【高校生記者がゆく】鐘崎の「笹かま館」で知る、宮城の食と文化への思い

高校生記者がゆく!】仙台市の高校生が記者となり、高校生目線で地域の魅力や課題を発信する連載。宮城野区中央市民センターのプロジェクト「まいぷろ」に所属する高校生たちが地域の気になる人やテーマを取材し、全国に発信します。

鈴木柚夏、佐竹真帆(高校生記者)】笹かまぼこをはじめとする水産練り製品等を製造販売する株式会社鐘崎(仙台市若林区鶴代町6-65)は、戦後すぐの1947年(昭和22年)に仙台市東八番丁に創業した「合資会社 鐘崎屋」を前身とします。70年以上の歴史を地域の食文化とともに歩み、近年では厚生労働省の「えるぼし認定」の三段階を取得するなど、女性の活躍にも力を入れているそうです。今回の取材では同社の企業理念を知るために、同社工場の隣接地に平成元年(1989年)にオープンした「鐘崎総本店 笹かま館」(以下、「笹かま館」)を訪問しました。

地域の文化や歴史も学べる「笹かま館」

 「笹かま館」は「宮城の食や文化を満喫できるアミューズメント・パーク」(同社ウェブサイトより)として構想されました。地域の文化を重視する同社の基本理念は「笹かま館」の至る所で感じられますが、特に地域の歴史や文化に対する思いを感じるのが「笹かま館」に併設されている七夕ミュージアムです。

七夕ミュージアムは七夕飾りを常設展示した施設として知られ、一年中七夕飾りを見ることができます。過去に金賞を取った七夕飾りや七夕飾りの歴史などが展示されていました。ここを訪れる方は老若男女問わずおり、年配の方々は昔の七夕を懐かしみ、小学生などは夏休みの自由研究で、地域の伝統文化を調べるために、足を運ぶそうです。

 「鐘崎ショップ」はいわゆる「お買い物スペース」です。定番の笹かまぼこから、2023年に発売したばかりの、魚と大豆のタンパク質を配合したプロテインバーまで数多くの商品が並んでいます。一番人気はプレミアムな製品づくりが評判の“大漁旗(たいりょうばた)”だそうです。日常的な買い物としてだけではなく、観光客や地域の方がお土産やお歳暮・お中元といったギフトとしても購入されるそうです。

杜のこんだてcafeは、杜のこんだてブランドから作られた、魚のすり身などを使ったヘルシーな料理が楽しめるカフェです。杜のこんだてブランドは鐘崎の和惣菜のブランドです。カフェでは、笹かまでソフトをすくって食べる新感覚が楽しい “元祖SASAそふと”や、旬のお野菜を使ったプレートランチなどを提供しています。観光客の他、近くの会社で働いている方なども利用しているそうです。テイクアウトもでき、お惣菜やお弁当なども取り揃えています。

幅広い人が安全に食べられる食品開発を

株式会社鐘崎 経営管理部 総務・人事グループ課長 兼 社長室担当 高橋美裕さんに話を伺いました。高橋さんは商品のこだわりや、他社との違いについて話してくれました。

「こだわりの一つは材料にあります。鐘崎の笹かまぼこは職人の10年間の努力の末、卵白、でんぷん、化学調味料、保存料を使用しておらず、アレルギー体質の方を含む幅広い人が安全に食べられる商品となっています。さらに、笹かまメーカーで初めて国際規格の食品安全マネジメントシステムを取得していることも大きな特色です」

「国際規格の安全マネジメントシステム」とは、日本規格協会グループが実施する年に一度の厳しい抜き打ち審査を合格しなければ、取得し続けることのできない、消費者に安全な食品を提供することを目的とした国際規格となっているそうです。

また高橋さんは、職人たちがすり身の割合を調整するなど、常に味を改良しお客様に安定して美味しい商品を届ける取り組みも行っていることも強調していました。

地域に長く愛される「食文化」をつくる

商品に使う魚を海外から輸入し、安定して供給してきていたのだそうですが、海外の和食ブームや船の燃料の高騰などにより、魚の物価が高くなり影響を受けています。さらにコロナ禍になったことで一時的に観光客が激減し、会社は大きな打撃を受けました。しかし、最近ではその影響が緩和してきたことにより観光客、特に台湾や中国の方々が増えてきたそうです。さらに、魚を捌くところからの笹かま作り体験教室を作るなど体験コンテンツを充実させたほか、お土産商品では「少ない量でいろんな種類を買いたい」という最近のお客様のニーズに合わせたことにより需要を取り戻しています。 

高橋さんは「私たち鐘崎は、本当の『おいしさ』、すなわち心を『楽しく』豊かにする『おいしさ』こそ、人々に長く愛される『食文化』と呼ぶにふさわしいものであると考えています。本当の『おいしさ』を求める過程でお客様のお役に立ち、広く社会に貢献することが、私たち鐘崎の使命であると考えています」と話します。今回の取材を通して、食文化や伝統文化に対する企業の思いに触れることができました。

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