自分の髪が、国宝修復に使われる!?「漆刷毛ヘアドネーション」に参加してみた

若栁誉美】長く伸ばした髪の毛を寄付をする「ヘアドネーション」が近年広く知られるようになってきた。有名なのは「医療用ウィッグ」を製作するための寄付。ヘアドネーションに賛同する美容室で髪を切った場合は美容室から一括して製作団体に送ってもらうことができ、自分で団体に送付することもできる。

記者は今回、医療用ウィッグの製作用途以外にも自分の髪の毛を寄付できるプロジェクトがあることを知った。それは「漆刷毛ヘアドネーション」。漆塗りを施す刷毛(はけ)を製作するための寄付で、全国の職人・愛好家の手元に届き、国宝の修復に使われることもあるという。活動が昨年執筆した記事にも関連のあるものだったので興味を持ち、参加してみた。

江戸時代からの伝統を守る道具の職人

今回記者が寄付したのは、東京の漆刷毛師・9代目泉清吉さん。江戸時代からの手法を現代に伝える職人の一人だ。

工房で髪の束を縛る泉さん(提供写真)

初代・泉清吉がこの漆刷毛の形状を考案したのは1656年。
仙台藩士だった初代の泉清吉は、明暦年間には八丁堀に住んでいたとのこと。

画像は泉さんのサイトより。初代泉清吉が仙台藩士だったことが記されている。

「刷毛(はけ)」と聞いて思い浮かぶのは、持ち手の先に毛がついていて液状のものを塗ることができる形状だが、初代・泉清吉が考案した漆刷毛はまるで鉛筆のように持ち手の部分まで毛が通っているのが特徴。毛が傷んできた場合には、その部分を切り落とし持ち手を切り落とすことで、また新しい刷毛として長く使用することができる。

昭和30年代頃までは、刷毛の製作に使われる人毛の種類に「赤毛」と「黒毛」という名称があったそうだ。赤毛は「数年間乾燥させて脂分を抜いた毛束」、黒毛は「それ以外の乾燥させていない毛束」。この「脂分を抜く」処理方法を、9代目の泉さんが考案し、現代人の髪の毛も漆刷毛制作に使えるようになった。

漆刷毛を作る工程は8段階にも及ぶ。漆刷毛の製作工程を説明するために、9代目の泉さんが各工程を命名した。

形を変えて後世に残って行く夢

記者の手元に「いずれ寄付しよう」と思って、送り先を決めていない毛束があり、「ヘアドネーション」でインターネット情報を検索。泉さんのwebサイトで「髪の毛の長さは、15cm以上あればよい」という記述を見つけた。さっそく泉さんに連絡を取り、郵送で送付させていただいた。

10日程度経ったころ、泉さんよりお礼のお手紙と感謝状が届いた。

自分の髪の毛が漆刷毛に生まれ変わり、国宝修復に使われる。名前や写真が残るわけではないし、そこに形は残らないけれど、ちょっとでもお役に立てているなら、それはとても嬉しい。

記者が実際に寄付した毛束。泉さんのサイトに掲載されている。

御子息の十代目 泉清吉(虎吉)さんへの技法継承も行いながら、現在も漆刷毛の製作を続ける、九代目。現在も髪の毛の寄付を募っているので、ご興味のある方は泉さんのサイトからお問い合わせをしていただきたい。

漆刷毛師 泉清吉(泉さんのwebサイト)

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