【平塚千絵=仙台市】仙台市青葉区八幡町の八幡商店街を通る旧国道48号線沿いに「曲線」と書かれた小さな看板があります。
看板にしたがい、人や車で賑わう国道から石畳の道を住宅地に入っていくと、一軒の古民家風の建物に突き当たります。かつてこの場所は民家からアウトドアショップになり、現在は個人経営の本屋「曲線」が店を構えています。
ドアを開けて中に入ると、落ち着いた照明で柔らかなBGMが流れる空間の中、数種類の本が平置きされた机が目に入ります。壁沿いには本棚が置かれ、本はもちろんのこと販売用のCDも置かれています。さらに窓際には小あがりがあり、児童書や写真集が置かれています。奥にはカウンター式のカフェスペースがあり、まるで店全体が一軒家のような雰囲気です。
そこではカフェでコーヒーを飲みながら、購入した本を手にくつろぐ中年女性、小あがりで幼児と一緒に絵本を見る親子連れ、本を購入後、「また来ます」と笑顔で口にして去っていった男性、おしゃべりしながらもじっくりと本を選ぶ3人の年配女性のグループ、「これいいね」などと話しながら本を手に取る大学生くらいの女性2人組など、幅広い年齢層の人たちが、それぞれに、並んでいる本や、本のある空間を楽しんでいる様子がうかがえます。
「曲線」では、主に詩や短歌、文芸、哲学、写真集、児童書といったジャンルの本を販売しています。その全てが、店主の菅原匠子さんの選書によるもの。詩人・北園克衛の詩集や、写真家一之瀬ちひろによる作品集『きみのせかいをつつむひかり(あるいは国家)について』など、店主の感性によって選ばれた本が並びます。また、一カ月に一度のペースで本と親和性の高いアーティストや作家、編集者を呼んでのイベントを行うのも店の特徴の一つです。「店を知ってもらい、来店のきっかけになってほしい」という思いからでした。お客さんの中には、イベントがきっかけで定期的に来店するようになった人も少なくないそうです。
開店したのは2019年9月のことでした。長年にわたり、本に関わる仕事をしてきた菅原さん。「いずれは独立し、自分で本屋を持ちたい」と物件探しをしている時に紹介され、気に入ったのが現在の店舗がある、八幡町の古民家でした。「開店にあたり、八幡町商店街の人たちが温かく迎え入れてくれて…八幡町で店を開けて良かったです」と笑顔で話します。今でも時々、商店会のメンバーが店の様子を気にかけ、訪ねてきてくれるといいます。
「八幡町の好きなところは、大崎八幡宮で様々な催しが行われるなど、仙台駅前や一番町のような中心部とはまた違った、八幡町ならではの独自の盛り上がりがあるところと、人の温かさ」と言います。
「店をやってこられたのは周りの人たちの支えや応援のおかげなので、感謝の気持ちをひしひしと感じます。これからは店の売りでもある本棚の質を高め、足を運んでくれたお客さんに楽しんでもらえるような本屋を作っていきたいです。ぜひ、お立ち寄りください」と今後に思いを馳せます。
【曲線】仙台市青葉区八幡2-3-30
Twitter・Instagram @kyokusen_8
(HP準備中)
この記事はTOHOKU360とYotsuya Canalが今年2月に開いた「東北ニューススクール in 八幡町」の受講生の記事です。受講生たちが独自の視点から、歴史と伝統が根付く「八幡町」の魅力やユニークな人、活動を掘り下げて取材・執筆していきます。ご期待下さい!