カラフルなテントが所狭しと並ぶ都内の公園(小林知史撮影)

「公園でテントを張る人」が都内で増加中 人気の理由を追った

【小林知史通信員=東京】公園にテントを持ち込む人が、小さな子供を持つ家庭を中心に増えている。開閉が容易なワンタッチテントの普及を背景に、授乳や着替えを行うための手軽なプライベート空間として人気が高まっているようだ。一方、東京都内近郊の公園では、テントやタープ(日除け)の使用には依然として制限も多い。春から夏にかけて都内の公園を歩き、取材してみた。

子供の面倒を見るのに便利、紫外線対策…さまざまな利便性で人気に

赤、青、黄色。5月下旬、都内郊外の都立公園広場を訪れると、色とりどりのテントやタープが一同に並んでいた。「公園テント」の需要が高いのはまず家族連れだ。「授乳する時にも便利だし、着替えする時にもとても楽」と話すのは、1歳の息子とともにテントの下で休む30代の女性。「大きくなってきた長男を外で遊ばせて、自分はまだ小さな次男の世話をゆっくりできる。荷物置き場としても使えるしとても便利。テントなしで二人の子供の面倒をみるのは辛い」。親世代の子供時代に比べて紫外線がキツくなってきているという噂が広まり、「子供が生まれたのを機にテントを買うというママ友達も多いです」とも教えてくれた。

カラフルなテントが所狭しと並ぶ都内の公園(小林知史撮影)
カラフルなテントが所狭しと並ぶ都内の公園(小林知史撮影)

妻や3人の子供とともに月に2回程度この公園を訪れているという30代会社員の男性も、子供が歩き始めるようになりテントを使うようになったという。災害の時にもテントがあれば便利という考えも購入を後押しした。「実際に使ってみると値段も3千円程度からと意外に安かった。いまは子供の数も増えてきたのでグレードアップして1万5千円の大きめのテントを買いました」と満足げだ。

テントを活用するのは小さな子供を持つ家庭にとどまらない。声をかけたのは、立川市の国営昭和記念公園にいた60代会社員の女性。月に一回程度、20代会社員の娘二人とともに休日に公園に出かけるという。7月下旬の取材日にも、青色のテントの下、サンドウィッチを片手にカードゲームの「UNO」を楽しんでいた。「自分はもともと登山を趣味にするほどのアウトドア好き。でも家族はインドア派で外出したがらなかった。ワンタッチテントは『日陰が作れるから』と娘たちの方からリクエストしてきた。使ってみると開閉が思っていた以上に簡単でビックリ。テントをきっかけに家族で公園に出かける習慣ができました」と嬉しそう。

テントが普及してきたのはごく最近のことだ。公園近くに数十年住んできたという50代の男性も「ここ1~2年くらいでぐっと増えました。夏にかけてどんどん増えていく感じです」と語る。

広がる「公園テント」の一方で、一様ではない行政の対応

お父さんは子どもとキャッチボールやバドミントン。お母さんはテントの中。5月下旬の公園広場で、たくさんの家族が思い思いに時間をすごしていた(小林知史撮影)
お父さんは子どもとキャッチボールやバドミントン。お母さんはテントの中。5月下旬の公園広場で、たくさんの家族が思い思いに時間をすごしていた(小林知史撮影)

じわじわと広がる公園テントに、行政側の対応は一様ではない。国営の昭和記念公園では園内の一部広場で2m(メートル)四方以内のドームテントの使用が認められている。他方、代々木公園や小金井公園などを管轄する、東京都建設局公園緑地部公園課は「都立公園では原則的にテントやタープの使用は禁止です」と語気を強める。バーベキューエリアなど一部で例外を認めている場所はあるが、風でテントやタープが飛ばされて他の利用者のケガに繋がる懸念があり、原則として広場などでの使用は禁止しているそうだ。取材にも「公園にテントがたくさんあるってそれどこの公園のことですか?こちらでは把握していません」と困惑気味に応えていた。

取材の中で、テントが実際に張られていた場所でも、規則上はテントの使用が禁止されていた場所も多いこともわかってきた。テントの使用が一部で認められている昭和記念公園でも、イベントなど事前申請があるものを除き、杭を芝生に打ち込むことやテントの内部が見えない設置の仕方は防犯の観点から禁止だという。さらに都立公園とは逆に、火災を防止するためにバーベキュー広場でのテント・タープの設置は一切禁止しているそうだ。

公園テントには、プライバシーも確保しながら、気軽に外遊びも楽しめるというメリットがある。外遊びを楽しみたい子育て世代にとって、テントを活用する意義も大きい。周囲の安全を損なわない形で楽しめるルールはないものか。取材をしながらそんなことを考えた。

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