肩こりや腰痛を改善する「姿勢矯正メガネ」東北大生が発明

【安藤歩美】コロナ禍でテレワークが推進される中、慣れない在宅ワークで肩こりや腰痛に悩まされている人も多いだろう。そんな中、一人の東北大生が「姿勢矯正メガネ」を発明した。特殊なメガネを装着するだけで、パソコンでの作業中に姿勢が悪くなるとすぐに感知し、知らせてくれるという優れものだ。製品化を目指し株式会社weCANを立ち上げた東北大学工学部4年生の高橋佑生さんは「肩こりや腰痛に悩む人は多く、大きな需要を感じている」と話す。

子供のころからの悩み、肩こりを予防するデバイスを発案

子供のころからエジソンの伝記を読み、歴史に名を残す発明家に憧れていたという高橋さんは「新しいものを発明して起業したい」という強い思いから、東北大学工学部へ入学した。大学での研究と並行し、学外では子ども向けにプログラミングや電子工作を教えるNPO法人natural scienceに所属しながら、さまざまなデバイスの開発に取り組んできた。

そんな中で思いついたのが、「肩こり」を予防するようなデバイスの開発だった。「小学4年生のころからずっと肩こりに悩んでいた」という高橋さん。子供にプログラミングを教えている最中も、パソコン画面を眺める子どもたちの姿勢が前かがみになってしまうことを懸念していた。そこで、メガネに装着するだけで姿勢のよさ・悪さを瞬時に判別してくれるデバイスを考案。この「姿勢矯正メガネ」は2017年に北京で開かれた国際イノベーションコンテスト(iCAN)世界大会で優勝し、2019キャンパスベンチャーグランプリ全国大会でも文部科学大臣賞を受賞した。このデバイスを製品化すべく、高橋さんは2020年10月に株式会社weCANを設立。東北大学名誉教授でMEMS研究の第一人者である江刺正喜教授を顧問に迎えた。

姿勢の悪さをすぐに知らせてくれる、姿勢矯正メガネ

weCANが開発する姿勢矯正メガネ「inte-glass(インテグラス)」は、メガネに装着された小型デバイスのセンサーが頭の角度と画面との距離を測定し、座った姿勢での身体の背骨全体の骨の並び(脊椎アライメント)を推定。今どの骨やどの筋肉にどの程度負荷がかかっている状態なのかをユーザーに教えてくれる。姿勢が悪くなるほど作業中のパソコンの画面が赤くなってしまうため、ユーザーはそうならないように背筋を伸ばした状態を維持するというしくみだ。

姿勢が悪くなるほど、作業中のパソコン画面が赤くなっていく

現在同社は東北大学医学部整形外科教室と共同研究を進めており、「inte-glass」を利用している最中に脊椎アライメントがどう変化して姿勢が改善するのか、医学的な観点からその効果を実証しようとしている。頭部に装着したデバイスから背骨の形状(脊椎アライメント)を推定するしくみは、どこでもリアルタイムに背骨の形状を測定できる点で新しく、東北大医学部より2021年2月に特許を出願した。

今後は共同研究の結果をまとめ、2022年上半期の製品販売を目指す。個人への販売はもちろん、企業の福利厚生やプログラミング教室の受講生へのサービスなど、企業向けのサービス展開も視野に入れる。さらにユーザーが増えれば、そこから得られたユーザーの姿勢データをクラウド上に蓄積して分析。スマートフォンアプリと連動し、医師や整体師らの専門家がユーザーに合わせた姿勢の改善策やストレッチなどをアドバイスしてくれるようなサービスも考案中だ。高橋さんは「肩こりや腰痛に悩む人は多く、多くの人に興味を持ってもらえて、欲しいと言われます。需要は高いと感じますね」と手応えを語る。

自由な発明が生まれ、製品化される循環を東北でつくる

「inte-glass」は製品化に向けより磨きをかけていく段階にあるが、高橋さんはこの製品をあくまで「第一弾」なのだと話す。weCAN社のメンバーはこれまで難聴や音漏れを予防するヘッドフォン爆音安心や、誰でも最適な抹茶の点て方がわかる「どこでも茶道」などユニークなデバイスの数々を生み出しており、国際大会iCANで上位に入賞してきた。会社名の「weCAN」には、自分だけでなく、社員とともにさまざまな発明品を生み出して製品化していきたいという、高橋さんの思いが込められている。

「社員それぞれの思いを製品という形にして、大学などの研究機関と共同研究を行いアイディアの価値を高めていき、社会に提供する。そしてそこで得た利益を、後輩たちの育成に使っていく。会社を、そんなプラットフォームにしていきたいんです」と、高橋さん。江差教授も「楽しく挑戦して、この場所からものづくりを盛り上げてほしい」と、学生起業家の動きに期待を寄せる。

音漏れや難聴リスクを教えてくれる難聴予防ヘッドフォン
会社には国内外のものづくりの大会で受賞したトロフィーや賞状が並ぶ

そして「inte-glass」で実践しているように、東北大学と連携することでアカデミックな知見を取り入れ、よりよいものづくりの環境を生み出していきたい、と高橋さんは語る。「研究者の方は先行研究から始めますが、私たちは『思い』からものづくりが始まる。そうして積み重ねた発想が大学との研究者の方々の持つ知見と合わさると、新しい価値が生まれていくと思います。東北からもっと、産学連携や人材育成の動きを盛り上げていきたいですね」

連載:東北大発!イノベーション】2020年、世界大学ランキング日本版の一位になった東北大学。世界最先端の研究が進む東北大では今、その技術力を生かして学生や教職員が起業し、研究とビジネスの両輪で世界の課題解決に挑む動きが盛んになっています。地球温暖化、エネルギー問題、災害、紛争、少子高齢化社会…そんな地球規模の問題を解決すべく生まれた「東北大学発のイノベーション」と、大学に芽生えつつある起業文化を取材します。(毎週月曜日更新)

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