コロナ禍で困窮する外国人労働者のいま 支援団体・POSSE仙台支部に聞いた

【邱文心】厚生労働省によると日本で働く外国人労働者は2020年10月の時点で172万人で、届け出が義務化された2007年以降過去最高になりました。一方で外国人もコロナ禍で仕事やアルバイトを失い、貧困に陥るケースが多発しています。
労働・貧困問題に取り組むNPO法人POSSEは、若者や学生ボランティアが中心となって外国人労働者を支援しています。外国人労働者を取り巻く現状について、仙台支部の代表・森進生さん(左)と学生ボランティア・小泉尚也さん(右)に台湾出身の邱文心通信員がお話を伺いました。

コロナで収入が減少した外国人からの相談が増加

邱文心

普段の活動では具体的にどんな支援をしているのでしょうか?

外国人労働者の労働相談を受け付けています。労働トラブルに困っている方から話を聞いてアドバイスをし、場合によっては会社に直接一緒に行って、労働環境を改善するよう求めます。

仕事に関係なく、生活に困っている人への生活相談も行っています。外国人が使える福祉制度は少なく、その中で使える福祉の使い方を教えたり、一緒に行政の窓口に行って手続きしたりして、少しでも生活が安定するように支援しています。

森進生さん
邱文心

新型コロナウイルスによる外国人の相談内容の変化について教えて下さい。

以前の相談内容の多くは、外国人の技能実習生や労働者に対する残業代の未払い、パワハラなどについてでしたが、去年から新型コロナウイルスの影響で、収入が減った留学生から相談を受けることも増えてきました。アルバイトの解雇やシフトの削減、母国のロックダウンや実家の失業で仕送りが受け取ることができないなどで、生活費を得ることが難しくなりました。

森進生さん
邱文心

外国人が使える、使えない福祉制度は何でしょうか?

外国人が使える制度は「住居確保給付金」、「生活福祉資金貸付制度」です。実は日本人にもあまりこのような福祉制度の存在は知られていません。ただ、福祉制度はまだまだ改善すべきだと思います。例えば、就労ビザや留学ビザなど永久在留資格を持っていない外国人は、生活保護制度の対象になりません。そのため、コロナ禍に大きな被害を受けた留学生や技能実習生を支える仕組みが少ない現状があります。

森進生さん

外国人が生きるために最低限必要な制度を

「NPO法人POSSE仙台支部」の外国人支援チームが2020年に受けた外国人からの相談は100件ほど。活動では相談支援だけではなく、行政への申し入れも行っています。最近の例として、宮城県社会福祉協議会が、永住権をもっていない外国人から生活福祉資金貸付制度における「総合支援資金特例貸付」の申し込みを拒否していました。「NPO法人POSSE仙台支部」「反貧困みやぎネットワーク」が申し入れを行った後、2020年8月から適用されるようになったそうです。

学生ボランティアの小泉尚也さんに、どんな思いで支援を続けてきたかお話を伺いました。

邱文心

ボランティア活動をして一番勉強になったことは何でしょうか?

恥ずかしいのですが、自分が住んでいる街に外国人がたくさんいることを知りませんでした。例えば、コンビニ弁当を作っている工場では、多くの技能実習生や留学生が働いています。一方、その人たちが生きるために最低限必要な制度が日本になく、どれだけ真面目に働いても「生存」が保障されない現状も知りました。ここを私たちは変えようとしています。

小泉尚也さん
邱文心

外国人に伝える際にはどういう工夫が必要ですか?

外国人労働者はさまざまな国から来ていますので、できれば「やさしい日本語」で伝えます。チラシやアンケートを配る際も、ひらがなやわかりやすい単語の組み合わせを使用するよう心掛けています。

小泉尚也さん
邱文心

相談支援以外ではどういう活動をしていますか?

ボランティアで一番できることは相談支援です。次に、問題を解決するために必要な情報を伝え、手続きをお手伝いします。相談しに来る人以外のアウトリーチも行います。相談に来ていない困っている人たちに呼びかける活動もします。そして活動によって、人権侵害、在留資格など、新たな課題も見えてきます。

小泉尚也さん
邱文心

活動を続ける思いを教えて下さい。

「外国人だから」という理由で尊重されない現状をなくしたいです。企業が自身の都合に合わせて外国人を「使い捨てる」ことがありますし、社会保障は不十分なまま放置されています。しかし、同じ人間として、対等に扱われるべきだと思います。日本人でもなかなか積極的に自分の権利を守る人は少ないかもしれませんが、私は前向きに進めていきたいと考えています。外国人とより一層つながれば、日本人も豊かになるかなと思います。

小泉尚也さん

NPO法人POSSE仙台支部ボランティア募集中

学生や若者社会人を中心して活動しているNPO法人POSSE仙台支部では現在、ボランティアを募集しています。日本人、外国人問わず労働や生活面の相談に乗る活動です。必要な知識は勉強会やミーティングを通して身につくので、初めてのボランティアでも、外国語を話せなくても参加できるそうです。「社会問題に取り組みたい人を歓迎します」とのことです。連絡先は以下。

メール:sendai★npoposse.jp ※★を@に変えて下さい
電話:022-302-3349
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