世界各国で高齢人口が増える中、家庭で誰でも簡単に脳の活動を測ることができる超小型脳センサーを開発。任天堂のゲームの監修で「脳トレ」ブームを巻き起こした東北大学川島隆太教授がCTOとなり、センサーと連動したスマホアプリで脳のトレーニングプログラムを一般向けに提供している。 光で脳活動を計測できる技術と「世界最小・最軽量のセンサー」はあらゆる業種の企業から注目を集め、健康・医療分野はもちろん、マーケティングや商品開発、幼児教育から企業の働き方改革までさまざまなニーズに合わせて活用が進んでいる。
脳の計測を「日常」に。マーケティングや働き方改革にも活用進む
株式会社NeUは、東北大学と日立ハイテクノロジーズ、株式会社NSD、東北大学ベンチャーパートナーズ、七十七キャピタルの出資で2017年に設立。日立製作所時代から日常で脳活動を計測できる小型端末の開発に取り組んできた長谷川清代表と「脳トレ」の第一人者で東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太CTOが、脳科学分野の技術と理論を支える強力なタッグを組む。社のミッションは「脳科学で人々のQuality of Lifeを向上させる」ことだ。
NeUが開発したのは、脳活動を計測する世界最小・最軽量のセンサー「XB-01」。これまでは医療施設や研究所のfMRIやCTといった大掛かりな装置でしかできなかった脳活動の計測を、世界最小・最軽量の「30g」にまで小型化したセンサーとスマホとの連動で、誰もが家庭で簡単にできる状態に変えてしまった。
この技術を用いて、2018年12月にニューロフィードバック型の脳トレ「Active Brain CLUB」をリリース。センサーと2年間利用できるアプリにて(定価34,800円)、自分の脳の活性化の度合いをリアルタイムで測りながら、頭の回転や記憶力、注意力などを鍛えることができる。利用者はリリースからの約1年間で1000人を超えた。
企業からの引き合いも強い。特に需要が高いのが、企業の商品開発やマーケティングに脳の計測技術を生かす独自サービス「ニューロマーケティング」だ。顧客が商品やサービスを体験するときの「味覚」や「視覚」「乗り心地」などの感覚を、脳の計測により数値化。従来のアンケートやインタビューという手法よりも客観的に人の嗜好や感じ方を計測・分析して、サービスや商品に反映することが可能になった。業務開始前に脳のウォーミングアップをすることで生産性や業務効率を上げる企業向けプログラムも開発しており、技能五輪に挑戦する企業の技術者にも活用されている。
世界の人々が抱える課題を「脳科学」で解決していく
脳科学分野でオンリーワンの技術と教育プログラムの開発力の両輪を有する同社だが、「高齢化は世界の課題で、ターゲットとなるマーケットも世界規模で大きくなってきている。日本より世界の動きの方が圧倒的に早く、世界規模で事業を考えると足りないものだらけ」と、長谷川代表はグローバル市場を目指す上での課題を挙げる。
「同じヘルスケア分野でも、例えばアメリカのベンチャーなら投資額の桁が違う。日本でももっと大きい投資を出していい分野だと思います。また海外で戦う上で、これからは海外に目を向けたリクルーティングもますます必要だと感じています」
NeUが目指すのは、脳科学で人々が社会の中で抱えるあらゆる課題を解決していくことだ。2月20日には脳の状態を計測しながら家庭で瞑想やセルフコントロールができる「マインドフルネス」のための新作アプリもリリースした。
「高齢化はもちろん大きなテーマですが、社会が抱えている課題はそれだけではない。働く人がストレスをできるだけ感じないようにする、子供が早いうちから学習能力を獲得できるようにするーーそれらは必ず “脳センサー” がカバーできる領域になる。ハードの機能が拡張していけば、さらに人間を深く知ることができるようになる。活用方法は、これからもどんどん広がっていくはずです」
【東北大学スタートアップガレージコラボ企画:東北大発!イノベーション】2020年、世界大学ランキング日本版の一位になった東北大学。世界最先端の研究が進む東北大では今、その技術力を生かして学生や教職員が起業し、研究とビジネスの両輪で世界の課題解決に挑む動きが盛んになっています。地球温暖化、エネルギー問題、災害、紛争、少子高齢化社会…そんな地球規模の問題を解決すべく生まれた「東北大学発のイノベーション」と、大学に芽生えつつある起業文化を取材します。
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