【文・写真/佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)=秋田県横手市】 太平洋戦争後、朝日新聞社を退社して故郷の秋田県で自ら「週刊たいまつ」を発刊したジャーナリスト、故むのたけじさんの特別展が横手市にある雄物川郷土資料館で開かれています。3月24日まで。
特別展は遺族が横手市横手図書館に寄贈した資料や遺品を中心に組み立てられ、反戦・平和にかけたむのさんの思いが強く伝わる内容になっています。特に90歳を越えてから書きためた色紙が壁一面に展示されている様は、不屈のジャーナリストらしい切れ味が迫力十分です。執筆期日などのデータが記されていないだけに、見る者の心をかえって揺さぶるようです。色紙81枚の中から適宜選んで紹介します。じっくり味わってください。
- 嵐はたいまつを消すことができる。たいまつの炎々と燃えるのも嵐のときだ。
- 沖縄の風と水が好きだ。人を人にする。
- 地震に地球の怒りを感じないか。人類は地球を怒らせていないか。
- 地球を汚すな、地球の生命は最長ならあと55億年 最短でも40億年には終る。後続の者たちのため地球をよごすまい。
- 散り桜 椿の根っこに食べさせる 椿の花たちキンモクセイに
- 農耕する人たちは地球のメンコ(愛児)だな。汗は必ず咲いて実る。あすとあさっても
- 老いても闇を恐れない。幼少を無電灯で育ったから。三つ児百マデダナ。
- 笑ってごまかすな。相手と自分と二重に裏切る。ごまかすならゴマかすつらでゴマかせ。
- 人は本気になると物を言わずにやる。言葉はいのちの薪となる
- しずくでもあらしでも水は水。同様に状態や状況はどうあれ人は人。人をつらぬく人は、そうですね。太陽の子だな。
- 夜が朝を生む。
- 始めに戦え 終わりに笑え
- お前は誰だ、百姓の子 お前は誰だ、プロレタリアート。お前は誰だ。俺だ。
- 自分の頭脳の主人になるな、召使いになるな。一対一の友を通せ。
- 死ぬときそこが生涯のてっぺん
むのさんは2016年8月21日、101歳で亡くなりました。1000枚を超える色紙のほか「語録」と題された大判のノートが家族に託されたそうです。それらについては、岩波新書「99歳一日一言」として出版されています。むのさんは「著者の願い」のなかで「矛盾だ、歪曲だ、偏向だなどと非難される言葉もあるでしょう。当然です。まだ生きている一人間のナマの生活から出た言葉ですから、もしそんな言葉に出会ったら、あなた自身の言葉で四方八方から叩いてください」と書いています。