【渡辺炎如=東北ニューススクールin雫石】岩手県滝沢市の若手職員で構成されるチーム「UMAYA」(うまや)は、公務員なのに公務時間外の時間を使って地域の活性化につながる活動を続ける。なぜ、給料が発生しない公務時間外に仕事のようなことをするのか。原動力となっている「想い」や、活動を通じて得たものについてメンバーに話を伺った。



公務時間外でのみ活動する公務員チームUMAYA

市役所から人影が消えた公務時間外に活動するUMAYA(渡辺炎如撮影)

UMAYAは、「地元の価値を創造する活動を通じて、まちの活性化及びPRにつなげる」をテーマに、滝沢市役所に勤務する若手職員(20〜30代)が中心となり集まったチームである。2017年3月から発足し、現在17〜18人のメンバーとなっている。皆、「自身のスキルアップや地域のためになることを楽しみながらやりたい」という想いで集まったメンバーだ。

公務員が地元地域のために働くことは業務として当然であるが、UMAYAの活動は全て公務時間外に行われている。決してサービス残業などではなく、100%有志での活動だ。
その理由としてUMAYAメンバーである企画総務部企画政策課の川嶋陽さん(31)はこう話してくれた。「与えられた仕事の中で、公務時間での活動は全て仕事になってしまうし、(公務員として)ルールや規則(お金の絡みや申請の手続きなど)がある中だとやれることに限界が出てきます。公務時間外にやることで、仕事ではやりにくかったグレーゾーンを攻めた自由な活動ができるというおもしろい面もあるのが理由です」

UMAYAの名前に込めた意味「壁を取っ払いたかった」

「グレーゾーンを攻めたい」川嶋陽さん(渡辺炎如撮影)

UMAYAの由来は「馬屋」から来ている。滝沢市は昔から馬事文化があり、家屋と馬小屋が壁を隔てることなく一つの家の中で共存していた歴史がある。馬だから、人だからという壁はなく、ともに暮らすパートナとして壁を隔てない関係性でいたいという想いからの着想だ。ここでいう壁とは民間と行政、担当課の違いなどを指している。

「現状維持が不安だった」

活動を始めるきっかけになったときの気持ちを同じ課の野舘洋輔さん(31)はこう話してくれた。「現状維持に不安を感じた。世の中から置いてかれるような気がしていた」

同様に、他のメンバーも他県で活発になっている地域を盛り上げる様々な活動の話を聞くたびに「自分たちは今のままで良いのか…?」「もっと何かやりたい!」という想いが強くなったという。その想いを共有するメンバーが次第に増え、UMAYAが始まり、職員間で意見交換をするなど勉強会を行っていった。

「現状維持が不安だった」とかっこいいことを言い、満足げな野舘洋輔さん(渡辺炎如撮影)

初めて結果に繋がった。全国コンテストで大賞を受賞

2017年の春、UMAYAメンバーで全国シティセールスストラップデザインコンテスト2017に応募するためにご当地ストラップのデザインを考える活動がスタートした。しかし、メンバーだけでは納得のいくデザインが作れず、地元のグラフィックデザイナーに相談。デザイナーもUMAYAの活動趣旨に共感し、一緒にデザインを考えることになった。

コンテストの結果は、見事大賞を受賞。全国から420点もの応募の中から大賞20点が選ばれ、その中に滝沢市のストラップが選ばれた。UMAYAの名前に込めた意味のように、壁を取っ払い行政と民間が一緒にスタートした活動に初めて目に見える結果が誕生した瞬間だった。

賞を取っただけでは終わっていない。入賞後に、地元で事務用品を販売している民間企業がストラップの販売に手を挙げ追加生産し、ストラップを商品化。地元のデザイナー、地元の販売のプロ、行政と民間が手を取りそれぞれの強みを活かし、地元の活性と関係人口の広がりを見せている。

大賞を受賞したストラップ(川嶋陽さん提供)

これからのUMAYA「関係人口を増やし、可能性を広げたい」

コンテストでの大賞受賞の後は民間とともに勉強会も開催している。1回目は、ストラップデザインの際にともに活動したデザイナーを講師に、「デザインの力」をテーマにした勉強会を開催。2回目は岩手特化型のクラウドファンディングサービスを運営する団体の方を講師に「クラウドファンディングを知ってみよう」を開催。これらがテーマになった経緯は、ストラップづくりのときにUMAYAメンバーが課題と感じた「デザインする力」と「資金集め」からの着想だ。勉強会ももちろん公務時間外に開催している。

勉強会「デザインする力」の様子(川嶋陽さん提供)
勉強会「クラウドファンディングを知ってみよう」の様子(川嶋陽さん提供)

勉強会を通じ、インプットとアウトプットを繰り返していくことで自身のスキルアップに繋がるだけでなく、人と人との繋がりの場にもなっている。

「今はまだ序章です。活動を通じてどんどん繋がりが広がることで、何かを始めるときに頼れる人が増えてくる。手を差し伸べてくれる人が増えてくる。関係人口が増えることでいろいろな可能性が生まれると思っています」と、川嶋さんは話した。これからのUMAYA活動が滝沢市にどんなワクワクを生むのか楽しみである。

この記事を書いた人:渡辺炎如(Kai WATANABE)
1982年岩手県滝沢市生まれ。滝沢市を拠点にグラフィックデザインの仕事をしています。モットーは「デザインを通じて地域にワクワクを」。 通信員の活動を通じて、岩手県滝沢市のワクワクをたくさんの人に届けたいです!

*この記事は2018年9月〜10月に岩手県雫石町地域おこし協力隊とTOHOKU360の共催で開かれた「東北ニューススクールin雫石」の受講生が取材・執筆した記事です。東北ニューススクールとは「住民が自らニュースを書く」ニュースサイト・TOHOKU360が東北各地で自分の街から価値あるニュースを発掘し、発信する力を持つ「通信員」を養成するために開催している講座です。→現在の通信員一覧






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