甲子園準優勝の元仙台育英主将・佐々木柊野さんの悩み

仙台出身の野球パキスタン代表監督・色川冬馬さん(26)が若者の悩みに答えるボッドキャスト番組「若者よ、悩みを語れ!」。今回のゲストは、2015年夏の甲子園でチームを準優勝に導いた仙台育英の元主将、佐々木柊野さん(18)。2人は昨年、宮城県高野連が開催した高校野球部向けの「リーダー研修会」に招待されたことで出会い、熱い志を持つ野球仲間として交流してきたといいます。甲子園準優勝の際には「野球を辞める」という発言でも話題になった佐々木さん。現在専門学校に通う「普通の18歳」として抱えている悩みとは?

「夢に一直線に向かっているのか?」という葛藤

色川「番組が『若者よ悩みを語れ、』ということで。(甲子園)当時燃えに燃えた柊野君が、今どんな生活をしているのか、そしてどんな思いで今を生きているのかを聞きたいと思います。事前にアンケートを取っておりまして、その中で気になったキーワードがあったんですが、『夢に一直線に向かっているのか?』という葛藤を抱えていると。これはどういうことですか?」

佐々木「高校時代は甲子園に出たい、甲子園で優勝したいという目標があったので、色んな誘惑があっても夢に向かって全力でやっていけたんですけど。今は明確な目標がすぐ目の前にあるわけでもないし、時間も作れる分、バイトや遊びなど色んな誘惑に負けちゃってる自分がいるなと、最近思っています」

色川「より人間らしいというか、今までテレビで見ていただけの柊野君というよりは・・・」

佐々木「普通の19歳って感じですね(笑)」(編集部注※収録時点ではまだ18歳)

仙台市で対談した、色川冬馬さん(左)と佐々木柊野さん(右)

「真面目なイメージにギャップ」?

色川「柊野君もテレビに出て色んな経験や思いを語って、それに感動した人もいると思うんですけど、今柊野君自身が感じているのは、現実はそんなに甘くない、簡単じゃないってところ。」

佐々木「そうですね。テレビを見てくださった人は佐々木君は真面目だな、頑張ってるなって思っている人がほとんどだと思うんですけど、自分のことを客観的に見ても、そんなに真面目にすごい頑張ってるわけではないので、そこらへんのギャップもあると思うし・・・」

色川「頑張ってないわけではないですよ、語弊があるといけないので(笑)。でも、僕自身もその気持ちが分かるところがあって。僕の場合は高校では目立たなかったけどとにかく野球が好きで、メジャーリーガーになるって言って海外へ行ったんですけど、それでも柊野君の言うように『本当に夢に向かって一直線にやれているのか?』と悩むことがありました。なかなか簡単でないし、バイトしてお金を稼いでも、夢のために投資されているのかというと難しいし・・・」

佐々木「違うところに使っちゃったりとか。」

色川「柊野君も今、カラオケやボーリングとか、みんなで集まっていろんな遊びができる世代。自分の時間をどう使っていこう?という葛藤はあると思うんですが」

佐々木「勉強しなきゃな、やることやらなきゃな、って思っても友達と会ったり、疲れたと思ったりしているときに誘惑に負けてしまうので、自分に厳しくやっていかなきゃいけないなって・・・思うんですけど、それでもやっぱり遊んじゃったり。」

色川「いい話が聞けていると思います。なかなか心で思っていても人に言えないことってありますが、逆に公共の電波でこうやって勇気を持って発言してくれることが、必ず誰かを救うと思うんですよ。同じ世代は同じような葛藤を抱えてるはずですし。僕たちが見たことない世界を見た、仙台育英というブランド高校で結果を残してきた男が、みんなと同じ人間で、同じ悩みを抱えているんだよ、ということを話すことで、救われる人が間違いなくいると思うんですよね」

「野球辞めます」と断言、でも野球がしたかった

色川「高校を卒業してからはどんな生活をしているんですか?」

佐々木「専門学校に通っています。野球部もあるので、硬式野球も続けながら、勉強もしながらって生活を送ってます」

色川「野球はまだやりたいですよね。まだ体動くしね」

佐々木「去年は辞めますって断言したんですけど、いざ辞めるってなると、チームが強い弱いにかからわらず、体を動かしたい、野球をしたい、っていう気持ちは生まれてきちゃったので。結果続けることにはなってます」

色川「どんな形であれ、今のうちから色んな壁にぶつかっていくのが新たな経験値になります。今までの経験も、柊野君しか知らないこと。実は昨年の準優勝の瞬間、知らなかったんですよ、イランにいたので。でも、柊野君の名前は知ってたんですよ。消防士になるっていう発言も、インターネットで見ていて。イランの距離まで届くくらいの、それだけのことをしたんですよ」

佐々木「そこまで届いていたとは(笑)びっくりですね」

色川「まだ18歳。これからがんがん攻めて、色んなことに挑戦して。このラジオに出てくれたのも、挑戦だと思います。悩みってなかなか人に話せないですからね」

佐々木「はい。色んな取材をされてきましたけど、こういうこと(悩み)を話したのは初めてかもしれません」

「後悔しないよう、一直線に頑張る」

色川「何か伝えたいメッセージがあれば、ぜひ。」

佐々木「野球だけではなく、色んなことを目指している人がいると思うんですが、僕が甲子園を目指していたころを思い出してみると、一直線に頑張っていたと思う。周りの仲間と協力しながら頑張ったのがいい結果になったので、僕と同世代の人でも誘惑に負けたり、自分がやりたいことができてなかったりする人がいると思うんですけど、僕自身もそうなんですけど、そう思っている人たちは自分で自分のことを見つめ直して、後で後悔しないように今のうちにしっかり頑張っておかなきゃいけないんじゃないかな、と思います」

色川「よくも悪くも、日本の野球環境って整っていますよね。そこから一歩出ると、あれ?こんなことができないの?ってなる。仲間がいる幸せとか、環境が整っている幸せとか、今の中学生高校生にはもっと噛み締めてほしいですよね」

佐々木「そうですね。高校まではクラスも野球部だけのクラスで、寮にも入っていたので24時間常に野球部のヤツといる感覚だったんですけど。卒業したら、みんな県外に行ってしまうし。部活時代の友達やチームメイトは高校時代くらいまでしか大切にできないなって思うので、小学生、中学生、高校生は友達を大事にしてほしいなって。」

色川「専門学校では、友達なんだけど、それぞれがそれぞれの目標を持っているから・・・」

佐々木「そうなんですよね、最後は個人の力でいくわけなので。本当に、僕より下の年代の人には仲間を大事にしてほしいなって、自分の経験から思います」

色川「今後もぜひ、現状報告しに来て下さい。これからも引き続き、『佐々木柊野』としての挑戦をしていって下さい。みんな期待しているので頑張って下さい!」

佐々木「頑張ります!ありがとうございます」