選挙前に走っていた街宣車って違反じゃないの?「政治活動」と「選挙活動」というカラクリ

仙台市長選が9日に告示され、街中では候補者をアピールする選挙カーの姿もよく目にするようになってきました。でも、皆さんは選挙戦の前から候補者の名前を呼んでいる街宣車が走っているのを見たことがありませんか?あれって違反じゃないの?と、疑問に思われている方もいるのではないでしょうか。今回は、そのカラクリについて説明します。

選挙期間前の「選挙活動」は法律で禁止されている!

選挙期間前の活動と選挙期間中の活動には線引きがあります。選挙期間前の活動は「政治活動」といい、選挙期間中の活動は「選挙活動」といいます。公職選挙法では、選挙前に特定の候補者への投票を呼びかける「選挙運動」をしてはいけないという、事前運動の禁止というルールがあります

実際今回の選挙戦の前にも、宮城県の村井嘉浩知事が選挙期間前に公開された動画で特定候補者を応援したことが「選挙活動」とみなされる恐れがあるとの報道がありました6/30河北新報オンライン:<仙台市長選>宮城知事の応援動画「事前運動の恐れ」)。

選挙戦前も「選挙よろしく!投票してね!」と言わなければ問題がない

でも、選挙戦前(告示日の前)から街宣車が候補者を宣伝しているのを見たし、どの候補も活動していたじゃないか?と、疑問に思われる方も多いと思います。実は選挙前の街頭演説を聴いたり、候補予定者の印刷物を見たりして頂ければわかるのですが、選挙期間前の活動では「投票を呼びかける」ことは言っていませんし、書いてもいません。要するに、「選挙よろしく!投票してね!」と言わなければ問題がないのです※。これが、選挙期間前に許される「政治活動」です。(※演説してる応援弁士が誤って言ってしまう場合や候補予定者が勢い余って言ってしまうことはごくまれにあります笑)

告示前にも、街宣車は出すことができます。但し「個人の名前」が書いてある車を使うことはできません。政党や、候補予定者が届け出ている政治団体の車を使います。街宣車からの演説でも「私たちは<候補予定者>さんを応援する市民の会です!」というようなフレーズになっているはずです。

告示後は候補者の名前を「連呼」できるようになる

また選挙戦前は、候補予定者の名前の「連呼」も禁止されています。連呼でなければいいので、ところどころ名前を入れることは許容されています。逆に選挙期間になれば、投票依頼や名前の連呼はいくらでもして構いません。(筆者が新人候補の選挙を手伝ったときは、知名度がないので選挙カーに乗ったとき名前の連呼が半分くらいのときもありました)

逆に、選挙期間の「前」にしかできないこともあります。個別に家々を訪問する「戸別訪問」は、選挙期間中にはできません。なぜ禁止されているかというと、選挙期間中に戸別訪問をすることが金銭授受の温床となると考えられているためです。(それでは選挙期間前の戸別訪問では金銭授受が起きる恐れはないのか?というと、そうとは言い切れないと思うのですが…)

線引き難しいルール、候補者陣営は細心の注意を払っている!

選挙活動と政治活動の線引きを簡単にまとめます。

選挙活動…立候補しました!投票してね!よろしくね!(本人)

この人立候補してるからよろしく頼むよ!市長にしてやってね!(支援者)

政治活動…地域のために頑張ってます!地域を良くします!(本人)

応援しています!(支援者)

一見曖昧な基準に見えますが、政治活動では「○○の選挙に立候補しています」ということが言えず、選挙活動ではそれが言える、ということなのです。

冒頭で挙げた村井知事の動画がなぜ問題視されたのか、もうお分りだと思います。選挙期間前に公開された動画の中で、村井知事は今回の選挙に出馬する具体的な候補予定者の名前を出し、「応援してください」と明確に呼びかけていました。これは上に書いた通り「選挙活動」である事前運動にあたるとの見方がされてしまいます。もし動画の公開日が選挙期間中、つまり今回は告示日である7月9日以降であれば、全く問題はありませんでした。この例を見ても分かるように、選挙に関するルールは線引きが難しいため、各候補の選挙対策本部は細心の注意を払って日々活動をしているのです。

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