【いまさら聞けない仙台市長選③】市長の給料ってどのくらいなの?

23日投開票の仙台市長選まであと一週間。でもそもそも、市長の役割って?普段どんな仕事をしているの?今さら聞けないそんな疑問点について、政治学が専門で塾講師の池亨さんが、分かりやすく解説します。

第一回第二回

さて、みなさんが仙台市長になったら、その仕事に応じて「お給料」が支払われます。景気が悪くなって民間企業の給料が下がると、「政治家や役人の給料を引き下げるべきだ!」という意見が、しばしば目立つようになります。地域政党「減税日本」を率いる名古屋市の河村たかし市長のように、自らの給料を「市民並み」に引き下げることを公約して立候補する政治家も出てきました。

奥山市長の給料はいくらだった?

さきごろ、県内の各メディアでも報道されましたが、奥山恵美子仙台市長の2016(平成28)年の1年間の給与所得は約1860万円でした。この額だけを見ると「高いなぁ」と思う人もいるかもしれませんね。

政治家は国か地方かを問わず、毎年1回、7月の初めに所得を公開することになっています。以下の表は、市長職以外に副業のない奥山市長の過去5年分の給与所得です。この中にはいわゆる「ボーナス(期末手当)」や勤務地による「地域手当」が含まれています。

(表1)2012~2016年の仙台市長年間給与所得

2011年以降は震災復興の財源確保を理由に給与カットをしていました。さらに2015年に選挙事務をめぐる不祥事があったため、この年だけ支給額は特に下がっています。少なくとも前・梅原市長時代の2002(平成14)年以来、今年度も正規の月額(131万円)からの7%カットを続けています。市長の給与はその時々のできごとに左右されて必ずしも一定しません

会社の経営者が、業績が上がらなかったり、不祥事の責任をとって自らの報酬をカットしたりするのと同じですね。もっとも、顧客を選べる民間企業の売り上げや利益と違い、住民を選べない行政では、税収減少や財政赤字の原因を市長さんだけの責任にするにはかなりきびしいものがあります。

2回で説明したように、大組織を切り回す市長の仕事はめちゃくちゃ忙しく、また責任も重い仕事です。それなりの判断力や能力、責任が求められます。さらに任期を重ねて務めるためには、次の選挙のための資金も必要になります。

政令指定都市の市長として、仙台市長の給与は高いのかそれとも安いのか、いくつかの角度から検討してみましょう。




政令指定都市の市長給与は、どんぐりのせいくらべ?

全国の政令指定都市についての最新決算データ2015(平成27)年度のものになっています。これをもとに、各市の市長の給与を比べてみます。

(筆者作成)

仙台市は約122万円で全20市中第9位。各市の平均をやや上回ってはいますね(この年は減給されていたので、この次の年度は上がっていると思われます)。とはいえ、額をみると人口の多い横浜市長が第1位で約159万円とやや飛びぬけているものの、各市はだいたい130万円から110万円台のあいだに納まっています。先ほどふれた河村名古屋市長(一般職員数1万466人)だけが44万円とぐんと低くなっています。

なお、あの経営再建中の電機メーカー、シャープ株式会社(単体:社員13363人)ですら、20173月期の一人当たり平均の役員報酬は年間約961万円ですから、月額にして約80万。あまりに額が低いのも考えものです。

給与の額は何で決まる?最も強い関係を持つのは「人口」

じゃあ、いったい市長の給与はどう決まるの?決定的なたったひとつの根拠というものはなく、さまざまな思わくや要因が絡み合っています。ですが、さまざまな統計データを分析して推測してみると、市役所の予算や仕事の量を決めるおおもとになる「人口」と「給与」との間に最も強い関係があるようです。もうひとつは支持を獲得するために「市長給与削減」を公約したことが、強い影響をあたえることもあるでしょう。

(筆者作成)

まんなかの青い点線(回帰曲線といいます)は給与が人口規模によって決まると仮に考えてみたときに、これらのデータから統計的に導き出されるふたつの要素の標準的な比例関係を表しています。名古屋市長、大阪維新の会出身の大阪市と堺市の両市長と、千葉市長のデータはこの点線の式を求める計算から外してあります。人口よりも、当人や所属政党の公約などの影響が大きいと考えられるからです。人口に対して、給与額をあらわす点が線の上側に来ていると高め、下側にあるときには安めということですが、あくまでひとつの「目安」です。

仙台市は、いわゆる「地方中枢都市」とよばれます。都市の「格」、周りの地域にあたえる影響の大きさとしては、札幌市、広島市、福岡市に肩を並べます。人口の大きさでは広島市と北九州市のあいだになります。あまりこれらの地方中枢都市や「百万都市」とは大きな差がなさそうです。またこの線にほぼそっているので、この年度の平均給与月額は、人口を基準にしてみる限り「高からず安からず」といったあんばいです。

反面、給与カットを公約した市長さんたちの給与額は、かなりこの線から遠ざかっていますね。公約の重みでしょうか。




「職員1人あたりの住民人口」も関係

加えて職員1人あたりの住民人口が多い(相対的に職員数が少ない)市も、この点線より上にプロットされている傾向があります。表2の静岡市や浜松市がこれにあたります。反面、京都市のように職員1人当たりの人口が少ない(相対的に職員数が多くなる)市は市長の給与が低めに出る傾向があるようです。

首長に若干報酬を手厚くしている自治体は、職員を効率よく働かせていると受け取ることもできますし、裏返せば住民に対するサービスが薄めと取れるかもしれません。

(表2)政令指定都市の職員一人当たりの住民人口

※職員からは消防·教育·技能労務職員は除く。平成27年総務省市町村決算データをもとに筆者作成。

さて、あなたが市長になろうとしたら、まず給与カットを公約して市民の歓心を買って支持を集めますか?それともしっかりもらうものはもらってその分、給与に「見合う」市長の仕事を存分にしようと思いますか?次回はそうした市長の座を、実際どんな人びとが射止めているのか。そのことについてお話しましょう。

*池亨(いけ・とおる)

1977年、岩手県一関市生まれ。埼玉県で育つ。宇都宮大学教育学部社会専修(法学・政治学分野)、東北大学大学院情報科学研究科博士前期課程(政治情報学)を経て、東北大学法学研究科博士後期課程満期退学。修士(情報科学)。現在、㈱ワオ・コーポレーション能開センター講師。これまでに、宮城県市町村研修所講師(非常勤)、東北工業大学講師(非常勤)ほか。




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