たった一人で、「雑誌」を作った男がいる。写真撮影から、取材・原稿執筆、構成、印刷まで。誰かに頼まれた訳ではない。雑誌編集のプロだったわけでもない。むしろ、取材も初めてだった。そんな彼は、今、自分の作ったその写真雑誌を抱え、書店を回り、本を置いてもらおうと交渉している。一体なぜ、そんなことをしているのか。【中野宏一=仙台市】

 暗い背景の中、木彫りの「釜神」の姿が浮かび上がる。鬼に睨まれているようで、迫力に圧倒される。10月25日に発行された「IN FOCUS」(インフォーカス)第1号の表紙だ。「宮城を視るドキュメンタリーマガジン」と銘打たれたこの雑誌は、仙台市の相沢由介さん(36)が、一人で作った。「いや、全部費用は自費ですよ」と相沢さんは話す。

 79ページに及ぶ雑誌では、相沢さんが撮影した写真やインタビューが並ぶ。仙台市若林区荒浜に今も「明かり」を灯しにくる人のこと。チェーンソーアーティストのこと。薬局の人。お見合い結婚コーディネーター……相沢さんが向き合い、見聞きし、理解・共感した市井の人やモノが描かれている。

相沢由介さんが一人で作り上げた雑誌「IN FOCUS」
相沢由介さんが一人で作り上げた雑誌「IN FOCUS」

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