日本中で猛威を振るった台風19号。東北の各地にも様々な影響を与えている。宮城県の色麻町(しかまちょう)では、ライフラインへの影響は少なかったものの、農作物への被害が目立っているという。色麻で食用の牛を飼育している牛農家、橋本拓未さんに台風の影響についてうかがった。
側溝の水が流れ込み、一時は牛舎内が川のように
色麻町では、12日の夜に台風が最接近した。船形山から続く尾根筋が平野と交わる中山間地域に住む牛農家、橋本拓未さんは「これまでにないような雨だった」と、今回の台風の猛烈な雨について振り返る。橋本さんのお宅では、夜中の1時に家の側の側溝がつまって水が溢れ、家に隣接した牛舎に流入。一時は牛舎内が川のようになったという。牛たちを避難させ、側溝のつまりを除去し、その日は寝ないで牛舎の復旧に当たった。翌日のお昼には作業を完了し、なんとか台風をやり過ごした。現在は水も引き、牛たちにも被害がなかったという。
田んぼの稲わらが流出。今後、飼料用の稲わらが高騰の可能性も
幸いにも、ライフラインへの影響が少なく、人的被害もなかったという色麻町。しかし、町を見回すと、浸水による品質低下や廃棄など、農作物への被害が目立っているという。
今後の農業への影響も心配される。牛農家である橋本さんは、飼料用の稲わらの今後の価格高騰について指摘する。色麻町では、稲を刈った後の田んぼに水が流れ込み、稲わらが民家や道路に流出。現在、町でそれらを回収して牧場に一時保管しているが、その後の処理の見込みが立っていないという。宮城県内の他の地域でも同じような状況があるとのことで、県内からの稲わらの確保が難しくなり、今後飼料用の稲わらが高騰する可能性がある。
また、斜面崩落した農地の復旧は個人負担になる可能性もあるという。河川や用水路へのダメージによる来期の農業用水の確保困難も心配される。土地や河川へのダメージが、今後の農業へ影響していきそうだ。