【齋藤敦子(映画評論家・字幕翻訳家)=ドイツ・ベルリン】2月8日の夜、ジェネレーション14プラス部門の開会式が国際文化会館で行われました。ジェネレーションとは少年少女向けの作品を集めた部門で、14プラスは14歳以上という意味、もう少し下の世代を対象にしたKプラスと2つのセクションから成っています。今年、14プラスのオープニング作品に選ばれたのは、長久允監督の『ウィーアーリトルゾンビーズ』。上映前に長久監督と主演の二宮慶多くんが登壇し、開会宣言を行いました。
『ウィーアーリトルゾンビーズ』は、親を亡くしても悲しめない、“ゾンビのような”13歳の4人の少年少女が出会い、“リトル・ゾンビーズ”というバンドを結成し、一緒に成長していく様をロール・プレイング・ゲーム仕立てで描いた、とても凝った作品でした。二宮慶多くんは、6年前にカンヌのコンペに出品された是枝裕和監督の『そして父になる』で福山雅治さんの息子を演じていた少年。長久監督は大手広告代理店でCMプランナーを務めていた方だけあって、工藤夕貴、池松壮亮、菊地凛子といった豪華な俳優が脇を固めています。日本では日活配給で6月公開の予定。
翌9日の夜、パノラマ部門でHIKARI監督の『37秒』のワールドプレミア上映が行われました。『37秒』は、表向きは花形漫画家のアシスタント、実は陰の実作者である脳性麻痺のユマと、彼女の過保護な母親がそれぞれに自立していく様を描いたもの。HIKARI監督は大阪で生まれ、南カリフォルニア大学で映画を学んだ新鋭で、これが長編デビュー作です。主人公のユマを演じたのはオーディションで選ばれた佳山明さん、母親役は河瀨直美監督の『光』にも出演していた神野三鈴さん。題名の“37秒”とは、出産時に37秒間無呼吸だったために脳に障害が残ったことから。映画は、漫画家からの独立を決意したユマが、アダルト漫画を志向したことから、ストーリーが意外な方向へ進んでいきます。障害のあるなしを超えた、ひとりの女性の自立のドラマとして、観客の笑いと共感を誘い、最後は大きな拍手に包まれました。