【写真連載企画:東北異景】自然の摂理は時として思いもよらない景観を生み出す。一方で、人間という社会的動物は欲望のままに巨大な建築物や異様な光景を作り出してきた。あらためて注意深く見回すと、我々の周囲には奇妙で不可思議な風景、違和感を覚える「異景」が数多く潜んでいる。東北の写真家・佐瀬雅行さんが、東北各地に存在する「異景」を探す旅に出かける。
【写真・文/佐瀬雅行(写真家)】「杜の都」仙台のシンボル、広瀬川は中心市街地の西側から南を縁取るように蛇行を繰り返し、いくつもの橋が異なる景観を作り上げている。緑豊かな河畔には陽光をいっぱい浴びて遊ぶ子ども達の歓声がこだまし、川沿いの遊歩道を散策やジョギングを楽しむ人々が行き交う。初夏のアユ釣り、秋の芋煮会だけでなく、四季を通して市民の憩いの場として親しまれている。
そんな広瀬川も太陽が沈み、薄明のころになると静寂を取り戻す。日中の暑さも収まり、川岸を吹き抜ける涼風が心地好い。どこからか清流に生息するカジカガエルの美しい鳴き声が聞こえてくる。日没後のソフトで暖かな光に包まれるマジックアワー、そして辺り一面が青い光に照らされるブルーモーメントになると、広瀬川に架かる橋のフォルムが一層際立つ。光と水が織り成す景色は、時として幻想的でさえある。
梅雨入り前の晴天に恵まれた日々。昼から夜に移り変わる逢魔時に広瀬川を巡り歩いてみた。