【光森史孝=バリ・ウブド村】「お祀りの行列に、涙が出ました」-25年ぶりにバリ・ウブドを訪れ、ビラ・ビンタンに宿泊された日本の女性から、こんな感想を、聞かせてもらいました。彼女は、つい先日、宿泊中に、ブントゥユン村・サクティ村の人々が、こぞって隣りのクトゥ村のヒンズー寺院のオダラン=祭礼へ、行列を作って出かけるところに出くわしたのです。人々の男性は白の装束、女性は、色とりどりのクバヤ姿で、お供えやバロンを担ぎ、ガムランを打ち鳴らしながら、プチャラン=警護役の先導で、道路を粛々と進んでいきます。お年寄りも子どもたちも、手をひかれ、先払いをしてもらい、長い道のりも苦にせず、歩いていきます。
彼女は、ボンさんのバイクに乗せてもらって、祭礼のある、お寺まで、付いていき、寺院の周辺に店を出している屋台で、ゆでたトウモロコシを昼食代わりにしながら、人々を眺めて帰ってきたそうです。
そして、そこで強く感じたのは、村の人たちが、日ごろの暮らしの中で、しっかりと絆を結び合っている姿だったそうです。かつての日本でも、ムラ社会が生きているころは、一人一人が手をつなぎ合って生きているという実感があったのですよね、と話してくれました。
今回、彼女は一人旅で、少し寂しいかなと思いながらバリ・ウブドへやってきたそうですが、ボンさんをはじめとするスタッフたち、ビラ・ビンタンがあるブントゥユン村・サクティ村の人たちが気軽に声を掛けてくれ、また、いろんなところに案内してもらったそうです。オーガニックのベジタリアン食、マッサージ店など。そして、ビラ・ビンタンやビンタン・ダイニングでは、同宿の日本の人たちとも話が弾み、心地よい数日でした、と帰国されました。
先日、バリは世界一の観光地、という情報を、この通信で流しました。景観の良い場所、遊び場所の多いところ、美味しい食事が出来る店が多いところなど、世界各地に人が集まる場所は多くあると思います。その中で、バリの価値を高めているのは、何だろうと考える時、やっぱり、景色だけ、遊び場だけでなく、パック旅行では味わえないことに触れることが出来るところだから、と思い至ります。冠婚葬祭はもちろん、農作業、伝統芸能・芸術の継承など、あらゆる時、場を共有して絆を強めている人々の暮らしに触れ、その中に、自分たちも溶け込むことが出来る場があるという、旅のよさ。今一度、私たちも、バリ・ウブドの良さを、見つめ直してみたいと思っています。