【続・仙台ジャズノート#41】ドキドキ「4バース」が楽しい

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】振り返れば「あ、これは楽しい」と感じる瞬間が幾つもあったからこそ、何とかやってこられたような気がします。還暦過ぎて経験値だけは厚みを増しているので滅多なことでは驚きませんが、ジャズ音楽特有の「4(フォー)バース」と呼ばれる演奏の形はリスナーとして聴いているのとはまるで違って、非常に興味深いものでした。ジャズ音楽の最大の特徴とされる「インタープレイ」(相互作用)を分かりやすい形で味わえる瞬間でもあります。

「バー(bar)」は「小節」を意味します。「フォーバース(4bars)」=「4小節」は、演奏者が4小節分のソロ(アドリブ)をドラムと交互に演奏することです。実際の演奏ではアドリブが一巡した後、曲の中ほどで、ドラム-トランペット-ドラム-サックスのような順番でソロを交換します。演奏者の気持ちが通い合う、いい場面です。中・上級者になると、互いのソロを注意深く聴きながら自分のソロを瞬時に組み立てます。「4バース」はジャズの醍醐味そのもの。録音・記録されたCDやレコードも重要ですが、「インタープレイ」の現場に直接出かけて熱気に触れることをおすすめします。

今回のテーマをどう書こうかと、考えながら過去の写真をながめていたら、ちょっと恥ずかしい1枚が出てきました。サックス奏者、名雪祥代さんの教室の生徒が参加できる発表会(交流会?)の風景です。2016年3月13日の撮影。ジャズサックスの基本を身に着けたいと考えて個人レッスンを受けるようなったのは、この発表会の2年半前、2013年10月でした。そう言えば、あのころは(今でも)自分のことで精いっぱいで、周囲の音はほとんど聞こえませんでした。だから他の演奏者の音に反応する「フォーバース」なんて夢のまた夢。それでも、ジャズ音楽特有のインタープレイにひかれます。

コロナ前に行われた教室の発表会風景。ろくに音の出ない「サックス奏者」をプロがサポートしてくれています。恥ずかしい戒めの1枚=2016年3月13日、仙台市内で。

長い間、続けている社会人のコンボバンド(少人数の編成のバンド)でも、ドラマーと他の演奏者が交代でソロをとるアレンジはありました。もともと他の演奏者のサポートに回るドラム担当だったこともあり、ソロ交換の意味を理解しているとは言えませんでした。「4バース」の面白さに気付いたのは、ドラムからアルトサックスに移り、個人レッスンのかなり早い段階で師匠から「4バースやりましょ」と言われたときです。

アドリブ初心者なのにいきなり「4バース」かあ。戸惑いましたが、「4バース」の場を設定される中で、ソロらしきもの(汗!)をひねくり出す経験は、下手は下手なりに、何かが始まるようでドキドキしました。ビル・エバンスが言う「ジャズ=作曲の過程」のしっぽのようなものの、そのまた先っぽに触れたのかもしれません。残念ながら他のメンバーの音を聴き分ける耳が備わっているとは言えないので、いまだに「へぼ」ですが、思い切って背伸びし、他のメンバーのソロの一部を拝借したり、応答文を勝手に作るつもりになってみたりします。意識すればするほどうまくいかないのは、技術や知識、感覚が未熟であり、経験が乏しいためです。

想像を無理やりたくましくしてみると、上級のジャズ演奏者とは、一緒にやっているメンバーのリズムやハーモニーだけでなく、自分を取り巻くあらゆる事象からインスピレーションを受け、アドリブ演奏においては、時間の進行と同時に進む、世にも珍しい音楽を瞬時に作曲する人たちを指すようです。他のメンバーとの共同作がレベルの高いものであればあるほど、ジャズ音楽としての水準も高まるのでしょう。

【ディスクメモ】Blues for 2 /ZOOT SIMS plus JOE PASS

あまり難しくないジャズを、と言われたときにおススメできる1枚。テナーサックスの名手ズート・シムズに名手ジョー・パス(ギター)が絡みます。「ブルージ-」「ジャジー」-どちらでもいいんだけれど、2人のインタープレイはリラックスした中に奥深いものを含んでいるのだなあ。

決して簡単なジャズではないのですが、優れたジャズは聴き流しても十分楽しめる?アルトサックスに気持ちが向かうせいか、テナーサックスは何となく大ぶりな感じがして音像全体をとらえられないことも多いのですが、シムズの歌心あふれるソロに引き付けられます。シムズのソプラノサックスを聴けるのがA面3曲目の「黄金の雨」。PABLO版。1983年。

曲目は次の通り。(レコードです)

【A面】

  • ブルース・フォー2 BLUES FOR TWO
  • ジンジ DINDI
  • 黄金の雨 PENNIES FROM HEAVEN
  • プア・バタフライ POOR BUTTERFLY

【B面】

  • ブラック・アンド・ブルー (WHAT DID I DO)BLACK AND BLUE
  • あなたのほかには I HADN’T ANYONE TILL YOU
  • テイクオフ TAKE OFF
  • リメンバー REMEMBER

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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