知られざる仙台の「枡江の森」の魅力、市民が案内する散策会を企画

髙橋潤永】仙台市宮城野区の特別緑地保全地区「枡江の森」の情報を発信する「枡江の森魅力発信プロジェクト」は、発足から4年目を迎えた昨秋、初の試みとして市民企画員自らが案内人を務める森の散策会を企画した。

「これまで教えてもらったことを“等身大で”説明した方がいいなと思った」と新たな魅力発信の形に期待を寄せるのは、プロジェクトの発足初期から活動に携わる企画員リーダーの保坂和博さん。今や枡江の森に育てられた森の達人の一人だ。散策会を1週間後に控えたその日は「下見のため」市民企画員の仲間と共に森へ入り、およそ1時間森の中を歩いた。

「何もないの?」「いやなに?自然があるじゃないの!」

散策会の舞台となる枡江の森は、仙台市宮城野区の中心に位置する与兵衛沼公園の傍らにたたずむおよそ3.3ヘクタールの小さな森だ。数年前にトイレや木道が整備された与兵衛沼公園とは打って変わって、その存在は正直目立たない。けれども、何事も見た目だけで判断するのはあまりにも浅はかだ。

「何もないの?」「いやなに?自然があるじゃないの!」と自問自答で保坂さんは語る。業者が入ってベンチやあずまやを作る必要はない。もちろん遊具も要らない。ありのままの自然がそこにあって、ありのままを楽しむ。色付いた葉で敷き詰められた森を歩くとサクサク音が鳴る。立ち止まると、ぱらぱらと頭上から降りてくる葉がカサッと静かに地面に着地するその音さえもはっきりと聞こえてくる。

森の入り口にて意見交換する保坂さん(左)

仙台市が特別緑地保全地区に指定する森は現在4つ。枡江の森は2015年、良好な自然環境を現状凍結的に保全し、その貴重な緑を未来へ繋いでいくべき森の一つとして指定された。

地域で「枡江の森」を盛り上げるプロジェクトが発足

今から4年前(2018年)、仙台市が推進する事業「百年の杜づくり」の取り組みの場として、枡江の森が選ばれ、市から枡江に暮らす人々に対して白羽の矢が立った。

一方、同じころ 「枡江の森を地域の憩いの場として盛り上げたい」といった声も挙がっていた。そうした地域の強い思いを受け止めた幸町市民センターが市民参画型事業という枠組みを活かし、プロジェクトが誕生した。

「ちっちゃいころ我々、すぐ裏山に行って、学校から帰ってから遊んでいたじゃないですか。日が暮れるまでね。そういうことがなかなかない今、少しでもやっぱり森の中に子供たちの声が響くような、(鳥の声も必要だけども)そういう森であってほしい」と保坂さん。

立ち上げから今日に至るまでプロジェクトを盛り立ててきた市民企画員は保坂さんを含め4人。皆、出身県はばらばらだが、それぞれが、閉塞感が漂う現代の遊び環境と、幼少期に自然の中で自由に遊んだ環境とのギャップに、突き動かされるものがあるのかもしれない。

魅力を「学ぶ人」から、「自ら発信する人」に

森が持つ魅力とは何だろう。”森の達人”になることを目標に掲げ、1年目、2年目、3年目と、森林インストラクターを講師に招いた。枡江の森の生態系を学び、森の恵みを使ったクラフト制作等を通じ、その問いの答えを探す。

「この森が抱えている背景を知らずに森(の魅力)は語れない」。その想いから、枡江地区の歴史、森がそこにあり続けている理由をひも解いていくこと、保全に関する学びも大事だ。そして4年目も同じように、学びに勤しむ…。

活動4年目(2021年)は新型コロナウイルスの全国的な拡大が社会活動に大きく制限を与えた。プロジェクト活動にもブレーキがかかることになったが、魅力発信のあり方を考え直すよいきっかけができたという。

「今までと同じように森を回ってもダメだなって思って、これまで教えてもらったことを“等身大で”説明した方がいいなと思った」と腑に落ちたように話す保坂さんは、こう続けた。

「この森自体がどういうものなのかっていうこと、百年の杜の事業の中で、仙台市が持ってる大きなイメージの森が、ここの3.3ヘクタールに凝縮されているっていうところをなんとなく知ってもらいたい」

「森においでよ」名刺代わりのリーフレット

市民企画員たちがこれまで学習した木々の知識を披露

2021年11月6日、枡江の森の散策会の案内人たちは無事に下見を終えた。地域住民自らの手で開かれる初めての散策会。プロジェクト事務局を務める幸町市民センターの青木さんから、参加応募者が定員10人に達したことを告げられ、企画員一同「おお~!」と歓喜に湧いた。

参加者には漏れなく枡江の森のリーフレットが配られる。「名刺代わりに渡す」と言う保坂さんは、紛れもない「枡江の森の達人」ではないか。

「来年は毎月やりたい」。取材の最後に保坂さんが発した言葉だった。プロジェクトとして最後の年を迎える。子供を連れて宝探しに出かけるのもいいかもしれない。

この記事はTOHOKU360と宮城野区中央市民センターとのコラボ事業「東北ニューススクールin宮城野」の参加者が執筆した記事です。宮城野区の市民活動を取材した参加者たちが、地域の課題に取り組む人々の活動や思いに迫ります。

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