作家・真山仁さんが描く東日本大震災

作家の真山仁さんが、東日本大震災をテーマに執筆した自身の小説を題材に読者と語り合う「読書会」を自主的に開く取り組みを始めている。5月下旬、真山さんは初めて、東日本大震災の被災地・宮城県仙台市で読書会を開催した。

 「読書会」は、真山さんが東日本大震災を題材に執筆した「そして、星の輝く夜がくる」の続編小説・「海は見えるか」が今年2月に刊行されてから、真山さんが自主的に始めた活動だ。真山さんは、震災を題材に「思いを込めて書いた本が、どのように読者に読まれたのかを知りたい」との動機から、東京と大阪で読書会を開催。被災地で読書会を開きたいという真山さんたっての希望で、仙台での読書会が実現した。

DSC_7765 (1)

「いつか小説家になったとき、震災を書かなくてはと思った」

 「震災が起きると、作家として何をするかを突きつけられる」。5月22日夜。約30人が集まった仙台市の「読書会」会場で、真山さんが語り始める。2011年3月11日の東日本大震災。あまりの被害の大きさにショックを受け、震災を書くことをためらう小説家が多かった中、真山さんはいち早く、東日本大震災をテーマにした小説に取り組み始めた。

 真山さんの脳裏には、1995年の阪神・淡路大震災があった。当時神戸市でフリーライターをしていた真山さんは、震源地から約10kmの場所に住んでいたというが、奇跡的に大きな被害はなかった。「いつか小説家になったときに、あのときの恐怖、無力感や、被害が大きくなかった人のことについても、ちゃんと書かなければならないとずっと思っていた」

「“ハゲタカ”の人が、震災を書くの?」

 真山さんは2004年、経済小説「ハゲタカ」でデビュー。NHKでドラマ化されるとたちまち話題となり、さらには映画化するなど大きな反響を読んだ。一躍人気作家となった真山さんだが、かねてからの「阪神大震災を書きたい」という思いを出版社に伝えると、反応は芳しくなかった。

 「初期のころから出版社に提案していたが、ハゲタカを書いている人がなぜ震災を書くのか、と言われ、阪神大震災を書けずに時間が流れた。だからこそ東日本大震災が起きたとき、小説だから書けることを書きたいと思った」

 震災を題材にするにあたっては、「誰も書かないことを書く」と決めていたという。小説の舞台に選んだのは、小学校。子供たちの視点から見える震災を描きたかった。「マスコミは今回の震災で、初期から『つながろう、負けないで、頑張ろう』など、明るく前向きなメッセージを発信したがっていた。特に多かったのは、『被災しても明るい、けなげな子どもたち』を題材に追いかけること。大きな災害が起こると、避難所の子どもたちは明るく振る舞ってしまうところがある。それは悪いことではないけど、子どもたちは大人たちのためにどんどん頑張ってしまって、本当は抱いている恐怖や嫌な思いを口に出せなくなる。大人たちの期待するものではない、子どもたちの目から、震災を見たかった」

 真山さんは震災から半年後の2011年9月に、早くも短編小説を雑誌に寄稿。約3カ月おきに被災地に足を運び、いつも必ず同じ場所を訪ねるようにした。岩手の釜石、大槌、大船渡、宮城の気仙沼、南三陸町、石巻、仙台。変わりゆく風景、時間が経ってもいつまでも変わらないものの双方を追いつつ、その場に立つことで感じたことを重視し、「自分自身に取材しながら」筆を進めた。2014年、東日本大震災で被災した小学校を舞台にした短編小説集「そして、星が輝く夜がくる」を刊行した。

震災を「小説」で表現する葛藤

 震災を「小説」で表現することに、葛藤もあったという。「『そして、星が輝く夜がくる』で、やめるつもりだった。いくら小説として被災地を伝えたいという思いがあっても、部外者が土足でふみこんで物語を作るのはひどいことなのではないだろうか、という自覚があった」。後押ししたのは、続編を望む読者の声だった。「おしまいにすべきかと思ったが、多くの読者に、この後どうなるのか?と聞かれた。被災地は全然変わっていないのに、もう関心をもたなくていいという意味なのか、と問いただされたこともあった」と、続編の執筆に踏み切った理由を語る。
 そして今年2月、続編「海は見えるか」を刊行。被災地で初めて開く読書会で、東日本大震災を経験した仙台の人々が、この物語をどう読んだのかを知りたかったという。「逃げませんので、できるだけ踏み込んで下さい」と話し、会場からの質問に真摯に答えた。

◆真山仁(まやま・じん)
1962年、大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業後、新聞記者、フリーライターを経て、2004年に経済小説「ハゲタカ」で小説家デビュー。同小説はベストセラーとなり、NHKドラマでの放送や映画化でも大きな反響を呼んだ。地熱発電の可能性を描いた「マグマ」や、原発事故以前に事故の危険性を指摘した「ベイジン」など、現代の社会問題に鋭く切り込むフィクション小説を数多く発表している。東日本大震災後は東北へ度々足を運び、2014年に震災をテーマにした小説「そして、星の輝く夜がくる」を刊行。2016年2月、続編となる「海は見えるか」を発表した。

最新情報をチェックしよう!
>TOHOKU360とは?

TOHOKU360とは?

TOHOKU360は、東北のいまを東北に住むみんなの手で伝える、参加型の"ニュースプロジェクト"です。経験豊富なメディア出身者で構成される「編集者」と、東北6県の各地に住む住民の「通信員」とが力を合わせ、まだ知られていない価値あるニュースを一人一人が自分の足元から発掘し、全国へ、世界へと発信します。

CTR IMG