コロナ禍の大学生を支えたい。東北大生協がクラウドファンディングに挑戦

【若栁誉美】半年以上続くコロナ禍。大学生・大学院生はキャンパスでの授業が受けられず、アルバイトもままならない。緊急事態宣言が解除されたとはいえ、学生達は今、暮らしの危機、学びの危機、コミュニティの危機に晒されている。

200を超える大学により構成され、組合員は157万人を超える大学生・大学院生のための組合、全国大学生活協同組合連合会(以下、全国大学生協連)。この全国大学生協連が、新型コロナウィルス特設サイト内で現役大学生・大学院生を対象としたアンケートを継続的に実施している。

これまでに、4月、5月、7月と過去3回のアンケートを実施。「第3弾 大学生向けアンケート」7月実施版 によると、学生たちが様々な制約を受け、【暮らしの危機、学びの危機、コミュニティの危機】に晒されていることがわかる。

大学生の声は悲痛だ。

「アルバイトをしたいけど、(コロナの)感染が怖い」「小中学校は登校しているのに、なぜ大学だけオンライン授業が続けられているのか」「国はGO TOキャンペーンで旅行を支援しているのに、大学生はキャンパスに行けないのか」「オンライン授業でも学費は減免されない、このままでは大学をやめざるを得ない」

アンケートに寄せられた声は、決して大袈裟ではない。Twitterでは「#大学生の日常も大切だ」「#大学生の日常も大事だ」というハッシュタグで、大学生が包み隠さず自分の生活の辛さを吐露している。

「大学生協」として珍しいクラウドファンディングへの挑戦

そんな中、東北大学生活協同組合(以下、東北大生協)が先月末から学生支援のクラウドファンディングに挑戦している。

「一人でも多くの東北大学の学生に教科書を届けたい!」https://camp-fire.jp/projects/view/310777

今回のクラウドファンディングは、東北大学生協の若手職員の発案で始まった。全国的に見ても、大学生協が主体となったクラウドファンディングは珍しい。発案者である、東北大生協星陵店主任の千葉結花さんと、東北大生協工学部片平購買店長の鷺慶一郎さんにお話を伺った。取材はオンラインで実施した。

「少しでも学生の力になれるように」

緊急事態宣言下、大学生協への来客は例年の2割程度。そんな中でも、保存のきく食糧を店頭へ揃え、少しでも学生の力になれるようにした、と鷺店長は話す。

また、全国的な緊急事態宣言が出された時期が、前期の教科書販売の時期と重なってしまい、同大学生協の中で、規模の一番大きい店頭販売会場が三密を避けるために閉鎖となった。東北大生協では急遽、webからの注文の上で、学生へ配送する仕組みに切り替えたという。

大学の閉鎖期間中、学生の食事の問題もサポートした。大学生協には「ミールカード」という、栄養バランスを考えた食事ができるように食堂・購買の一部メニューで利用できる年間パスがあるが、大学・食堂自体が閉鎖されたため、学生に直接届けるしかない。そこで食堂部では、栄養バランスのいい学食メニューを冷凍お弁当にして、5食1セットで学生に配達する試みを今も続けている。

東北大生協広報室のTwitterアカウント( https://twitter.com/THUv_COOP_KOHO )

大学の閉鎖により、従来の授業が受けられない上、アルバイトができない・親元からの仕送りが減る等で、食費や教材費を切り詰めないと生活ができない状況の中、千葉さんを始めとする大学生協の職員は学生のために何かできないか、と考えていた。しかし、大学自体が動いていない状況のため、大学生協自体の売上も減少。

そこで、クラウドファンディングで広く支援を募り、学生を支援することを思いつく。千葉さんの応援するバンドが、クラウドファンディングでグッズを作成しており、それを支援した経験がヒントとなった。

返礼品には「貧民食堂の普通カレー」も

今回のクラウドファウンディングで集まった支援金は、学生向けに書籍を販売する際の割引分となる。通常東北大学生協では、生協書店で5~10%引きで書籍を販売しているが、ここに支援金をのせて割引率を引き上げる。「専門書は通常の書籍より高価なので、少しでも割引を上乗せできたら」と千葉さんは話す。

クラウドファンディングのリターン(支援者へのお返し)は、かつてキャンパス内にあった食堂のメニューを再現したレトルトカレー(「貧民食堂の普通カレー」)や、東北大の学生が開発したバターチキンカレー、大学生協限定のお菓子、とバラエティに富んでいる。

クラウドファンディングは9月27日までで、以下のページから受け付けている。
「一人でも多くの東北大学の学生に教科書を届けたい!」
https://camp-fire.jp/projects/view/310777

全国大学生協連のアンケートから見える現在の大学生/大学院生が置かれている状況は、想像以上に過酷だった。今よりもCOVID-19のことが判明していき、インフルエンザのように共生していく日常が来たとき。日本・世界を支えていくのは、今、この文章を書いているわたしよりも確実に下の世代。その世代が苦しんでいることを知って、どうしても書かなくてはいけない、と思った。