東日本大震災と広島土砂災害で見えた「同行避難」の課題|震災とペット(中)

【インタビュー「震災とペット」】仙台で飼い主のいない猫の問題や地域猫の取り組みを追い続けている鈴村加菜記者が広島県広島市を訪れ、「NPO法人犬猫みなしご救援隊」の活動を取材。代表の中谷百里さんへのインタビューを3回に分けて紹介し、災害発生時や地域の中でのペットとの向き合い方を考えます。

地震、大雨など全国で大規模な災害が続き、防災意識は人だけでなくペットにも向き始めている。環境省が2018年に策定した「人とペットの災害対策ガイドライン」は、東日本大震災をきっかけに認識が広がったペットの「同行避難」について、その後の災害で新たに発生した課題を受けて改定されたものだという。 2011年の東日本大震災や2014年の広島市の土砂災害で、ペットの避難を巡って現場ではどんな問題が起きたのか、当時被災地で保護や支援を行った「NPO法人みなしご救援隊」代表・中谷百里さんに聞いた。

災害時の「同行避難」をめぐる問題

東日本大震災当時は、ペットの「同行避難」の認識が飼い主にも行政にも広まっていなかった。中谷さんたちが避難所を回り、「犬猫でお困りの方はお声がけください」と声をかけたところ、「ペットでお困りの方からは、「一緒に避難したけど、この子(ペット)が普段使っている薬がない」「ペットを連れて避難所に入るのを断られたので預かって欲しい」といった相談が多く寄せられたという。「犬猫だけではなく、フェレット、亀…その時はまあとにかくなんでも預かりました。避難所には動物嫌いの人もいますから」と中谷さんは振り返る。

東日本大震災から約2年半後、広島では大規模な土砂災害が発生。「同行避難」という言葉だけが広がった結果、避難所ではペットの受け入れが断られることはなかった。しかし、避難させようと思ってもペットがケージに入ってくれない、避難所では飼い主がペットを優先しすぎたことによる周りの避難者とのトラブルなど、飼い主のしつけやマナー不足による問題が発生した。

普段からケージトレーニングの徹底を

中谷さんは「同行避難させない行政が悪いのではなく、同行避難させてもらってもしつけがきちんとできていない飼い主が問題」と話す。

 みなしご救援隊の拠点で暮らす犬たちは、すべてケージトレーニング済みだ。「うちの犬たちはおやつが貰えるとわかっているから、ケージを用意すればみんなすぐに入っていきますよ。最初は無理矢理にでもケージに入れて、慣れさせる。いざという時のために飼い主が責任を持ってレッスンするのが大事です」(つづく)

ケージに入る犬(本文内の活動や団体とは関係ありません)