被災した街の記憶をつなぐ「オモイデツアー」継続を 残り5日でクラウドファンディング達成に挑む

【安藤歩美=仙台市】東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた沿岸部の街に滞在し、地元住民と交流しながら街の記憶や魅力を知る「オモイデツアー」を継続したいーー。そんな思いから、被災地での交流活動継続のためのクラウドファンディングに挑戦している団体がある。支援を募る期間は残り5日で、12日時点で約25万円が不足。活動団体は「震災から6年が経過した今だからこそ、沿岸地域へ興味を持ってもらうプログラムが必要」として、活動継続のための支援を募っている。

被災した街の「ファン」を増やすツアー

クラウドファンディングに挑戦しているのは、「3.11オモイデアーカイブ」。震災後に実質的に人の居住が禁じられた仙台市若林区荒浜や宮城野区蒲生地区の一部で、現地に滞在しながら地元住民との会話や交流を楽しんだり、震災前の街の写真を眺めながら思い出話をしたりする「3.11オモイデツアー」を2013年度から継続して開催してきた。

仙台市若林区荒浜での「3.11オモイデツアー」。元住民や市民らでにぎわう(2016年12月11日、安藤歩美撮影)

「3.11オモイデツアー」の特徴は、震災の遺構や津波の痕跡をめぐるようなツアーではなく、荒浜や蒲生という街の「ファン」を増やし、この地域に関心を持つ人を増やしていくことを目的としていることだ。

「被災地ツアーというと、津波の痕跡を観ながら教訓を考えるようなものを想像されるでしょう。でも、『3.11オモイデツアー』は、一日中沿岸部のまちに滞在し、地元の方々と一緒にお昼を食べたり、昔の写真を見て楽しく喋っている地元の皆さんの会話に交ざったり。こんな、お隣のまちにふらっと遊びに来たようなツアーなのです。肩の力を抜いて地元の皆さんとお付き合いするツアーなので、一日の行程が終わる頃には、まちと人に魅了され、おそらく『大ファン』になっているはずです」(「3.11オモイデアーカイブ」代表の佐藤正実さん)

人が住めなくなった荒浜という街に、元住民や地域外の人々が集まり交流し続けることは、400年以上もの歴史を持つとされる荒浜という街の生活風景や記憶、文化を次世代につないでいくことにつながる。佐藤さんはこのツアーを、震災後によく聞かれるようになった「ダークツーリズム」という用語に呼応する形で「ウォームツーリズム」と呼んでいる。

震災後なくなった「深沼海岸行」バスをもう一度

同団体は2016年12月11日には市営バスを貸し切り、震災後に運行されることがなくなった「深沼海岸行」のバスを1日限りで復活させた。この企画は大きな反響を呼び、当日は荒浜地区の元住民をはじめ多くの市民らがバスの到着を待ち、「深沼海岸」のバス停に停まるバスの姿に涙したり、抱き合ったりする姿もあった。→車窓から見えたのは「震災後」に生まれた景色だった 荒浜に1日限りバス復活2016年12月15日、TOHOKU360)

荒浜から仙台駅へ帰るバスの乗客に、手を振って見送る人々(安藤歩美撮影)

「3.11オモイデツアー」はこれまでの4年間、仙台市との協働事業として実施してきたが、「今年度からはその枠を離れ、自走する仕組みを取り入れよう」とクラウドファウンディングに挑戦。荒浜に「深沼海岸行」のバスをもう一度走らせるためのバスの貸切料金や、これまで取り組んできた沿岸部の街での交流活動の継続に必要な資金、150万円をクラウドファンディングで集めることに挑戦している。募集は5月17日午後11時までで、現時点(12日午後4時)で約25万円が不足している。

佐藤さんは「活動を継続させて、“今さら”ではなく“今だからこそ”できる、これからの3.11との向き合い方など、多くの人が気負いなく関われるツアーをともに作っていきたい」と意気込む。クラウドファンディングへの支援は https://readyfor.jp/projects/311omoide より参加できる。