【続・仙台ジャズノート#68】えっ?何が起きた?「サマータイム」で動転。「お気楽SESSION」に参加して

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】とにかく人前で演奏する機会を増やさなければ、といろいろ試みているうちに、初めて気づく事柄も多いものです。2023年5月28日、仙台市青葉区のジャズバーで開かれた「2つのバンドによるミニLIVEと『お気楽SESSION』」というイベントに参加しました。自信のある人もない人も、自由に飛び入りできるのが、いわゆる「セッション」です。ジャズ特有のこの催しの敷居をなるべく低くして、ジャズ演奏を楽しむ人を一人でも増やそうという企画です。

二つのバンドによるミニライブとセッションの2部構成で、参加費は3,500円(ビール以外のドリンク飲み放題、料理代を含む)。リーズナブルな料金設定です。会場に出掛けてみると、これまでにライブやセッション会などで会ったことのあるみなさんがいて、自己紹介したりされたり、あらためて話す機会にもなりました。

主催者が作成したイベントの趣旨説明文を紹介します。

「BIG BANDとかでジャズやってて楽器はできるけどコンボでの演奏やセッションは未経験またはちょっとしか・・・の方限定でのセッションゴッコです。セッションのその場で音楽を作るドキドキと楽しさを感じられたらイイネ! やみつきになったらもっとイイネ!」

「お気楽SESSION」の光景。うまい人たちはとにかく落ち着いている。

この日の筆者の“ネタ”はジョージ・ガーシュインの名曲「サマータイム(Summertime)」でした。若いころからいろいろなスタイルの編曲で聴いてきた作品で、練習も、結構な量をこなしてきました。密かな自信があったはずなのに、聴かせどころの一つと考えていた個所で、低音域の「C#(ド#)」の音を見事に外したのでした。指の押さえは確かに「C#」だったのに、楽器の方が言うことをきいてくれなかったのです。「ピャーッ」と、それはそれは妙な音が響きました。その拍子に、自分でも驚くほどに動転し、その後の演奏も、悲惨そのもの。とんでもない事態になったのでした。

アルトサックスには音を正しく出すための「タンポ」という部品があるのですが、それが何らかの理由でうまく動作せず、くっついたままになったのでした。そんな事態を招くこと自体、楽器の管理や点検に問題があった、つまりは誰のせいでもない、自分の手抜きのせいなわけです。トラブルの原因はほとんどの場合、自分にある、というのは、これまでにも何度も経験してきたことです。トラブルは突然にやってくるけれども、実際に起きてしまえば、その原因はさほど意外なものではありません。

恐らく、この日のセッションでは最大の見もの、聴きものになったせいで、心配してくれる参加者のみなさんとの話がかえって弾んだ感じでした。その後に行われた他の参加者のセッションにも、半ば意地になって(?)出ていきました。あえて鬼門の「C#」を密かに取り入れるなど、楽器を試しているうちに「C#事件」のショックは次第に薄らぎました。「音楽を作るドキドキと楽しさ」を大切にする「お気楽SESSION」の精神に救われたということになるでしょうね。

幸い、セッション終了後の確認作業でも、楽器や演奏の実技自体には問題がないことが明らかになりましたが、どんな事態になっても冷静に曲と向き合う気力が必要なことだけは確認できました。あの「ピャーッ」という異音だけはもう繰り返したくないものです。

イベリアン・ワルツ /サダオ&チャーリー IBERIAN WALTZ

【ディスクメモ】ナベサダも、こういう音を出していたんだなあと思うのは筆者だけでしょうか。渡辺貞夫とチャーリー・マリアーノのアルトサックスソロを楽しめます。1967、1968年の吹き込み。菊地雅章(ピアノ)、原田政長(ベース)、富樫雅彦(ドラム)、渡辺文男(ドラム)ら、当時のレギュラーメンバーの演奏も懐かしい。多少、フリー寄りに傾いた60年代末期のジャズの雰囲気をたっぷり楽しむことができます。イベリアン・ワルツはマリアーノのオリジナルで、スペイン風の旋律がとても印象的。B面2曲目「ラメント」でのナベサダのバラードがいい。ドラムはA面が富樫雅彦、B面が渡辺文男。

▶Side A

  1. イベリアン・ワルツ IBERIA N WALTZ
  2. アイ・ソート・アバウト・ユー I THOUGHT ABOUT YOU
         *渡辺貞夫は演奏していない。

▶Side B

  1. パリセード PALISADES
  2. ラメント LAMENT
         *マリアーノは参加していない
  3. ユー・アー・マイ・ハーツ・ディライト YOU ARE MY HEARTS DELIGHT

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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