震災を乗り越え、再生を続ける「蒲生干潟」のいま。小学生が生き物観察会

柳沼和宏】国の鳥獣保護区特別保護地区に指定され、渡り鳥や豊かな自然が観察できる仙台市宮城野区の蒲生干潟。そんな「自然と生命の宝庫」は東日本大震災の大きな被害を乗り越え、再生を続けている。蒲生干潟に集まる生き物や自然について調べる小学生たちの観察会を取材し、その今を追った。

40年以上蒲生干潟を観察してきたスペシャリストが案内

今年6月、蒲生干潟で開かれた観察会。仙台市立鶴巻小学校の4年生40人と、引率の教員4人が午前10時、干潟近くの駐車場に集合した。講師を担当した熊谷佳二さんは、1970年4月23日に結成された「蒲生を守る会」のメンバーであり、生物教育・自然観察・干潟研究に携わるキャリアは40年以上という環境教育のスペシャリストだ。

はじめに講師の熊谷さんから開会の挨拶や開催趣旨についての話があったのち、主催者の高砂市民センターの皆さんをはじめ、中野ふるさとYAMA学校、宮城野区中央市民センター、せんだい3.11メモリアル交流館の各サポーターからも挨拶があり、観察会がスタートした。

蒲生干潟ってどんなところ?

仙台湾に面した海沿いにある蒲生干潟は、七北田川河口から北に向かって広がる入り江にできた干潟。北は仙台港、南に南蒲生浄化センターがあり、淡水と太平洋の海水が混じりあう複雑な環境に適応した動植物が数多く生息している。干潟の手前には、蒲生海岸のランドマークで標高3mという日本で最も低い山である日和山ほか、砂浜、潟湖、塩性湿地、クロマツ海岸林といった“地域資源”が集積している。

同小学校ではこの観察会に先立って事前学習会を行い、蒲生干潟で観察できるカニや貝、鳥など様々な生き物について学んでいた。児童の皆さんは熱心に耳をかたむけ、たくさんの質問が出るなど、この日を楽しみにしていたようだ。

画像提供:熊谷佳二さん

標高3000 “ミリメートル” の日和山から見える景色とは

観察会で最初にチャレンジしたのは「日本一低い山」である日和山の登山。日和山は明治42年に地元の方々を中心に築山された人工の山で、海の状態を観察(日和見:ひよりみ)することに由来している。当時は主な産業の一つが漁業であったことから、漁師が海上からの目印として確認できるよう築かれたとも言われている。

登山口では「クマ出没注意!」と注意喚起の看板があり、14段という登山道の中間地点には落石注意の看板も!と思いきや…… 登山開始から180秒で全員が日和山を制覇!

干潟に棲む色んな生きものを知る・学ぶ・楽しむ

児童たちは日和山から干潟へ降り、砂地・草原・泥地など場所毎に異なる種類のカニがいることを熊谷さんに教えてもらった。長靴を履いて干潟の中へ入ったり、砂の下をスコップで掘ってみたり、生き物探しにみんな夢中だ。

「大きいカニ、捕まえたよ~!」「シジミゲット!」 「カニや海の生き物にも良い環境を作んないとねー!」。海水に浸っても生きていけるハママツナの葉をかじり、「塩味なのはなぜ?」と、干潟の“秘密”を味わう児童も。

最初はおっかなびっくりしながらも、さまざまな“声”を発する子どもたち。動植物の観察を通じ、すぐさま環境に適応する姿が印象的だった。実証と検証を繰り返す子どもたちのたくましい想像力には、眼前に広がる太平洋のように、無限の可能性を感じることができた。

蒲生干潟のこと、「家族や友だちにも教えたい」

2時間という観察会も終盤となり、採集・観察グッズを配布。あらかじめ決められた班ごとに生物採集・集合し、採集・観察した生物の名前を記録用紙に記入した。

人, 子供, 少年, 若い が含まれている画像

自動的に生成された説明

最後に熊谷さんから、活動のまとめとQ&Aの時間を設けたのち、児童代表の2名が講師にお礼の言葉を述べ、蒲生干潟観察会を無事に終えることができた。

“かんさつ会に参加して、私たちはこのようなことをもっと勉強したり、家族や友だちにも教えたりしたいです。熊谷さん、今日は本当に私たちのために、がもうひがたのことを教えてくださりありがとうございます”

※誤字・脱字以外 原文のまま掲載しています

参加者全員で、後片付けをした後、捕獲した生き物を海に戻した。児童たちにとって、干潟や海に棲む動植物たちの感触、そして、探究した気持ちはきっと、忘れられない思い出になったことだろう。

楽しみながら、蒲生干潟の価値に気付く機会に

蒲生干潟観察会は、次世代を担う子供たちが身近な生き物や自然に親しみ、時に泥まみれになりながら五感で楽しむ場を提供するフィールドワークだ。今後たくさんの子供たちが来ることで、その保護者である大人にとっても、蒲生干潟を知り、その自然に触れるきっかけになるだろう。蒲生干潟を訪れることで、ここが良い学びの場であり、景観も含めて大切な場所であること。そして、干潟を守る価値に気付いてもらえれば幸甚だ。

この記事は、仙台市の宮城野区中央市民センターとコラボした市民記者養成講座「東北ニューススクールin宮城野」の受講生の制作した記事です。宮城野区を舞台に活動するさまざまな地域密着の市民活動を取材し、発信していきます。他の記事は下記の画像バナーからご覧ください。

*TOHOKU360で東北のニュースをフォローしよう
X(twitter)instagramfacebook

>TOHOKU360とは?

TOHOKU360とは?

TOHOKU360は、東北のいまをみんなで伝える住民参加型ニュースサイトです。東北6県各地に住む住民たちが自分の住む地域からニュースを発掘し、全国へ、世界へと発信します。

CTR IMG