ノートの指示通りに空欄を埋めていくだけで、誰でも漫才を作れてしまう魔法のようなノート「お笑いノート」を、仙台市のコトバマグネットプロジェクト代表・中田敦夫さんが開発した。中田さんは「独特の感性を持つ子供たちが、自分を表現できるツールになれば」と、開発に込めた思いを語る。
空欄を埋めていくと誰でも「お笑い」が作れる
「お笑いノート」と書かれた、ポップなデザインの謎めいた表紙をめくる。すると、ノートには「テーマを決めよう」「ボケのもとを考えよう」「ボケフレーズを考えよう」という3ステップが記されている。それぞれ空欄が設けられており、「いつ?」「どこで?」「だれと?」「どんな?」「フリ」「ボケ」「ツッコミ」………それぞれの空欄を自分で考えながら埋めていくと、あら不思議、自然と漫才ができあがってしまう。
正解じゃないものを歓迎するお笑いの世界は、可能性に満ちている
「お笑いノート」を開発したのは、仙台市のコトバマグネットプロジェクト代表・中田敦夫さん。高校生のころから一人で公園にいると子供に声をかけられ、暗くなるまで一緒に遊んでいたという子供心あふれる中田さんは、長男の誕生をきっかけに詩や絵本を書いたり、子供の想像力を膨らませる教育ツールを開発したりと、地域の子供たちに対して独自で考案した遊びと教育を展開してきた。
子供の無邪気で自由な想像力を育み、その発想力を認め合うことで子供の自己肯定感を高めていく。そんな取り組みを続ける中田さんが今年5月に発売した新作が「お笑いノート」だった。なぜ「お笑い」なのだろうか?中田さんはこう語る。
「お笑いの世界って(ズレたボケをすることで)正解じゃないものを歓迎する、というところがとてもすばらしいと思うんです。今はネットで検索すれば正しい答えがすぐ出てくる時代。ですが、間違っているとか、変な考え方にこそ次の新しい可能性があると思っています。奇抜な、独特の感性を持つ子が自分を表現できるようなツールになれば、と」
昨年夏にお笑いノートのアイデアが生まれてから、中田さんは宮城教育大学のお笑いサークルと一緒に宮城県村田高校でお笑いをつくるワークショップを開くなどして、手応えを感じてきた。「子供たちは、やってみるとお笑いが作れちゃった、と驚くんです。そしてお笑いが作れると、お母さんやお父さん、周りの人たちを笑わせることができて、周りを幸せにできる。自信にもつながりますよね」
身近な「変なおじさん」として、子供の可能性伸ばしたい
地元大学生やおもちゃクリエイターの高橋晋平さんも商品開発に関わりながら、5月25日に発売された「お笑いノート」。家庭や友達同士で買っても遊べる上、今後は学校教育の現場での活用なども期待されている。中田さんは「自分をきっかけにして、その子が自分では気付かなかった可能性に気付いたり、表現できる場が増えることにつながったり。そんな、気付きになるようなものを与えられたら」と話す。
そして子供たちに向き合い続け、一緒に遊び続ける中田さんがこれからも実践していくのは、世の中に「遊び」や「余白」を生み続けることだ。
「今は大人の世界に遊びがないから、子供が息苦しい。でも、新しいものが生まれるには『余白』が必要だと思うし、均質化されていない、多様な大人、多様な価値観が必要だと思うんです。だから僕自身が、枠からはみ出た大人でありたいし、子供の近くで子供に向き合う『変なおじさん』でありたい。子供が大人になったときにいつかその経験を思い出して、自分でやってみよう、始めてみよう、と思えるきっかけになれば。そのための種まきを『自分+モノ』でできたらなと思います」
「お笑いノート」は定価500円。仙台市青葉区のS-PAL仙台東館3階「ザ・スタディールーム」で購入できるほか、オンライン(https://kotomag.thebase.in/ )でも販売している。