台風15号上陸から一週間 千葉出身の記者が見た地元の今

関東地方で猛威をふるった台風15号の上陸から一週間以上が経過した。千葉県によると県内では18日16時時点でいまだ4万4300軒が停電、6913戸で断水が続き、多くの住民が厳しい生活を余儀なくされている。千葉県木更津市出身の記者が仙台から帰省し、地元の被害の現状を取材した。

地震のように家が揺れ続けた

「深夜からずっと地震が起きているかのように家が揺れ続け、ガラスがガタガタ鳴り続けていた。とにかくすごかった、こんなことは初めて」

母は帰ってきた私に、台風の夜のようすを伝えてくれた。実家の外を見て回ると、通っていた中学校の前に住宅のトタン屋根が飛んできて道を塞いでいる風景があり、上陸から時間が経過した今でもその猛威を感じることができた。

住宅から飛んできた屋根(9月16日木更津市内)

信号が点かない交差点、電線にもたれる大きな倒木

16日、馴染みの深い木更津、君津、袖ヶ浦のあたりを車で回った。木更津の中心部では店も再開して日常風景が戻っていたが、発災後3日間ほどはガソリンスタンドに長蛇の列ができたり、スーパーでお惣菜がなくなったりしていたという。

車でこの3市の広域を見て回ると、全体的にビニールハウスはその多くが骨組みだけになっており、住宅には壊れた屋根を応急措置的にしのぐブルーシートが目立つ。停電地域は同じ市内でもまばらに存在しており、道を進んでいると突然信号が点いていない停電地域に出くわす。停電地域では他地域の電力会社の姿もあり、雨の中電線の復旧作業にあたっていた。ぽっきりと真っ二つに折れてしまっている電信柱や、割れたり倒れたりしたカーブミラーもあった。

瓦屋根だけでなく比較的新しい家の屋根にも損壊を応急措置するブルーシートが
未だ信号が点かない交差点
電線の復旧作業にあたる中部電力の車両

内陸部では目を疑うほど倒木が激しい。ゴルフ場の多い地域なのだが、袖ヶ浦市のゴルフ場では多くの木が倒れた上未だ停電が続いて営業再開が見込めず、業者や従業員が場内の片付けに追われていた。木更津市矢那の山道ではかなり大きな木がいくつも、根こそぎ倒されていた。複数の箇所で電線に大きな倒木が引っかかっており、電線が切れてしまいそうな危険な状態になっている。

大きな木がたくさんなぎ倒されていた(9月17日木更津市矢那)
山道では多くの箇所で倒木が電線に引っかかっている(9月17日木更津市矢那)

ブルーシートが家々を覆う鋸南町

17日、さらに南下し、富津市や鋸南町方面へ向かった。東京湾沿いで、漁港直送の新鮮な海産物や鋸山などの観光地が楽しめる海も山も美しいエリアだが、目にしたのは予想以上の被害だった。屋根が吹き飛ばされた家やコンビニ、粉々に砕けたガラス窓。住民たちは家の片付けに追われ、家々の前には瓦礫やゴミが積み上がっていた。

鋸南町勝山。屋根を覆うブルーシートが街中の家に見られる(9月17日)
壊滅的な被害を受けた養殖施設・勝山漁協活魚センター(9月17日)
吹き飛ばされたビニールハウス(9月17日)

鋸南町役場では、個人から届いたという支援物資を町職員らが町民に支給しており、多くの住民が受け取りに来ていた。町職員の重田正行さんも自宅が浸水の被害を受けながら、避難所や役場で災害対応にかかりきりになっている。「住民の方がtwitterで拡散してくれたおかげか町に支援物資が届き、ここでお配りしています。最寄りのコンビニも被災して営業しておらず、ここに来れば何か揃う、とみなさん来られています」。17日時点ではブルーシートや土嚢は国や県の支援で足りてきており、これからは住民の生活再建に必要な保存食や衛生用品が必要となるとのことだった。

鋸南町役場の敷地内に支援物資が並んでいた(9月17日)

勝山港へ続く勝山港通り商店街を歩き、商店を営む青木静子さんに話を聞いた。「一週間経ったでしょう、やっと片付けも落ち着いてきたけど腕が痛くなってきて」。そのうち、近所に住む女性たちが周りに集まってきた。「雨漏りに気づいて屋根にビニールシートを張りたいけど、信頼できる大工さんの手が空いてなくて」「近所の人が自分でやったら落下して搬送されたらしい」「テレビで詐欺業者がいるとか素人がやっちゃいけないって報道を見るでしょ、でもどうしたら…」。翌日の天気予報は雨。自衛隊も屋根へのブルーシート張りの支援を始めたが、今すぐにも必要な家の修繕をどうしたらいいのか、困惑する声があった。

青木さんの家では二階のベランダの屋根が吹き飛ばされ落下した
屋根が吹き飛ばされた家(9月17日)
ブロック塀やタンクが倒壊し、窓ガラスが割れた家(9月17日)
ブルーシートの数は足りてきているものの「誰が施工するのか?」が課題(9月17日)

「心の疲れが出てくるのはこれから」

自宅の前を歩いていた鈴木玲子さんは「直後は食べ物がどこにもなくて。5日間停電していてお風呂も入れず、テレビも見られなかった。まさか自分が被災者になるなんて。大変な思いをしたけど、今まで気を張っていたから、心の疲れが出てくるのはこれからでしょうね」と話したあと、目頭を押さえた。

住民は家の片付けに追われ、各家の前には瓦礫やゴミが積まれていた
鋸南町勝山で炊き出しをする東京の支援団体の姿も(9月17日)

今できること

千葉県のまとめによると、18日16時時点で千葉県では未だ4万4300軒が停電しており、6913戸で断水が続く。停電の復旧は一部地域で最大で27日までかかる見込みで、いまだ多くの人々が厳しい生活を余儀なくされている。被災地の外から今できる支援をまとめた。

ボランティア

千葉県では各自治体の社協が窓口となり、ボランティアを募集している。県外からのボランティアを受け入れている市町もあれば、市内在住者や特定分野の専門家のみ募集している市町もある。ニーズも日々変わるため、以下の千葉県ボランティア特設サイトで最新の情報を確認してから現地に向かうことが必要だ。

千葉災害ボランティア情報[特設サイト]】https://chiba.shienp.net/

観光

停電や片付けで休園している施設があるが、順次営業は再開されている。以下のページで千葉県内の観光施設の最新の状況が更新されているので、再開した施設にはぜひ自粛せず観光に訪れてほしい。

【千葉県へ観光を検討中の皆様へ-台風15号の影響について】http://maruchiba.jp/event/event0725.html

寄付

「ふるさとチョイス」ではふるさと納税で直接台風15号の被災自治体に寄付することができる。日本赤十字社は今日から12月30日まで義援金を受け付けている。

【ふるさとチョイス災害支援「令和元年台風15号」】
https://www.furusato-tax.jp/saigai/filter?category_id[]=1098

【日本赤十字「令和元年台風第15号千葉県災害義援金」】http://www.jrc.or.jp/contribution/190917_005873.html