誰でも悩みを相談できる「仙台駆け込み寺」とは?その活動を聞いた

仙台市の飲食店が連なる「いろは横丁」に、誰もが悩みを相談できる窓口「仙台駆け込み寺」があります。さまざまな人の悩みに寄り添う仙台駆け込み寺の皆さんに、相談内容から見えてきた地域の問題や、今の時代に「人の悩みを聞くこと」の意味について伺いました。

お話を聞いた方

公益社団法人 日本駆け込み寺仙台支部
支部長 織笠英二さん
広報担当 遠藤明子さん
相談員 納田萌加さん
相談員 小川泰佑さん

聞き手:前川雅尚(TOHOKU360通信員)

誰もがSOSが言える「困りごとの救急総合病院」

仙台市青葉区の庶民的な飲み屋街「いろは横丁」に事務所を構える「仙台駆け込み寺」。相談員総勢75人(2021年6月時点)が、電話や対面で人々のさまざまな悩み相談に応じています。支部長の織笠英二さんは「今でも昭和の香りを色濃く残している、人情味あふれる横丁で相談員が常駐しています」と話します。

仙台駆け込み寺は、東京でよろず相談支援を行う公益社団法人「日本駆け込み寺」(本部・新宿区歌舞伎町)の仙台支部として2012年に設立されました。当初は東日本大震災後の支援として国分町に拠点を設けていましたが、2017年に閉所。その後ボランティアにより活動が再開され、いろは横丁に活動拠点を移して本格稼働しました。宮城県では仙台のほかに、石巻市と名取市にも拠点を設けて相談を受けています。

市内や県内には「駆け込み寺」以外にも相談を受け付けている組織がありますが、それぞれの専門分野の範囲に応じた相談窓口となっています。織笠さんに言わせれば、仙台駆け込み寺は分野にとらわれずに誰もがSOSが言える「困りごとの救急総合病院」。「『どこに相談に行ったらいいかわからない』『複数の問題が重なっている』といった方から相談を受け、解決したり、他のところを紹介したりと交通整理のようなことも行っています」

相談のほとんどは人間関係の悩み

コロナ禍の今は電話での相談が多いそうですが、いろは横丁の事務所で直接相談することも可能です。相談内容について、広報担当の遠藤明子さんは「グラフでは家庭内、仕事などさまざまな項目に分かれていますが、どれも人が関わってくる問題なので、大きくまとめると人間関係に関する悩みがほとんどだと言えます」と説明します。

「駆け込み寺の特徴として『なんでも相談に乗る』ということがあるので、実は相談の内容は専門的なものはあまりなくて、専門的なところからは漏れたような、『どこに行けばいいかわからないけど聞いてほしい』『ちょっと苦しい』といったお話を多く受けています」

他人に弱みを見せたくない社会になっている?

駆け込み寺に相談する人の年齢や性別は実にさまざま。なぜ、これだけ多くの人が駆け込み寺に相談するのでしょうか。相談員を務める納田さんは、「今は特に職場や学校といった人間関係の中で、心から話せる人が少ない状況になっているということがあると思います。また、他人に弱みを見せたくない社会になっているということもあると思います」と推測します。

「例えばインスタで何気なくアップした写真でも、見る側によって単にいいね、と言われることもあれば、嫉妬や妬みにつながって人間関係が崩れるというケースもあると思います。そのような状況で人間関係を崩したくないけれど自分の中で抱えているにはつらい、というようなことがあったときに、私たちのような第三者に話してもらう」

ボランティアの相談員たちは自分の感情、考えを押し付けるのではなく、内容を聞いて理解する「傾聴」を心がけているそうです。「話していくうちに相談者さんがだんだん笑顔になっていく、電話でも笑うことが増えていくとか、楽しく話をしてもらえるようになっていくのがわかるので、話すのってすごく大事。そして話すことで前を向けるなら、聞くという仕事はすごく大切だなと思います」

さらに相談内容が専門家の支援を必要とすると判断した場合は、駆け込み寺が相談者を行政機関や支援団体につなぐ橋渡し役も担っています。「例えばDVの問題など専門的な力がいるとか、緊急性が高いケースもあります。そのような場合、駆け込み寺がシェルターや知識や資格を持った施設・窓口と繋がりがあれば対応の選択肢が増えるので、今後連携先を増やして行きたいなという気持ちがあります」

私たちにできることは?

悩みを抱え、話を聞いてほしいけれど誰に相談していいのかわからない。そんな現代の人々の受け皿となっている「仙台駆け込み寺」。「人の悩みを聞く」ことの大切さを知る立場から、私たち一人ひとりが実践できることについて聞いてみました。

たった一人でも「声をかける」こと

相談員の納田さんは「隣近所でも傾聴はできる」と、身の回りのコミュニケーションの大切さを指摘します。

「近所に挨拶をするような感じでコミュニケーションを取れるのが一番なのですが、今の日本はそれがだんだん薄れてきていると感じます。前代表の言葉を使うと、人は小さな石にはつまづかないけど、大きな石につまづくと大怪我する。その小さな石につまづく程度の悩みの時に話そうよ、ということです。私たちのモットーは『たった一人のあなたを救う』ということですが、それぞれが家族や近所の人など、たった一人でも声をかければ、日本の問題の多くはなくなると思っています」

常駐や相談を担当するボランティアになる

仙台駆け込み寺では相談員だけでなく、駆け込み寺に「いる」だけのボランティアも募集しているそうです。支部長の織笠さんはこう話します。

「私たちは『駆け込み寺があるよ』という光を常に放っていたいんです。『あそこに相談できる場所があるから安心だ』と思ってもらえる『灯台』になりたい。特に夜に駐在してくれるボランティアさんが少ないので、募集しています」

大学一年生で相談員のボランティアをしている小川さんは「大学生は普段は家族や友達、バイト先と閉鎖的な人間関係になりがち。自分の時間や労力を使って、相手がものすごく笑顔でありがとうといって下さる経験は、僕たち若者にとってすごく貴重な経験だと思う」と、やりがいについて語ってくれました。

仙台駆け込み寺の活動に興味がある、または悩みごとを相談したい方は、以下の連絡先へ。

WEB:https://sendaikakekomidera.amebaownd.com/
電話番号:070-4060-9862
メールアドレス:sendai.kakekomidera★gmail.com(★を@に変えて下さい)
LINE ID:sendaikakekomi

(取材:前川雅尚、書き起こし:鈴村加菜、編集・構成:安藤歩美)

【いづいっちゃんねる】はTOHOKU360と仙台市市民活動サポートセンターが共同制作する、地域にある「いづい」社会問題を地域の人々と一緒に考え、小さな行動につなげるきっかけを生むための番組です。
今回の取材は2021年7月17日夜、TOHOKU360のYouTubeチャンネルで生配信されました。動画では視聴者からの質問やより深い話が聞けますので、ぜひ興味のある方は以下からご覧下さい。

*TOHOKU360で東北のニュースをフォローしよう
X(twitter)instagramfacebook