南相馬市小高区の夜を“チャラくする” DJイベント開催 福島

【安藤歩美=福島県南相馬市】東日本大震災で地震と津波被害を受け、東京電力福島第一原発事故により避難指示区域に指定された福島県南相馬市小高区。2016年7月にほぼ全域で避難指示が解除された後も震災前の約2割超しか人口が戻っておらず、通りを歩く人の姿はあまり見られない。

そんな小高区で2月10日、東京などから若者が集まるツアー型のDJパーティーが開かれた。キャッチフレーズは “田舎の夜をチャラくする” 。そこに込められた主催者の思いとは。

「視察」ではなく「遊び」を

企画したのは「Next Commons Lab南相馬」の井上雄大さん(26)。長野県安曇野市出身で、京都市で会社員生活をした後2018年3月に南相馬市小高区に移住し、起業支援活動にあたっている。今回のイベントは南相馬市の市民が自らツアーを企画する市の事業「南相馬たびづくりスクール」で、複数の住民提案の中から井上さんが提案した「手作りDJイベント」が人気投票で選ばれ、実現が決まった。

なぜ小高で「DJイベント」なのか?井上さんは「視察ではなく『遊び』を作りたかった」と話す。「小高は原発被災地ということで、研修・視察で訪れる人が多い地域です。でも、地域外の人に、単純に面白い場所だから遊びに行こう、と思って来てもらえるようなツアーを作りたかった。僕は音楽が好きなので、音楽イベントを参加者と一緒に作り上げたら楽しいんじゃないかと思いました」

ミラーボールにDJブース。「ここが本当に小高!?」

参加者の製作したスピーカーで、参加者がDJをつとめる

ツアーには東京、宮城、京都から、20代〜40代の9人の男女が参加。10日の昼に小高に集まり、街を歩き、地元の寿司屋で昼食を取った。参加者はオープンしたばかりのコワーキングスペース「小高パイオニアヴィレッジ」で、DJパーティーで使うスピーカーを手作りで2台製作。会場にミラーボールを取り付け、スポットライトを設置し、LEDのイルミネーションを飾り、DJブースを設置し…。参加者みんなで作り上げた会場は「ここが本当に小高!?」と目を疑ってしまうほど、まるでクラブのような空間となった。

会場にはそれぞれが持ち寄った食べ物やお酒が並び、夜からはDJパーティーが始まる。参加者たちがDJを担当し、それぞれの個性ある選曲にフロアは大盛り上がり。地元住民も参加し、みんなで一緒に踊ったり、会話を楽しんだりと、笑顔と笑い声の絶えない夜となった。

参加者の手で一夜だけクラブのような空間に変わった「小高パイオニアヴィレッジ」

移住者だからこそ、思い切ってできることもある

井上さんは「こちらがゲストを迎える側だったはずが、ツアー参加者がそれぞれの能力を発揮して自ら面白くしようと動いてくれました。例えば『野菜の語り部』という活動をしている方は瑞々しい野菜を持参してずっとキッチンで料理をしてくれたり、本職のDJの方がフロアを盛り上げてくれたり。空間を一緒に作り上げた仲間、という感じがしてとても楽しかったですね」とイベントを振り返る。

参加者はイベント終了後もSNSで連絡を取り合っており、企画を通じて小高や南相馬で生きる人々と参加者との多くのつながりが生まれた。「移住してきて以前の南相馬をあまり知らないからこそ、不謹慎なのではないか?と思ってしまいそうなことも思い切ってできることがあると思うし、自分だから巻き込める人もいる。自分の役割を、最近はそう感じています。これからも批判を恐れずに、色々仕掛けていけたらと思います」

福島県浪江町名物「浪江焼きそば」も会場に並んだ
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