【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文】先日、仙台中心に活動しているピアニスト田辺正樹さんをリーダーとするカルテット(四重奏団)のライブに出かけました。ライブ会場は1968年創業の老舗ジャズバー「仙台カーボ」=仙台市青葉区一番町4丁目=です。筆者にとって田辺さん以外はお初のメンバーだし、メンバーの日ごろの活動拠点は仙台、東京、新潟に分かれているとのことでした。いわゆる共演経験の豊富なグループとはひと味異なる演奏を期待できるかもしれません。ジャズの聴き方は人によってさまざまですが、この日、ライブ会場で何を感じながら聴いたのか。振り返ります。
田辺正樹カルテットのメンバーのうち、田辺さんとベースの勝本宣男さんは仙台中心に活動しています。ドラムの山田祐輔さんは東京中心に活動中。アルトサックスは新潟から最近仙台に引っ越してきた菅原顕さんでした。
「このメンバーなら若い世代の興味深いジャズが聴けるかもしれない」と考えた事前の予想は当たりました。アフロリズムが快調な1曲目「Isn’t She Lovely」。『出会い頭のジャズ』とでも言いたくなるような、粗削りながら、スリリングなニュアンスがいかにも現代のジャズらしい内容でした。ドラムセットから1メートルほどの距離で聴いたこともあり、繊細さと歯切れの良さが繰り返しあらわれる打音は非常に強力。聴きごたえがありました。
サックスの菅原さんは2曲目「Boplicity」からの参加でした。最近はやりのキラキラ系とは対照的な枯れ色がたっぷり入った落ち着いた音色が印象的でした。全身をフルに使いながらハードに演奏する姿は、筆者世代がかつて通り過ぎてきたフリージャズにも近い印象でしたが、あれとも違う。言葉として聴いたことはないのですが、大ヒットした漫画(映画)「ブルージャイアント世代」が育っていると言ったら的外れですか?
漫画版「ブルージャイアント」が注目されていた当時、アルトサックス修行を始めたばかりだった筆者は主人公、宮本大のバイタリティには引き込まれながらも「漫画を見てもうまくはならない」と第3巻までで早々と離れました。漫画を見ないで何が分かるかと言われればその通りなのですが、上原ひろみさんらプロのミュージシャンが演奏収録した映画版は最後まで見通しました。
カーボは、4人が演奏位置に着くと、客席が10席ちょっと。決して広いとはいえないけれど、アルトサックスの炸裂ぶりと、リズム隊のやりとりがはっきり分かる濃密なライブ空間となっていました。演奏を重ねるに伴い、聴き手を物理的にも揺さぶるドライブ感が高まりました。
この日の前半の演奏では、サックスと田辺さんのバッキング(伴奏)が若干ずれたように感じる場面がありました。1拍まではずれないけれども、ピアノのバッキングの発音を少し遅らせる、いわゆる「レイドバック」に聞こえました。聞きようによっては、菅原さんが先に進みたいと思っているタイミングと、リーダーのバッキングがずれたと受け取られたと思います。どちらが悪いというものではありません。聴く側は、むしろライブだからこそ分かる楽しみと考えた方がいいでしょう。ライブ会場の配置もあり微妙ですが、サックスの菅原さんとのアイコンタクトで、微妙なずれ感は解消できたかもしれません。
▶ステージ前半の曲リスト
Isn’t She Lovely
Boplicity
Delfeayos Dilemmma
In Your Own Sweet Way
Square
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