犬と猫の「お鷹ぽっぽ」絵付けできるワークショップ開催 山形

【文・写真/黒田あすみ通信員=山形県山形市】山形県米沢市笹野地区で発祥し、千数百年に渡って伝承されてきた「お鷹ぽっぽ:正式名称 笹野一刀彫(ささのいっとうぼり)」は、野生のコシアブラの木を素材に、サルキリと呼ばれる刃物で削った木彫りの鷹へ絵付けをした民芸品。山形県民ならば、家の棚に飾られていたり、校長室や応接室に据えられていたりと、一度は目にしたことがある身近な存在だ。原型の絵付けは各工房で体験できるが、犬タイプと猫タイプの絵付けワークショップが開かれると聞き、犬も猫も家族に持つ記者はさっそく参加を申し込んだ。

イタリアで歓声を浴びた職人技に魅せられて

3月4日、絵付けワークショップの会場と聞きやってきたのは、山形県山形市「ヨシオ美容室木の実町店」。主催の荒井はる菜(あらい はるな)さんは美容師に加えて「pointflag(ポイントフラッグ)」という屋号でライフスタイルプロデュース業を営んでおり、今回はその一環。

絵付けワークショップの会場となった「ヨシオ美容室木の実町店」

ワークショップ開催のきっかけは、荒井さんと工房「笹野一刀彫 鷹山」6代目戸田寒風(とだ かんぷう)さんが、2015年にイタリア・ミラノ国際博覧会で行われた山形の食と文化を紹介するイベントで知り合って以来、仲を深めてきたことにある。

縁があって参加したものの、地元山形に深い興味を抱いていた訳ではない荒井さんの気持ちを変えたのは、イタリアの方々が山形のものづくりに感動している様子に感動した事だった。特に、人一倍自由に動き回り、すぐいなくなってしまう子供のようなおっちゃん(戸田さん)が、イタリア語の歓声に囲まれて職人技を披露する格好良さ。そのギャップに惚れ込んでしまったという。

帰国後もおっちゃんの工房へ顔を出す中で、干支の犬の彫物に「可愛い!」と一目惚れ。過去に猫も受注していたと知り、荒井さんの頭には「あの人にこれを見せたら絶対に喜ぶ!」という顔が続々と浮かんだ。ただ、仕入れて販売するだけではつまらない。実際に触れて絵付けする事で、伝統の技の凄さも体感して欲しいと思い、選んだ方法が絵付けワークショップだった。

絵付けをしたい「犬」か「猫」を選ぶ

ワークショップは、自身が絵付けをしたい犬・猫を選ぶところから始まる。手彫りのため1つとして同じものはなく、底面には「寒風作」の筆文字。

参加者はまず絵付けをしたい犬・猫を選ぶ
底面には「寒風作」の筆文字

絵付けの道具は、鉛筆と水彩絵具。鉛筆で下書きをして、様々な太さの筆や綿棒を使って、絵具で染めていく。つい下書きを塗りつぶすほか、混ぜた絵の具が足りずに身体の一部だけ染めきれず、元の配合は何だったか…と焦る姿もチラホラ。子供は感性で一気に、大人は考えあぐねて慎重に、というようすが参加者に共通していた。

「伝統工芸と自分の感性を合わせるのが楽しい」

「下の子がようやく一緒に工作できるようになった。伝統工芸と自分の感性を合わせるのが楽しい。自宅に長男が授業でつくったお鷹ぽっぽがいるので、一緒に飾りたい」と、手書きのイラストを元に完成させていた工藤明子(くどう あきこ)さん、愛理(あいり)ちゃん親子。

愛理ちゃんが元気よく染める
明子さんが細かい柄を仕上げる

飼い猫をモチーフにする参加者もおり、各々の思いが反映された1体が出来上がっていった。

飼い猫の可愛さを精一杯に書き写す参加者
絵具が乾いたら完成

「ぽっぽ」とはアイヌ語で「玩具」を意味し、置き物のイメージが強い「お鷹ぽっぽ」も元は郷土玩具。江戸時代に彫られた、羽がボロボロで軸の木しか残っていないものも現存しているという。確かに、子供たちの手には木彫りの温もりが良く馴染んでいた。

一気に、でも丁寧に仕上げる
次々に「こうしたい!」が浮かぶ

「日常にほっこりが増えてくれたら」

ワークショップ終了後、荒井さんは「絵付けと一生懸命に向き合う姿を見ることができて嬉しい。日常にほっこりが増えてくれたら良い。山形の文化を素材としたワークショップは引き続き開催したいが、そこに強いこだわりはなく、自分が『良い!』と感じて、それを知って喜んでくれる人が浮かぶものはどんどん紹介したい」と笑顔を見せた。

記者が絵付けした2体
尾の長さが異なるのも可愛い

本ワークショップの次回開催は未定だが、第2回の要望が既に寄せられているという。今後の予定は「pointflag(ポイントフラッグ)HP  https://pointflagpf.wixsite.com/pointflag」にて更新されていく。