フォークソングの魅力を知る人たちが集まり、演奏して楽しむ酒場が東北地方最大の夜の街、国分町の一画にあります。2011年3月11日の東日本大震災のため客足が途絶え、一時は閉店も考えたそうですが、多くの音楽ファンに支えられてやっと丸6年。PP&M(ピーター・ポール&マリー)やボブ・ディラン、岡林信康など、フォークの古典やグループサウンズ、ジャズ、時には歌謡曲までが流れる空間となっています。【佐藤和文:メディアプロジェクト仙台】



日本で最も垣根の低い飛び入り空間

酒場の名は「アコースティックライブWant You(ウォンチュー)」。カウンターとソファー席を合わせて30人ほどが座れる店には、ドラムも含めて5人ほどが演奏できるミニステージが用意されています。

セミプロのミュージシャンでもある経営者の上野清仁さん(65)がさまざまなグループに声掛けしてゲスト演奏する機会を設けています。客が飛び入りで演奏しやすいように、上野さん自身が一緒に演奏することも珍しくありません。のどや楽器に少しでも覚えのある人にとっては、日本で最も垣根の低い飛び入り空間といえるでしょう。

毎月第一土曜日、Want Youで演奏しているフォークグループ「Modern Folk Revival(モダン フォーク リバイバル)」は、上野さんのすすめで結成されました。4人全員が60代です。活動を始めて3年目。上野さんもメンバーとなっています。

フォークグループ「Modern Folk Revival」の演奏風景(佐藤和文撮影)

ギターとボーカルを担当している佐藤義憲さん(68)は東北大のフォークソング研究会の初代部長だった人。大学を卒業後は仕事に追われて演奏どころではなく、ギターに触ったのも50年ぶりだったそうです。

「ジャズフェス(定禅寺ストリートジャズフェスティバルin仙台)に出たら、大学の後輩たちがたくさん聴きに来てくれました。このCDを持ってね」。見せてくれたのは、佐藤さんが活動していた当時のフォークグループの演奏の録音をデジタル化し、2枚のCDにまとめたものでした。佐藤さんにとっては、50年ぶりに音楽活動を再開して実感できたつながりだったでしょう。



「若い人にも知ってほしい」フォークソングのメッセージ

上野さんはフォークソングの魅力について「フォークソングにはメッセージがいっぱい詰まっている。言葉を大切にする音楽はいい」としみじみとした口調で話します。

「今の世の中、本当にひどいことになっている。少しでもいい世の中にするには、一人ひとりの声、メッセージを大事にしなければいけない。フォークソングには、政治への反発・抵抗を歌ったものから、好きになった人への思いを表現した曲まで、メッセージの豊かな作品が数多くあります、若い人たちにもぜひ知ってほしい」

そう言いながら上野さんがギターの弾き語りで披露したのは「君に捧げるラブ・ソング」。日本のフォークソングの神様と言われた岡林信康さんの作詞作曲(1979年)。「世話になった写真家が病に倒れたとき、自分は何もしてやれないからと言って、その人のベッドの傍らで歌ったと言われる曲です」

「君に捧げるラブ・ソング」を歌う上野さん(佐藤和文撮影)

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2000年代半ば以降、気軽に演奏できることを売りにした「フォーク酒場」が全国各地にできました。ウェブサイト「戦うオヤジの応援団」(特定非営利活動法人「アコースティックギターローカルネットワーク」)http://tatakauoyaji.com/のまとめによると、全国で219店が登録されています。そのうち仙台市は5店、東北6県は16店となっています。既に高齢者(65歳以上)の仲間入りをしている「団塊の世代」は「ビートルズ」「グループサウンズ」「フォークソング」に親しむ経験を持っています。「フォーク酒場」にかかわる人たちは今後、どのような音楽空間を作っていくのでしょうか。



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