コロナ禍で中断した猫たちの里親探しが再開 仙台の「保護猫シェルター」はいま

鈴村加菜(仙台市)】仙台市宮城野区にある保護猫シェルター「おうちにおいで。」では、多頭飼育崩壊現場などで保護された猫たちの里親探しを行っている。ボランティア団体の協力で譲渡会を定期的に開催していたが、新型コロナウイルスの影響で3月~5月は中止となり、緊急事態宣言中はシェルター自体の営業も自粛することとなった。里親探しは一時中断してしまったが、現在は感染対策を行いながらシェルターの営業を再開。少しずつでも着実に猫たちと新しい家族が繋がっている。代表の小野夏樹さん(44)に、コロナ禍での保護猫活動の今について話を聞いた。

多頭飼育崩壊現場からスタートした里親探し

「おうちにおいで。」は、2017年、宮城県白石市で起きた多頭飼育崩壊の現場から保護された猫たちのシェルターとしてスタート。この多頭飼育崩壊現場から引き受けた30頭の猫のほとんどの譲渡が決まると、続いて県内のボランティア団体が保護した猫を引き受け、里親を募集した。シェルターを訪れた人に猫との触れ合いの場を提供しながら、希望者はボランティア団体による飼育環境チェックやトライアルを経て猫たちを家族に迎えることができるシステム。今年5月で開設3周年を迎えた「おうちにおいで。」を卒業した猫は80頭以上になるという。

(「おうちにおいで。」は仙台駅東口から徒歩10分ほどの「さくらビル」6階)

「おうちにおいで。」にいる猫たちは、少し「びびり」な子もいるものの、ボランティア団体の方のもとで人慣れした懐っこい子ばかり。このシェルターには、初めから「猫を迎えたい」と希望して訪れる人も多いため、譲渡までは比較的速いペースで進むという。しかし、小野さんは「うち(シェルター)にいる子は氷山の一角に過ぎないんです」と話す。ボランティア団体の方々は、シェルターにいる数の何倍もの猫たちを日々世話しており、病気持ちや極度に警戒心が強いなどの事情がある、「脚光を浴びない」猫たちが多いという。

(白石市の多頭飼育崩壊現場からレスキューされたむっちゃんと小野さん。むっちゃんは小野さんの指名で唯一の「猫スタッフ」に)

コロナの影響は保護猫シェルターにも

このような猫たちのための機会が譲渡会なのだが、新型コロナウイルスの影響で3月~5月は開催が見送られた。また、宮城県に緊急事態宣言が出された4月中旬からの1カ月間はシェルターの営業も自粛。営業再開後も、しばらくの間は完全予約制や1グループのみの利用に制限することとなった。資金面では「なんとかやっている」といったところだというが、「おうちにおいで。」のように営利目的でないシェルターや保護猫カフェは、短期間の休業でも厳しい状況に追い込まれてしまうのが現状だ。

(店内には里親を待つ猫たちの情報が掲示されている)

また、小野さんは里親探しをする上で「家族全員で来てもらえるゴールデンウィークに営業できなかったのは残念でした」と話す。「おうちにおいで。」では、猫たちが新たな家族との生活に馴染みやすいよう、店内を一般的な家庭のリビングのような雰囲気でレイアウトしたり、訪れる人に対して過度なルールを設けないようにしたりしている(お店からの注意事項は必ず守りましょう)。そのため、シェルターや譲渡会を訪れる際も、家族の中の1人ではなく、できるだけ家族みんなで会いに来て考えてもらうのが最善だという。

里親探しにこだわる理由

最近では、「地域猫」という考え方も広がりつつある中、「おうちにおいで。」が里親探しに力を入れるのには、代表の小野さんと「店長の福ちゃん」との出会いがあるからだ。

かつて「地域猫」だった福ちゃんは、交通事故で重傷を負い、奇跡的に一命を取り留めて回復したものの、全盲となってしまった。そんな「福ちゃん」の里親となったのが小野さん家族だった。福ちゃんと出会う前は“どちらかといえば猫派というくらい”だったという小野さんは、福ちゃんとの出会いを経て猫の完全室内飼いを勧めるようになった。「外にいることは猫にとって少なからず危険だと思います。野良猫の寿命は4~5年、家猫は今では15~20年生きると言われています。少しでも多くの猫に家族を見つけて長生きしてほしい」

現在、「おうちにおいで。」はマスクの着用など感染対策を行いながら、通常通り営業。月に1度の譲渡会も6月21日に再開され、「徐々に人は戻りつつある」という。譲渡会を訪れた人に対し、小野さんは「正直、こんな時期にありがたいという気持ち。このままシェルターや譲渡会を訪れる人が戻れば感染拡大前のペースで譲渡を進められるのでは」と期待する。

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