宮城県角田市に「肉球」づくしのカフェ  愛犬と歩んだあの日からの道のり

【佐々木佳=宮城県角田市】宮城県角田市に昨年12月にオープンしたCafe&Kitchen TERRIER(テリア)は、犬の肉球の形をしたランチプレートなど、ワンちゃんへの愛、特に「肉球」への愛に溢れた料理や、手作りのお菓子が評判を呼んでいる。腕を振るうのは福島県南相馬市出身の若き兄弟。突然日常を奪われたあの日からの不安な日々を愛犬とともに乗り越えた。新天地の店づくりは始まったばかり。「みんなが楽しめる場所にしていきたい」と今日も笑顔でお客を出迎える。

手づくり料理は肉球づくし

テリアの料理はとにかく「肉球」にこだわる。看板メニューのテリアプレートは、肉球の形をしたお皿でさまざまなおかずを楽しめる。

看板メニューのテリアプレート。肉球の形をしたプレートに色とりどりのおかずが

肉球手ごねハンバーグも、言うまでもないが肉球の形をしている。季節限定で3月まで提供しているおしるこに入っている豆腐白玉も肉球。ケーキのかたわらにも足跡、いや肉球である。

肉球手ごねハンバーグも肉球の形

店を営む金谷俊介さん(29)、関沢圭之介さん(23)の兄弟は、大の愛犬家。自宅には3匹のヨークシャーテリアを飼っている。店名の「テリア」も、ヨークシャーテリアと「カフェテリア」を掛けて名付けた。料理の「肉球推し」は、犬への愛を体現しつつ、食べる人に見た目でも楽しんでほしいという思いが込められている。

ケーキのお皿にも肉球

肉球だけではなく、地元の食材、特に野菜の良さを生かした料理にもこだわる。俊介さんが作る和菓子、圭之介さんの手がける洋菓子も評判を呼び、家族連れからお年寄りまで、多くの人に親しまれている。

関沢圭之介さん(左)と母・文恵さん

愛犬と乗り越えた不安の日々

兄弟の母、関沢文恵さんは元々、福島県南相馬市原町区で惣菜店を営み、地域に愛されていた。兄弟も子供の頃から、母の背中を見ながら料理やお菓子を作って店に出していたが、日常は突如奪われる。2011年3月、東京電力福島第一原発事故により、避難を余儀なくされた。圭之介さんはまだ中学生だった。

行くあての定まらない避難生活が続き、家族は会津若松市、新潟県、茨城県と、安住の地を求めて転々とした。圭之介さんは「車の中で寝泊まりすることも多かったので、とても怖かった」と振り返る。不安な日々の支えとなったのは、今は3頭いる愛犬の最年長で唯一震災を経験した「チョコ」の存在だった。不安な夜もいつもそばにいて、圭之介さんを励ましてくれた。

愛犬のチョコ(関沢圭之介さん提供)

原発事故から1年ほど経過し、家族は宮城県大河原町に落ち着いた。
文恵さんは原町の店を再開させ、片道1時間以上の道のりを毎日通ったが、継続するのは簡単ではなかった。家族は宮城県での再出発を期し、角田市に昨年12月、テリアを開いた。

白い建物がテリアの目印

圭之介さんは「もっと色々なメニューを増やして、もっとみんなが楽しめる店にしていきたい」とこれからを見据える。もともとはドッグカフェを開きたかったといい、ゆくゆくはトリマーを店に呼ぶなど、食事以外でも愛犬家の集える仕掛けも構想する。
苦難の日々を越えてたどり着いた新天地での一歩。肉球のように多くの人の心を温かく癒やす店づくりは、これからが本番だ。

Cafe&Kitchen TERRIER(テリア)
宮城県角田市角田字稔町13−1
TEL:0224−66−5977 月曜定休(祝日の場合は翌日休業)
11:00〜15:00(L.O.14:30)
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