「生物は死滅する時に、進化する」

消滅可能性都市・秋田県湯沢市で生まれた「新しい場」

【PR記事】秋田県の最南端に位置する湯沢市。ピーク時から人口が約4割減った消滅可能性都市のひとつだ。冬は、背丈をゆうに越す豪雪に閉ざされるこの街で、今、地元の若者と外部の人たちが手を取り合い、独特の産業や文化、人の交流を生み出そうとする新しい枠組みが生まれようとしている。会場となった創業151年の味噌醤油醸造会社の七代目は、こう語る。「生物は、絶滅の危機に瀕した時に進化する。街も同じです」。消滅可能性都市・秋田県湯沢市で今何が起きているのか、取材した。【中野宏一=秋田県湯沢市】

雪の降りしきる街の味噌醤油店で、人々が夢を語る

会場は秋田県湯沢市にある創業151年の「ヤマモ味噌醤油醸造元」。発表者の側には仏壇が

 2月25日午後、秋田県湯沢市岩崎にある「ヤマモ味噌醤油醸造元」に、50名を超える人が集まった。「湯沢プラットフォーム・キックオフイベント」と題されたイベントの会場は、創業1867年(慶応3年)の「ヤマモ」が、昔から使っていた味噌醤油醸造の建物だ。ランプが灯され、スピーカーからは洋楽が流れる。この日の湯沢市は最高気温マイナス1.7度。積雪は130センチを超え、会場の外は雪が降りしきっていた。

 寒さが人の熱気で緩んだ頃、イベントは始まる。座敷をステージに見立て、土間が客席だ。東京、仙台市、秋田市、湯沢市と異なる地域に住む7人の男女が登壇し、この街で実現したい夢を銘々語りだした。

 「湯沢に移住して、動物と人間が共生できる仕組みを作りたい」。東京都在住で、母親が秋田県出身という豊留侑莉佳さん(32)は、野生動物の保護活動の仕事をしようと米国の大学へ留学、日本のNPOで地方での事業創出の仕事をしてきた。

 「若者の声を市政に反映していきたい」。湯沢駅前で飲食店を営む高橋大輔さん(32)は、首都圏での大学進学や就職を経て湯沢に戻ったUターン組だ。この街に少しでも若者が戻ってくるようにと飲食店の開業をはじめとしたさまざまな活動を続け、昨年、若者の声をさらに街に届けるため、市議会議員に立候補し、当選した。

 このプレゼンは、必ずしも起業家を目指すためのものではない。ビジネスコンテストでもない。湯沢市の地元の人と外からやってきた人が混ざり合い、考えをぶつけ合い、湯沢という街に新しい産業や文化、交流を生み出そうを生み出そうとする試みだ。イベントは湯沢市や一般社団法人MAKOTOが昨年11月から毎月開催し、今回で4回目。にもかかわらず、開催日には東京や埼玉から多くの人々が視察に訪れる。「湯沢のこの空間は、たった4ヶ月で日本中から注目される場所になっている。こんな場所は、他にはありませんよ」。会場の進行役で、世界銀行で知識経営上級担当官も務めたこともある企業・組織内変革の専門家・荻原直紀さんが、そう驚く。

老舗味噌醤油店の座敷がステージ、土間が客席だ
賞状が並び歴史を感じさせる店内で、参加者たちは話に聞き入っていた

「危機感」が湯沢の若者を駆り立てた

 人口減少と少子高齢化が止まらず、「消滅可能性都市」にも指定された湯沢市。地元の若者には、この街の将来への強い危機感が共有されている。一方でその危機感こそが、若者たちの新しい挑戦を促している。「生物は、死滅する時に進化する。都市も同じだ」。そう語るのは、会場となった「ヤマモ味噌醤油醸造元」の七代目、高橋泰さん(38)だ。

 高橋さんは昨年、人口流出が止まらない湯沢のまちづくりへのヒントを得ようと、世界中を旅した。デトロイトやベルリンなど、崩壊の危機にあったにもかかわらず再生した都市を視察したのち、湯沢に必要なのは地域内外の人々が湯沢の将来について意見を自由に交換し合える場所、「プラットフォーム」だと確信した。「個人同士が互いに磨き合い、主体的に学び動く場をつくることで、湯沢の人々の醸成を図りたい」。高橋さんはこの構想を、「発酵都市」と呼ぶ。

思いを発表する「ヤマモ味噌醤油醸造元」の七代目、高橋泰さん

 湯沢市の変化には、伏線がある。それは、総務省から湯沢市に副市長として派遣され、昨年3月まで2年間副市長を務めた藤井延之さんの取組みだ。「東大出身でアメリカ留学も経験したエリート官僚が来た」。そう思われた藤井さんだが、着任するとすぐに、街の若者たちと交流を始めた。地元のヒップホップイベントを主催する若者と一緒にイベントのPRソングをラップで歌ったり、鹿児島県長島町の若者らとラップで「対決」したり、高校生らとともに動画を制作したり……。地元の若者たちと仲間のように接しながら、まちに次々と新しい挑戦を仕掛けていった。

 現在は総務省に戻った藤井元副市長が湯沢市にもたらしたものは、地元の若者の言葉を借りると「閉ざされていた」という湯沢市の扉を開けて、外との交流を始め、若者たちに「自分たちは何かを変えられる」という自信を植え付けたことではないだろうか。それが、この「湯沢プラットフォーム」に繋がっている。

グラフィックファシリテーターがその場で議論を整理する

「危機感と希望のバランス」で生まれた湯沢プラットフォーム

 人々を「醸成」する場をつくりたいという高橋泰さんらの「湯沢プラットフォーム」に影響されて、さっそく行動に移す人々も現れている。秋田市から来た松山美幸さんは、周りの若い女性たちに「もっと自分のやりたいことをやってもいいんだよ」と背中を押す活動を始めた。松山さんは、「高橋泰さんの言葉や活動に勇気づけられた」と語る。

 湯沢市の若者を駆り立てているのは「危機感」であることは間違いない。「危機感と希望のバランスが大切だ」と高橋泰さんは強調する。絶望が強すぎればそれは諦めに変わり、希望が強すぎれば、誰も行動に移さない。

 湯沢市に生まれた新しい場「湯沢プラットフォーム」で、生まれたアイデアや人がどうなっていくのか、地元の人と外部の人が交わった新しい街ができるのか、多くの人がその行く末を見守っている。

 次回以降の予定は湯沢起業家通信のFacebookページにアップされる。https://www.facebook.com/yuzawa0201/

この日の湯沢市は気温マイナス1.7度で、雪が背丈より積もっていた
会場となったヤマモ味噌醤油醸造元の外観

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