【カンヌ国際映画祭の現場から】高齢者の安楽死をテーマに 早川千絵監督の「プラン75」

カンヌ国際映画祭の現場から】世界の主要映画祭の現場を取材し、TOHOKU360にも各国の映画祭のリポートを寄せてくれている映画評論家・字幕翻訳家の齋藤敦子さんの連載。コロナ禍の影響で3年ぶりの訪問となったフランス・カンヌ国際映画祭の現場から、現地の熱気や今年の作品評をお伝えします。

斎藤敦子(映画評論家・字幕翻訳家)】今年のカンヌに出品された日本映画は、コンペティション部門の是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』、ある視点部門の早川千絵監督『プラン75』、ACID部門の山崎樹一郎監督の『やまぶき』、カンヌ・クラシック部門の河瀬直美監督『東京2020 SIDE:A』の4本です。

トップを切って20日に上映された早川千絵の長編デビュー作『プラン75』は、75歳以上の高齢者が自主的に安楽死を選べる制度“プラン75”が施行された近未来の日本を舞台にした、いわゆるディストピア映画。主人公は78歳のミチ(倍賞千恵子)。夫と死別し、団地で一人暮らしをしている彼女は、ホテルの客室掃除の仕事をしていましたが、仲間が仕事中に倒れたことから他の高齢者と共に一斉に解雇されてしまいます。そのうえ、団地も取り壊されることになって住まいを失い、行き場のなくなった彼女はついにプラン75に登録してしまいます。

ある視点部門での上映前に挨拶する早川千絵監督(左から2人目)

一方、老人介護の仕事をしていたフィリピン人のマリア(ステファニー・アリアン)は、娘の手術費を稼ぐために、給料のいいプラン75のスタッフとして働くことになります。また、プラン75の申請窓口で働くヒロム(磯村勇斗)は、長い間音信不通だった叔父に再会したことから、仕事に疑問を持つようになります。ミチとマリアとヒロム、三者三様の思いが最後に向かうところは…?

早川千絵監督には、2014年に短編『ナイアガラ』がシネフォンダシオン部門に選出されたときにカンヌで会っていました。『ナイアガラ』がまさにそうでしたが、ニューヨークの美術大学で写真を学んだ早川監督には固有のビジュアル表現が備わっていて、今回もその美的感覚が有効に働いていました。テーマが衝撃的で、大いに議論を呼ぶ内容ですが、映画作品としても、ひとつひとつの場面がきっちりとした目的を持って丁寧に演出されているところが素晴らしく、新人離れした新人だと思います。

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