【続・仙台ジャズノート#110】即興演奏に欠かせないペンタトニックスケール

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

【佐藤和文】振り返れば、音楽的な知識や演奏上のこつのうち、初期の段階で教えてもらったにもかかわらず、習得不十分なままに通り過ぎてしまっているものが少なくありません。基礎練習を積み上げるなかで身に着けたいと思ってもなお不十分な課題については、実際に曲をこなしながら少しずつ習得する以外にないような気がしています。アドリブ演奏にとって不可欠な音階の一つ「ペンタトニックスケール」もその一例です。サックス教室でもずいぶん早い段階で教えてもらった記憶がありますが、散漫な練習にとどまっているせいか、いまだに消化できているとはいえません。

「ペンタトニック」の「ペンタ」は「5」を意味するそうで、5つの音からなる音階です。ごく簡単に言えば、メジャー(長調)とマイナー(短調)の2系列があります。ペンタトニックスケールは、一つのコード上で使えるというわけではなく、実に多くのバリエーションが考えられます。詳細な音楽理論に向き合うととても手に負えないので、具体的な曲に即して補充追加的に頭に入れる以外にないようです。覚えるよりも忘れる方が多いのは事実ですが、やむをえません。

ペンタトニックスケールを導くにはメジャーなら「ヨ・ナ抜き」、マイナーなら「ニ・ロク抜き」(ヨ・ナ抜きほど一般的ではないかもしれません)のように、『合言葉』があるので、比較的覚えやすいスケールです。落ち着いて考えればすべての基本となるメジャースケールからどんなペンタトニックでも導き出すことができます。

「ヨ・ナ抜き」はメジャースケールのルート(根音)から数えて4度(ファ)と7度(シ)を抜いた音列です。同様にマイナーの「ニ・ロク抜き」は、マイナースケールから2度(レ)と6度(ラ)を抜いた音列になります。

ペンタトニックに限らず、スケールは始まりの音の高さに応じて変化します。これがなんともややこしく、コードの進行に合わせて瞬時に導き出せるようになるのはなかなか大変です。指が自然に反応するような練習の質と量が試される世界でもあります。ペンタトニックの場合、そのままの形で、あるいは幾つかの音を付加することでいわゆるブルース系の曲で使えるようになるなど、応用編まで考えると、とても練習しがいのあるスケールです。

ちなみに筆者の場合、よく使うコードのペンタトニックは大体、頭(指先?)に入っていますが、覚えきれていないコードが出てきたときは、いまだにコード対応した音を選ぶことですり抜けるレベルです。楽譜の隅に音列をメモしておくというちょこざいなこともやります。

ペンタトニックスケール絡みで今、向き合っているのがジャズスタンダード「A列車で行こう Take The A-Train」です。基本的にコード進行に応じた音を選ぶ練習をしますが、全編Aメジャーペンタトニック(アルトサックスのキー)でアドリブの形になる曲でもあります。

実際は、コードがBのところで「ホールトーンスケール」という、すべての音列が全音関係で結びつくスケールを選べるようになるのが目下の目標です。このコードをうまく使うと、斬新なイメージを出すことができるようです。筆者の場合、まだうまくいったことはないので、いまだに未知のポイントが潜んでいるんでしょう。もちろん、いざとなったらペンタニック一色あるいは若干の変形版で逃げようとするのはヘタレの証拠でしょうか。

「TOHOKU360」に続けているこの連載は新型コロナウイルスの感染拡大を機に大幅な予定変更を迫られ、身近なジャズ現場の取材報告に加え、筆者のアドリブ志願の様子をありのままに報告する「体験記」のスタイルを混在させるようになりました。何と言ってもジャズ志願の途中経過の試行錯誤や戸惑い、失敗例、未熟な表現も飛び出すので、難なくジャズをこなす演奏家のみなさんにとっては物足りないかもしれませんが、「体験記」の形でまとめる作業を通じて、自分の現在地をはっきりと自覚できるようになります。「ペンタトニック」の場合も、現在地の確認から優先すべき改善ポイントが浮かび上がりつつあります。次から次へと生まれる難題に向き合うためのステップにもつながっています。お付き合いくださいませ。

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