じような生活を繰り返すのではなくて、例えば、10個仕事があったとしたら3つだけでもいいから面白い仕事にチャレンジしろ、とよく社員には言っているんです」

オフィスレイアウトを変えることで業務効率を改善することはもちろん、効率化によってもたらされた時間を、社員の新規事業の着想や創造的な活動にあててもらう。社員が日々ただ目の前の業務に追われるのではなく、会社で「面白いこと」を自由に考えられる働き方を実現するための環境を整えようとしたのが、今回のリニューアルの肝だ。

岡竹社長は、こうして自社のオフィスリニューアルによって得られた知見を、他企業のオフィスづくりの提案に存分に活かしていきたいと意気込む。

「これまでは、パンフレットを眺めて選んでいただいたお客様の要望する商品を売っていることが多かったのですが、我々はお客さんの要望を超えたワクワクするような提案をしていきたいなと。文具や家具を1つでも多く売ることではなくて、そこのオフィスで働く人達のマインドがちょっとでも良い方向に変わっていく、という部分を提供できるかどうかというのが、我々の本当の意義なのではないかと思うんです」





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