【中田敦(ローカルニュースライター講座in渋谷)=東京都荒川区】テレビの横でこんがらがっていたコードをすっきりとまとめてみたら、なんとも間の抜けた空間ができてしまった。ここに何かを置くのなら、植物がいいだろうと思った。僕の住む1Kの小さな部屋は、打ちっぱなしのコンクリートで囲まれていて、心を潤してくれるような緑は無い。そういえば近所におしゃれな花屋さんがあったと思い出したので行ってみたのだが、そこで僕はひどく驚いてしまった。そこは花屋さんではなく、電気屋さんだった。電気屋さんなのだけれど、「ライフスタイルショップ」だった。たくさんの植物に囲まれた素敵な店内には、オーナー・福嶋さんの「暮らし」に対する確かな想いが詰まっていた。




ライフスタイルショップ『アニマガレージ』(中田敦撮影)

 東京都荒川区・町屋。駅前から伸びるバス通りを一本入った狭い路地に、そのライフスタイルショップ『anima garage(アニマガレージ)』はある。その日、お店の横のガレージで音楽のライブイベントが行われることになっていた。正午、少し前。ライブの開場時間より早く到着すると、近所では建設の工事が行われていた。いつもは静かな路地を、大きなトラックが通り過ぎて行く。工事の音が周りの建物に反響して、辺り一帯を包んでいる。その中で、お店の前だけが違っていた。リハーサルのための歌とピアノの音が強く優しく鳴っている。自転車にまたがったままの人が、ガレージの中を覗き込んでいる。母親の手を引きながら、こどもたちが集まってきた。

 『anima garage』のオーナー・福嶋慶太さんは、電気屋さんの三代目。お店を運営しつつ、今も電気工事の現場を飛び回っている。「暮らしの中において照明は、照らすものではなくて灯すものであって欲しい。そう思って照明設計をしています。例えば食事の時には、キャンドルのように食卓を灯すほうが美味しく感じますよね」。ライブ会場を見渡すと、柔らかい明かりや季節の植物で彩られている。それらはどれも福嶋さんの手によるもの。「照明と植物って似ているところがあるんです」と、福嶋さん。「照明も植物も、暮らしの周りにないと寂しいものですよね。どちらも暮らしに欠かすことのできない大切なものだと思っています」

 近所の工事は職人さんのお昼休憩のために、正午で一旦作業が止まる。その一瞬の合間を縫ってライブが行われるのだ。そして、工事の音が止んだのを合図にライブがスタート。ガレージに響く、歌とピアノ。それに合わせて、こどもたちが踊ったり手拍子をしたりしている。「こどもたちにも質のいい音楽を届けたいと思って、今日はこどもっぽい音楽はやらないことにしました」。福嶋さんの暮らしに対する想いは、未来の方を向いている。「音楽の道に進むわけじゃなくても、こういう体験って、のちのちの暮らしにどこかでつながってくると思うんですよね」

アニマガレージ店内の様子(中田敦撮影)

 『anima garage』の店内には、植物のほかにもオリジナルのエコバッグや、オーガニックのお米などが並ぶ。ものを売るだけではなく、消費について考える力をつけていきたいと話す福嶋さん。「森が伐採されていくのを止めることはできなくても、商品が環境に与える影響を考えてものを選ぶことは自分たちでできることですから」。暮らしのために、自分のできる範囲でできること。照明も植物も音楽ライブも、すべてがつながっているようだった。

 そろそろ外の工事が騒がしくなってきたところで、ライブは最後の曲へ。締めくくるのは、カーペンターズの「Rainbow Connection」。虹の架け橋が持つ魔法を信じているよ、という歌。さあ、こどもも大人も、みんなで手拍子を。

 福嶋さんが心がける「美しく過ごすこと」が、『anima garage』には詰まっている。そして、『anima garage』からその輪がすこしずつ広がっている。僕の部屋のあの間の抜けた空間には、アロエの一種「ディコトマ」の鉢が置かれることになった。今ではすっかり暮らしに欠かすことのできないものになった。出かける前に陽の当たる向きを変えたり、帰ってきて土の乾きを触って確かめたりするとき、虹の架け橋のように福嶋さんの想いがここにも届けられているように思うのだ。

この記事は2017年2月〜3月まで東京都渋谷区のコワーキングスペースco-ba shibuyaで開催されたco-ba school「ローカルニュースライター実践講座」の受講生が執筆した記事です。6月からの二期目の受講生を募集中です。





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