【続・仙台ジャズノート#72】「リズムチェンジ」が楽しい

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】ジャズ音楽にはミュージシャンが共有でき、競い楽しむための仕掛けが幾つもあって何やら面白そうです。たとえばジャズ発祥以来の歴史がにじむ「ブルース」は、独特のリズムと、数字では割り切れないようなニュアンスの「ブルーノート」が命。それなのに「キーはFでお願いします」の一言があれば誰でも参加可能な音世界が広がります。ジョージ・ガーシュインの「I Got Rhythmアイ・ガット・リズム」のコード進行を基にして生まれた曲の数々を「リズムチェンジ(循環)」と総称します。「リズムチェンジ」の曲ならコードの進行が同じだから飛び入り自由のジャムセッションでもよく取り上げられます。ソニー・ロリンズの「OLEOオレオ」、ディジー・ガレスピーの「Antholopologyアンソロポロジー」、チャーリー・パーカーの「Moose The Moocheムース・ザ・ムーチェ」など、ジャズらしい遊び心に富んだ曲ばかりです。

ブルースの面白さにはまた別の機会に触れるとしてここでは「I Got Rhythm」をアドリブする場合について分かる範囲で報告します。曲の構造を理解するうえで、音楽理論を総動員して解釈するような厳密な理解の仕方もありますが、第一歩を踏み出し、ジャズをより楽しむためになるべく簡単な手掛かりを求めることにします。

「I Got Rhythm」は古いジャズファンなら聴いたことがあるはずですが、サックスの楽譜を最初に見たときはやはり訳が分かりませんでした。AABAの典型的なジャズ形式を備えているので、分かりやすい半面、非常に速いテンポで演奏されることが多く、コードが目まぐるしく変わる感じでした。サックス奏者名雪祥代さんのレッスンではコードノートを追うアドリブを中心に学びました。「ペンタトニックを使える部分もある」とのことだったので、ネットを検索し「Gメジャーのペンタトニック一発で演奏する方法」を知りました。Gメジャーペンタトニック一発法はいざというときの垣根をだいぶ低くしてくれます。

問題は7thコードを繰り返すテーマBの部分でした。7thコードへの対応方法は幾つもあって、なかなか覚えきれません。曲によって恐らく妥当な選択があるのだと思うのですが、今のところ「オルタードスケール」の次に知った「ミクソリディアンスケール」を使っています。

楽器と楽譜(イメージ)

アルトサックスのキーに直すと、「I Got Rhythm」のテーマBの部分のコード進行は以下のようになります。

B7┃  B7 ┃ E7 ┃ E7

A7 ┃ A7 ┃ D7 ┃D7

B7、E7、A7、D7の4つの7thコードを2小節ずつ繰り返す進行です。このようなタイプの7thコードの場合、「ミクソリディアンスケール」が使えるので、たとえばB7ならBメジャースケールの第7音を半音下げて使います。以下、同様にE7ならEメジャースケールの第7音を半音下げる-と頭の中で瞬時に「翻訳」できれば問題はないのですが、いろいろやっているうちに筆者の場合は、ミクソリディアンの導き方のもう一つの方法-「B7」ならBから数えて4度上のメジャースケールを使う-と理解する方が反応できることに気が付きました。スケールに応じて「第7音はなんだっけ?」と考えるよりも早いわけです。

よくよく楽譜を見れば、使うべきメジャースケールは、次の7thコードの第1音(ルート)になっていることにはずいぶんたってから気付きました。テーマB自体が4度進行になっているわけです。我ながらいかにも初心者らしい紆余曲折としか言いようがありません。いつもなら疲労感を伴う手探りも、時には体質や嗜好、そのときの自分の状況に合った手掛かりにつながることがあります。「すべての手掛かりは楽譜にあり」。独り言もまた楽しいものです。

「リズムチェンジ」をしっかりマスターできれば、ジャズ界で誰もが知っているスタンダードでアドリブすることが可能になるかもしれません。ジャムセッションでも何とか戦えるか?すぐ楽観的になるのも、初級のジャズ志願者の悪い癖かもしれませんが、もともと音楽的なレベルを言えば底なしの世界でもあるので、一歩踏み出すための燃料を自分で見つけたときぐらいは、自分をほめてもいいでしょう。

SORTY ROGERS & ART PEPPER  POPO ショーティ・ロジャース&アート・ペッパー/ポポ

【ディスクメモ】ショーティ・ロジャース(トランペット)とアート・ペッパーの双頭コンボによる作品です。1951年12月、ロサンゼルスでの録音。米西海岸で人気を集めた、いわゆるウェスト・コーストジャズの始まりを記録した作品として聴くのが楽しいでしょう。

アート・ペッパーのきれいなアルトは聴きごたえあります。非常に好きというわけでもないけれど、シェリー・マンのドラムは切れがあって、説得力があります。A面4曲目の“All the Things You Are”の冒頭、手拍子入れているのは誰だろう。なんか、ダサイ。惜しい。ペッパーとショーティ・ロジャースの何と若いことか。

Shorty Rogers – Trumpet
Art Pepper – Alto Sax
Frank Patchen -Piano
Howard Rumsey – Bass
Shelly Manne – drums

▶Side A

  1. “Popo”
  2. “What’s New?”
  3. “Lullaby in Rhythm”
  4. “All the Things You Are”
  5. “Robbins Nest”

▶Side B

  1. “Scrapple from the Apple”
  2. “Body and Soul”
  3. “Jive at Five”
  4. “Tin Tin Deo”
  5. “Cherokee”

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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