【写真連載:女川ぐらし】アマチュア写真家の福地裕明通信員が、単身赴任先の宮城県女川町での暮らしを写真で綴る連載「女川ぐらし」。女川町のいまの日常風景を、生活者目線でお届けします。
【福地裕明】「女川」と「秋」とくりゃあ、やはり「さんま」だろう。
女川港では今シーズン、9月27日に初水揚げされた。この週は29日、30日と続けざまに水揚げがなされ、規模は小さいながらも、「もしかしたら、豊漁シーズン?」と淡い期待を抱き、一日も早く、旬の味を呑みながら堪能したいと思ってた。
ところが、そこから半月程度はパタリと入港が途絶えてしまい、なんだか、「おあずけ」をくらった犬のような心境に陥ってしまった。
そして、不思議なことに、その間なんと、マグロが水揚げされたとの知らせも。女川の漁業も業態変換を迫られるのかとの思いに駆られたりして。
(かつては秋刀魚よりも鰹が獲れていたそうだし、まちのマスコットキャラクターである「シーパルちゃん」も秋刀魚じゃなくて鰹を抱いてるからね)
といった感じで悶々としていたら、10月21日(木)、ようやく煌々と明かりの灯った秋刀魚船の存在を確認することができた。
「やっときた!」といった面持ちになったのは言うまでもなく、その晩はもちろん、旬の味を求めて馴染みの店に足を運んだ。これからのシーズン、何度となく堪能したいものだ。
話変わって、日ごと寒さがつのって(「北の宿から」かいっ!)きている。そのおかげで、夜明けとともに港に幻想的な風景があらわれる時期になってきた。その風景とは、気嵐(蒸気霧)のこと。
気嵐といえば、気仙沼が有名だが、実は女川でも見ることができる。湾の形状が似ているからだとは思うが、残念なことに気仙沼ほど見られる機会は多くない。でも、珍しい分、見られれば本当にラッキーなことだ。
私自身も女川で気嵐を見たのは2017年11月に一度だけで、以来、見る機会には恵まれなかった。(毎日のように港に顔を出していれば、見ることができたのかもしれないが)
NHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」で気仙沼が舞台となり、劇中でも気嵐のシーンが登場したこともあって、久しぶりに見てみたいものだと思ってた。
そんなささやかな願いが叶ってか、10月18日(月)、小乗浜の漁港で夜明けを撮ろうとしていたら、急に海面から白い煙のようなものが顔をのぞかせた。
4年ぶりの気嵐との邂逅だった。
そこからは連写の嵐。オレンジ色の朝焼けの光に照らされながら進む漁船と気嵐が神々しかった。
どうやらこの日は、気仙沼でも今シーズン初の気嵐が見られたようで、「おかえりモネ」効果なのか、気仙沼の様子は全国ニュースでも取り上げられていた。
なかなか気仙沼のように日常茶飯事に見られない側面もあるかもしれないが、「女川で気嵐を見る」といった体験も観光コンテンツになり得るのではないかと思った。
気仙沼ではすでに、気嵐スポットを紹介したり、気嵐を観るツアーを企画していると聞く。女川においても、シーパルピアから眺める初日の出のような物語性を紡ぎ出せれば、気嵐を見るためだけに観光客が訪れるかもしれない。言いっ放しではダメなので、これまで撮りためてきた朝焼けスポットの紹介ともども、関係する箇所に提案してみるのも一考かもしれない。(つづく)
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